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高市総理はなぜ「1月解散」に慎重なのか〜年内解散否定報道の裏で進む政局の本当の焦点

高市総理が「年内解散を否定した」とマスコミは一斉に報じた。しかし、今年も残りわずか。いまさら年内解散など物理的にも日程的にも不可能である。問題はそこではない。政局の本当の焦点は、年明け1月に解散があるのか、ないのかだ。

ところが、マスコミ報道はそこに踏み込まない。意味の薄い「年内解散否定」という表層だけをなぞっているにすぎない。結論から言えば、高市総理は現在、1月解散にかなり慎重になっている。その理由は、政局の流れを丁寧に追えば見えてくる。

「年内解散否定」報道のからくり

高市総理は12月17日、臨時国会閉会後の記者会見でこう語った。
「税制改正や当初予算の取りまとめなど、目の前でやらなければいけないことが山ほど控えている。解散については、考えている暇がない」

しかし、「考えている暇がない」という言葉は、解散を否定した発言ではない。昨日は考えていなかったが、今日思いついたと言えば、それで済む話だ。税制改正や予算編成が年末の大仕事であることも事実だが、それを根拠に「年内解散を否定」と断定するのは無理がある。

年内解散が消滅した本当の理由は、高市総理の発言ではない。維新が求めた会期延長を受け入れず、臨時国会がこの日に閉幕したことだ。解散は国会開会中に行うのが大原則であり、ここから解散すれば正月をまたぐ選挙になる。年内解散が不可能になったことは、誰の目にも明らかだった。

それにもかかわらず、マスコミは「臨時国会が閉幕し、年内解散の可能性は消滅した」と自らの判断で書かない。ほとんど意味のない首相発言を根拠に、「年内解散を否定」と報じる。政局判断の責任を回避する姿勢こそが、マスコミ報道が分かりにくく、つまらなくなった最大の理由である。

鮫島タイムスは、こうした報道とは一線を画し、自らの責任で政局を判断し、予測する。

支持率が高くても、総理は早期解散を避ける

年内解散が消滅したのは当然だ。では、年明け1月解散はどうか。

高市内閣の支持率は歴代屈指の水準を維持し、野党は分裂し、各党の支持率は低迷している。自民一強・野党多弱の政治情勢が復活しつつある。

この状況で1月解散を断行すれば、自民党が単独過半数を回復する可能性は極めて高い。逆に1月を見送れば、3月末の予算成立までは解散できない。予算審議で支持率が急落すれば、そのまま解散のタイミングを逸し、防戦一方に追い込まれかねない。

1月解散に踏み切れるかどうかが、高市内閣の命運を分ける――そう解説してきた。

だが、現時点で高市総理は前向きではない。その理由は、歴代総理の行動を見れば明らかだ。高い支持率でスタートし、衆院任期が十分に残っているにもかかわらず、先手必勝の解散を断行した総理は一人もいない。

総理になると、解散よりも先にやりたいことが次々と出てくる。万が一、解散して負ければ、すべてが水の泡になる。「まずはやりたいことをやってから」という心理が働くのだ。

麻生内閣や菅内閣でも「今なら勝てる」という冒頭解散論があったが、結局踏み切れず、支持率を失った。高市総理も同じ岐路に立っている。

補正予算成立で薄れた「1月解散の必要性」

高市総理が慎重姿勢を強めた最大の理由は、この臨時国会で補正予算が成立したことにある。与党の自民と維新だけでなく、野党の国民民主党と公明党も賛成に回った。

高市政権は維新との連立で発足したが、衆参ともに過半数割れの少数与党だった。特に参院は6議席足りず、これが最大のアキレス腱だった。ところが、国民民主と公明の協力によって、維新に依存しなくても国会運営ができるメドが立った。

政権運営は一気に安定した。予算審議で防戦一方になり、支持率が急落する恐れが後退したことで、先手必勝の1月解散の必要性は薄れてきた。国民民主や公明が補正予算に賛成したのも、高市内閣の高支持率を前に、1月解散を避けるための合理的判断だったと言える。

2026年政局への視線

高市政権は通常国会を1月23日に召集する方向で検討している。この日程が確定すれば、1月解散見送りムードはさらに強まる。そこから衆院を解散して総選挙になだれ込めば、その後の国会で年度内の予算成立が日程的に厳しくなるからだ。

次の山場は予算成立後だ。維新が求める定数削減や副首都構想をめぐり、連立解消の局面が訪れる可能性がある。

維新と決裂した直後に解散し、選挙後に国民民主党との連立協議を始める――これが高市総理の描く2026年の政局だろう。ただし、その前提は高い支持率の維持にある。これが崩れれば、解散は一気に遠のく。

支持率が高いうちに先手必勝の1月解散を打つことは、いまなお、高市政権にとって解散のタイミングを逸するリスクを回避するベストシナリオである。その選択をするのかどうか――政局の焦点は、そこに尽きる。