高市旋風が吹き荒れた総選挙。
自民党は316議席を獲得し、戦後最多を更新した。衆院全体の68%を占め、単独で3分の2(310議席)を突破。参院で否決されても衆院で再可決できる絶対的安定多数だ。国民民主党の協力も、連立相手である日本維新の会の賛成も、もはや必要ない。
数字だけを見れば、歴史的な大勝利である。だが、その内実を精査すると、手放しで喜べる状況ではない。勝ちすぎた結果、自民党は「大量の不良債権」を抱え込んだ可能性がある。
本来は330議席に達していたともいわれる今回の選挙。小選挙区で勝ちすぎたため比例復活枠が激減し、比例名簿の登載候補が足りなくなるという異例の事態が起きた。南関東6、東京5、北陸信越2、中国1、計14議席を他党に譲ることになり、中道の長妻昭元厚労大臣や西村智奈美元幹事長ら6人、維新・国民民主・チームみらいが各2人、参政党とれいわ新選組が各1人、「おこぼれ当選」する結果となった。
それでも維新と合わせれば与党は352議席、衆院の76%を占める。
裏金・旧統一教会の「完全復活」
この圧勝がもたらした最大の影響は、裏金議員の復活である。前回総選挙で石破政権は裏金議員43人の比例重複を認めず、12人を非公認とした。その結果、17人当選、23人落選にとどまった。
だが今回は、高市政権が43人全員を公認。そのうち42人が当選した。落選は大阪5区の杉田水脈氏ただ一人。東京24区の萩生田光一氏、東京7区の丸川珠代氏、東京11区の下村博文氏、福岡11区の武田良太氏らが次々と国会に戻った。高市首相は萩生田氏を幹事長代行に起用。裏金問題は事実上の幕引きとなった。
旧統一教会問題も同様だ。神奈川18区の山際大志郎氏は前回小選挙区で敗れ比例復活だったが、今回は2万5000票差で圧勝。高市首相自身も、韓国の捜査当局が押収した内部報告書に32回名前が出ていたことが発覚していたが、1月解散に打って出たことで追及は霧散した。
地雷は消えたわけではない。ただ、踏まれないまま埋め戻されたに過ぎない。
干し上げたはずの「アンチ高市」まで
さらに皮肉なのは、干し上げたはずの党内反主流派まで復活させてしまったことだ。
石破内閣で総務大臣を務めた村上誠一郎氏は比例四国10位、文科大臣だった阿部俊子氏は比例中国20位、沖縄北方担当大臣の伊藤良孝氏は比例北海道6位。いずれも当選圏外とみられていたが、自民党の地滑り的勝利で全員当選した。
親分格の石破茂氏も鳥取1区で圧勝。開票直後、「白紙委任とは違う」と高市首相を牽制した。自民党が全国で中道の倍以上の票を集めるなか、鳥取県では比例票で中道が健闘するなど、石破氏への同情票も垣間見えた。
高市首相は勝ちすぎた結果、裏金議員も旧統一教会系も、そしてアンチ高市派まで抱え込むことになった。自民党は「何でも入るゴミ箱」と化したともいえる。
維新というもう一つの時限爆弾
発言力を失ったのは維新である。自民単独で3分の2を超え、維新なしでも国会は回る。吉村洋文代表は高市首相から「次の内閣改造で入閣を」と電話があったと明かしたが、現時点で改造の時期は未定。焦りがにじむ。
それでも高市首相にとって維新は利用価値がある。自民党内を抑えるうえで、「維新と合意している」というカードは使える。維新は切られないためにしがみつき、自民は内部統制のために使う。だが、この関係もまた不安定だ。
圧勝の果てに
316議席という数字は、権力の集中を意味する。同時に、多様な火種を一手に抱え込んだということでもある。裏金、旧統一教会、党内抗争、そして維新との力学。
勝てば官軍――ではない。勝ちすぎたことで、自民党は自らの内部に崩壊の芽を抱え込んだ。
この歴史的圧勝は、もしかすると自民党崩壊へのカウントダウンの始まりなのかもしれない。