自民党内から公然と「このままでは参院選を戦えない!」との声が上がり、石破茂首相への退陣要求が飛び出した。とりわけ、予算案の再修正という前代未聞の失態が、「石破おろし」に拍車をかける形となった。
果たして石破首相はこの危機を乗り越えられるのか? それとも、政権の命運はすでに尽きているのか? 党内の動きを詳しく見ていこう。
旧安倍派・西田昌司が口火を切る
最初に声を上げたのは旧安倍派の西田昌司・参院議員だ。12日の参院議員総会で「石破首相では戦えない!」と断言し、さらには記者団に対しても次のような発言をした。
- 「昨年の総選挙で惨敗した石破首相が、また参院選の顔になるなんて、ありえない!」
- 「予算成立後に自民党総裁選を行うべきだ」
- 「積極財政派の高市早苗氏を担ぐべきだ」
西田議員は、旧安倍派で当選3回を誇るベテランであり、歯に衣着せぬ発言で知られる。さらに、自身も7月の参院選に出馬予定の改選組であり、「石破では選挙を戦えない」という声を代表する立場だ。
西田議員の言葉の背景には、自らの選挙が懸かっているという切実な事情がある。「高市氏こそ総理にふさわしい!」と明言するのは、西田氏の保守派・積極財政派の立場を映し出している。
青山繁晴も参戦!
さらに、保守派論客である青山繁晴・参院議員も参戦。12日のラジオ番組で、予算案の再修正による混乱を受け、石破首相に退陣を迫った。
- 「政局の始まりだ!」
- 「石破首相は迷いすぎ! 自民党内はざわついている!」
- 「参院選が迫っている。石破首相は政治責任を取るしかない!」
- 「石破首相は財務省の言いなり! 国民を見ていない!」
青山議員は元共同通信記者であり、安倍元首相に近い保守派として知られる。党員獲得数1位の実績を誇り、党内右派の支持基盤を持つ影響力のある人物だ。
西田議員と青山議員は、いずれも保守派で積極財政派。今回の「石破おろし」も、両者が示し合わせて動いた可能性が高い。
拡大する「石破おろし」の波
ここにきて、「石破おろし」の動きは保守派・積極財政派に限らず、党内で拡大しつつある。
- 高市早苗:「石破首相の演説はパンチ不足!」
- 小林鷹之:「政策が二転三転、信用できない!」
これは保守派の総裁候補である両者にとって当然のスタンスだが、より注目すべきは森山幹事長の発言だ。
- 森山幹事長:「いろんな意見が出るのは健全」
この発言は、本来は政権をもっとも守るべき立場にある幹事長が「石破おろし」の動きを止める気がないことを示唆している。森山幹事長は、立憲民主党の安住淳・衆院予算委員長と水面下で手を握り、参院選後の「増税大連立」を模索しているとされ、ここで石破総理をかばって自らも沈むわけにはいかないという計算がある。
さらに、石破首相を支えてきたキングメーカーの岸田文雄前首相も動き始めた。
- 岸田文雄:反主流派の麻生太郎・茂木敏充と会談
岸田・麻生・茂木の3者会談は、石破政権になって初めて行われたものだ。
岸田氏は首相時代の末期に麻生氏と決別した、石破政権でキングメーカーから陥落した麻生氏に代わり、石破政権の後見人的立場となったが、ここにきて麻生氏と関係修復に動き出したといっていい。この会談は「石破後の調整会議」の可能性が高い。
「石破おろし」の流れは、保守派・積極財政派だけでなく、自民党主流派にも広がり始めている。
今後の焦点は?
これからの政治の焦点は2つ。
- 「石破おろし」が本格化するのか?
- 次の総理は誰になるのか?
後半国会では、立憲民主党が企業団体献金の禁止や選択的夫婦別姓の導入を強く求めるとみられる。これに対し、自民党内では反発が強まるのは必至だ。石破首相はますます板挟みとなる。
さらに、参院選に向けた内閣支持率の低迷が続けば、「石破では戦えない!」という声は自民党の地方組織にも広がる可能性が高い。
石破政権は参院選まで持たない可能性が高いと私は見ている。