日本の政界は、もはや「右か左か」ではありません。
いま、静かに、しかし確実に、「上か下か」の新たな対立軸が生まれつつあります。
自民党も立憲民主党も、実は「上級国民」の味方です。
一方、減税を訴える国民民主党とれいわ新選組が、左右の壁を壊しながら庶民の怒りを束ね始めています。
今回は、このダイナミックな「政界の地殻変動」を、詳しく読み解いていきます。
「上下左右マトリクス」で読み解く日本政界
現在の日本政界は、表面的には与野党が入り乱れて混沌として見えますが、実は「自民党」「立憲民主党」「国民民主党」「れいわ新選組」の4勢力に収斂されつつあります。
「公明党」「共産党」「日本維新の会」「参政党」「日本保守党」なども存在感を放っていますが、大きな潮流を理解するうえでは、まずこの4党の位置づけを押さえることが肝要です。
ここで提案したいのが、「上下左右マトリクス」です。
- 横軸(右・左):従来のイデオロギー対立。
- 右=憲法改正・防衛強化・原発推進に賛成
- 左=少数者の人権擁護・選択的夫婦別姓に賛成
- 縦軸(上・下):経済財政政策を巡る対立。
- 上=増税・緊縮財政(大企業・高齢世代に有利)
- 下=減税・積極財政(一般庶民の生活重視)
このマトリクスに4党を配置すると、
「右上=自民党」「左上=立憲民主党」「右下=国民民主党」「左下=れいわ新選組」になります。

つまり、自民も立憲も、実は経済政策では「上級国民側」。
国民民主とれいわが「庶民側」という構図が浮かび上がるのです。
「左右対立」から「上下対立」へ
日本政治は長年、「自民党vs民主党(現・立憲民主党)」という二大政党制に基づく「左右対立」が続いてきました。
小選挙区制度のもとで、有権者は「自民か立憲か」という二者択一を強いられてきたのです。
たとえば昨年の衆院選。自民党の裏金問題に怒った有権者は、自民党が嫌でも立憲に投票するしかない選挙区が続出しました。
しかしそれは、立憲民主党が積極的に支持されたわけではありません。比例代表では、立憲の得票は伸び悩み、むしろ国民民主党やれいわ新選組が大躍進しています。
結局、自民も立憲も「上級国民」の利益を代弁している点では同じ。
減税や積極財政を求める有権者には、本当の選択肢がなかったのです。
そこに風穴を開けたのが、減税を掲げた国民民主党とれいわ新選組でした。
有権者は、イデオロギーではなく、「暮らしに直結する経済政策」を重視し始めたのです。
本当は私たちの関心は「右か左か」ではなく、「上か下か」にあった。それがいま、ようやく可視化されつつあります。
「増税大連立」vs「減税連合」の時代へ
数の上では、上級国民よりも一般庶民のほうが圧倒的に多い。
だからこそ、自民党も立憲民主党も、選挙になると「憲法改正」や「安全保障」といった左右イデオロギーの争点を前面に出し、「上下対立」が可視化されないよう工夫してきました。
戦後の日本社会は、「右3、左2、無関心5」という構成だといわれています。
投票率50%なら「自民党が3、野党が2」で、常に自民党が勝つ——これが長年続いた構図です。
しかしここへきて、若い世代を中心に変化が起きています。
50歳以下の現役世代では、国民民主党の支持率が立憲民主党を大きく上回る状況が定着しつつあります。
現役世代にとっての対立軸は、もはや「自民党vs立憲民主党」ではない。
「自民党vs国民民主党」、つまり「増税大連立vs減税連合」なのです。
立憲は、もはや自民党の対抗勢力ではなくなりつつあります。
むしろ自民党とともに財政規律を訴え、「増税路線」を進めようとしている。
そんな中で、国民民主党とれいわ新選組が、「減税」という旗印のもとで新たな民意を束ね始めているのです。
この夏の参院選は、かつてない「上下対決」の戦いになるでしょう。
公明党・共産党・維新はどこに向かうのか
では、その他の政党はどうでしょうか。
かつて「庶民の党」を掲げていた公明党と共産党も、いまや変質しています。
公明党はかつて「右下」のポジションをとっていましたが、自民党との連立が長引く中で「右上」へと移動しました。
いまや公明党も上級国民寄りの政策を推進しており、庶民感覚とはずれが生じています。
空白になった「右下」のポジションを、国民民主党が埋めているのです。
共産党も、見た目は「左下」ですが、党内支配構造は高学歴エリート中心。
近年は財政規律重視に傾き、「左上」の立憲民主党にすり寄る場面も目立っています。
結果として、減税や生活支援を強く訴える力を失っているのです。その結果、手薄になった「左下」にれいわ新選組の進出を許すことになりました。
維新はもともと「右下」を目指しているようにみえましたが、最近では財政均衡を重視する姿勢が目立ち、「右上」に近づいています。
まとめ
日本の政治対立は、かつての「右・左」ではなく、「上・下」へと大きくシフトしています。
- 「増税・緊縮財政」を掲げる自民党・立憲民主党(上)
- 「減税・積極財政」を訴える国民民主党・れいわ新選組(下)
今年の夏、私たち有権者は、この新たな「上下対決」に真正面から向き合うことになります。