自民党が総裁選の決選投票のルールを変更する。石破茂首相と森山裕幹事長が一致した。
これまでは第一回投票は国会議員票と同じ票数を党員投票に割り当てる一方、決選投票は47都道府県連に1票ずつしか配分されず、国会議員票の比重が大幅に増していた(都道府県連は第一回投票で党員投票を多く獲得した候補に決選投票で投票するしくみ)。
9月の総裁選の決選投票は「国会議員368票+都道府県47票」で争われ、党員投票で1位だった高市早苗氏が決選投票で石破氏に逆転負けした。地方からは「党員投票の意思と違う結果になった」として不満がくすぶっていた。
新しいルールでは、決選投票で党員投票の比重を増し、各都道府県に党員数に応じて票数を割り振る方向で検討するという。来年3月の党大会で決定する見通しだ。
この結果、総裁選再挑戦に意欲をみせている高市氏はたしかに有利になるだろう。しかし、9月の総裁選で高市氏を支持した安倍派の中堅若手は総選挙で大量落選し、高市氏の党内基盤は壊滅している。だからこそ石破首相や森山幹事長は安心してルール変更に踏み切れるのかもしれない。
他方、自民党内では「来夏の参院選は石破首相では戦えない」との声が広がっている。来春の予算成立後に首相を退陣させて総裁選を実施し、新しい首相のもとで来夏の参院選に臨むというのが相場観だ。
石破首相が任期途中で退陣する場合、通常は「緊急の総裁選」として両院議員総会で国会議員だけの投票になる。しかし、3月の党大会で総裁選ルールを変更し、その直後に石破首相が退陣した場合、来夏の参院選にむけて自民党のイメージ刷新をすすめるため、党員投票も実施する「正規の総裁選」形式で行われる可能性も十分にあろうだろう。その場合、党員投票が比重を増す新ルールがさっそく適用されることになりそうだ。
非主流派で高市氏よりも有力視されているのは、茂木敏充前幹事長である。総裁選では党員投票が伸びずに6位に沈んだが、石破政権で無役になった後、ネットメディアにも出演するなどして人気向上に躍起だ。
主流派では岸田派ナンバー2の林芳正官房長官が本命視されている。しかし林氏の存在感はけっして高くはなく、党員投票がどこまで伸びるかは未知数だ。
むしろ、動画戦略を大展開して再登板に意欲を燃やしているといわれているのは、岸田文雄前首相だ。ユーチューブでは「増税メガネ?」と題する動画が130万回以上再生され、話題を呼んだ。
自民党総裁レースは、派閥解消の流れを受けて党員投票を重視する傾向がこれから強まるかもしれない。