自民党総裁選はいよいよ最終盤に入った。
本命は小泉進次郎、対抗は高市早苗。序盤からメディアはこの「二強対決」を中心に描いてきたが、ここにきて状況が揺らぎ始めている。林芳正が高市を猛追し、2位浮上の可能性が現実味を帯びてきたからだ。
もし決選投票が「進次郎vs林」となれば、これまでの一騎打ち構図は崩れ、永田町の票読みは一気に流動化する。逆転劇のシナリオが、終盤戦の焦点として浮かび上がってきた。
フジとテレ朝の情勢調査
フジテレビが9月29日までにまとめた調査では、国会議員票で進次郎が80人を超えて優勢を維持。一方、注目を集めたのは2位に浮上した林芳正で、約60人を固めた。高市は40人台にとどまり、林に後れをとっている。小林鷹之と茂木敏充はそれぞれ30人程度で、上位争いには届いていない。
未定の議員は残り50人ほどしかおらず、この層が高市に雪崩を打たない限り、国会議員票での2位入りは厳しい。
フジの世論調査では、自民支持層の支持率は進次郎35.2%、高市22.5%。ここでも林が存在感を強めている。党員票では依然として進次郎と高市に差をつけられているが、国会議員票を伸ばして高市を逆転する可能性が指摘された。
さらにテレビ朝日の調査はより衝撃的だった。自民支持層への世論調査では進次郎41%、高市24%、林16%。党員票では日テレ調査で高市34%、進次郎28%、林17%と高市優位の数字も出ているが、国会議員票で林が急伸している。テレ朝の分析によると、国会議員票と党員票は、進次郎が200票超、高市が120票前後、林も110票近くで肉薄。決選投票が「進次郎vs高市」か「進次郎vs林」になる可能性が高まっていると伝えている。
高市の伸び悩みと林の猛追
こうした数字から浮かぶのは、進次郎を直撃した「ステマ問題」の影響が意外なほど限定的だということだ。とくに国会議員票では大きな動揺が見られない。
背景には、自民党がかつて「Dappi」問題でネット世論操作の疑惑を抱えた経緯がある。進次郎の問題を大きく突けば、党全体へのブーメランとなりかねない。そのため、各陣営は批判を控えているとみられる。
進次郎は国会議員票・党員票ともにバランス良く押さえ、1回目投票で1位通過する可能性が高い。だが、高市は党員票での圧勝を狙ったものの伸びきれず、国会議員票では林に迫られている。林は旧岸田派と石破派を基盤に国会議員票を着実に伸ばし、「高市阻止」の流れが進次郎から林へと移る動きも出始めている。
林逆転のシナリオ
昨年の総裁選では「若すぎる進次郎」「右すぎる高市」を嫌った議員票が石破に流れ、決選投票で石破が逆転した。今回はその石破に代わり、林が「どちらも極端だ」と考える議員の受け皿となりつつある。
討論番組でのエピソードも林の株を押し上げた。ひろゆきに突然英語で質問されても淀みなく返答し、実力をアピール。さらに「総理に向いている人物を指差せ」という挑発に「目を閉じてやりませんか」と切り返す余裕を見せた。結果、林を「人柄がいい」と評価するコメントが相次いだ。
進次郎vs高市ならアンチ高市票が進次郎に集まり勝利は盤石とみられるが、相手が林となれば話は別。世代交代を一気に進める進次郎に対し、「まだ早い」として世代交代を嫌う中堅・ベテラン議員の心理が林に向かう可能性がある。進次郎陣営もこの「林シナリオ」を強く警戒している。
高市に残された望み
では、高市に勝ち筋はあるのか。林に抜かれて3位に沈めば決選投票に残れないが、林の躍進は一概にマイナスではない。林が進次郎の議員票を奪い、決選投票が「林vs高市」になれば状況は変わる。
進次郎との決選投票では「高市阻止」の空気が支配し、票は進次郎に雪崩を打つ可能性が高い。だが林が相手なら、麻生太郎・岸田文雄の両元総理が林阻止に回る可能性がある。麻生は長年の宿敵・古賀誠が林の後ろ盾であることから林を嫌い、岸田も林が総理になれば旧岸田派を奪われて再登板の芽を絶たれる。
この二人が林阻止に動けば、高市に意外な追い風が吹くかもしれない。林の追い上げは高市の退路を断つ一方、奇跡の逆転シナリオを開く可能性も秘めている。
終盤戦の読み筋
進次郎は依然として本命だが、ステマ問題の火種を抱えたまま林の追撃を受けている。高市は党員票で食い下がるが、議員票で伸び悩み、林に迫られている。林は「第三の男」として存在感を急速に増し、決選投票での逆転劇をうかがう。
総裁選終盤、焦点は「林が高市を抜けるか」「進次郎の大失速はあるか」に絞られてきた。
本命・進次郎の逃げ切りか、林の土壇場逆転か、それとも高市の意地の一発か。票読みと駆け引きが交錯する最終盤は、最後まで目が離せない。