天皇皇后両陛下が6月17日から23日までインドネシアを訪問することを松野博一官房長官が9日の記者会見で発表し、「6月21日の国会会期末解散はなくなった」との安堵感が政界に漂っている。
内閣が衆院解散を閣議決定した後、天皇が解散詔書に署名・押印し、衆院議長が本会議場で解散を宣言するのが段取りだ。天皇が外国訪問中の場合、皇嗣の秋篠宮が解散詔書への署名を代行することは可能だが、天皇軽視との批判は免れず、過去にも天皇の外国訪問中に衆院が解散された例はない。
岸田首相が天皇のインドネシア訪問にゴーサインを出したということは、そもそも国会会期末の6月21日に解散するつもりはなかったという見方が一気に広がった。
そうなると、やはり岸田首相が解散風を吹かせてきたのは、①首相の解散権をちらつかせて自公与党内の「岸田降ろし」の動きを封印し、求心力を高める②立憲民主党に内閣不信任案の提出を尻込みさせ、今後の増税政策などで立憲と連携する芽を残す③マスコミの関心を「6月解散はあるか」に引き寄せ、長男翔太郎氏の秘書官更迭につながった首相公邸での岸田一族の大忘年会への批判を隠すーーという、なんとも身勝手な理由ということになる。
もちろん、終盤国会で立憲民主党が入管法改正案の採決に反対して法相問責決議案を提出するなど日程闘争を展開していることを踏まえ、6月21日までの国会会期を小幅延長すれば、天皇帰国後に解散に踏み切るというシナリオは十分に可能だ。
だが、6月解散の効力を高めるには電撃的に、しかも短期決戦で総選挙になだれ込むほうが政権与党には有利とみられる。早々と天皇の外国訪問日程を会期末に入れ、会期延長ありきで解散戦略を描くのは、首相の手足を縛ることになるため、本気で6月解散を考えていたのなら、この時期の天皇の外国訪問を認めるはずがないという分析はそれなりに説得力があるだろう。
永田町からは「岸田首相は広島サミットの成功で権力者として自信を深め、解散風に与野党議員があたふたする様子をみて楽しんでいるフシがある。すっかり権力者目線になった」との声も漏れる。
もしそうなら、解散を見送った後、「実は解散する覚悟なんてなかった」という見方が急速に広がり、これから解散風を吹かせても相手にされなくなるかもしれない。権力を振りかざして遊んでいると、思わぬしっぺ返しを受けるものだ。
一方、岸田首相に6月解散の口実を与える内閣不信任案を提出するかどうかで悩む立憲民主党。いま総選挙になだれこめば、日本維新の会に野党第一党を奪われる可能性が高く、できれば6月解散を回避したいところだ。
天皇不在中に内閣不信任案を提出すれば、解散を誘発するリスクが減るかもしれないーーそんな声も聞こえてきそうだ。だが、「解散をおびえて天皇不在中に不信任案を提出した」と批判されるのなら、不信任案を出す意味がそもそも薄れてしまう。
内閣不信任案を出すかどうかに加え、いつ出すかという悩ましい問題も抱えることになった。
国民民主党の玉木雄一郎代表は、天皇が出国する直前の6月16日の解散がありうるとの見方を示している。この場合は立憲が不信任案を16日より前に出すことが必要だろう。
与野党合意での解散ではなく、立憲が本音では避けたいと考えている以上、不信任案の提出時期をふくめて流動的な要素が多く、解散するにしろ、見送るにしろ、なかなか筋書き通りにはいかない波乱含みの終盤国会となりそうだ。
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