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野党同士の激突で燃え上がる神奈川選挙区を大予測〜参院選後の政界再編を主導するのは誰か?

今年夏の参院選は、「与野党対決」よりも「野党同士の対決」が全国各地で燃え上がりそうだ。とくに全国13の複数区で、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、れいわ新選組、共産党が激しく競り合う。

中でも、最大の激戦区となるのが神奈川選挙区だ。ここを制する者が、選挙後の政界再編の主導権を握ることになるかもしれない。

3年前の参院選の振り返り

まず、3年前の神奈川選挙区の結果を振り返る。通常4議席のところ、補欠選挙を含め5議席が争われた。

  • 当選者
    ① 自民党・三原じゅん子(80万7300票)
    ② 維新・松沢成文(60万5248票)
    ③ 公明党・三浦信祐(54万7028票)
    ④ 自民党・浅尾慶一郎(54万4597票)
    ⑤ 立憲民主党・水野素子(39万4303票)
  • 落選者
    ⑥ 共産党・浅香由香(35万4456票)
    ⑦ 国民民主党・深作ヘスス(25万3234票)
    ⑧ 立憲民主党・寺崎雄介(21万0016票)
    ⑨ 参政党・藤村晃子(12万0471票)

自民党は2議席を確保した。トップ当選した三原じゅん子氏の知名度が大きく貢献した。公明党は組織票で安定の1議席を獲得。維新は元神奈川県知事の松沢成文氏が強さを発揮した。

一方で、立憲民主党は2人擁立したものの、共倒れ寸前で辛うじて水野氏が補充の5枠目に滑り込んだ。共産党は惜敗し、国民民主党は当選圏に遠かった。

立憲民主党の共倒れ危機

今回は定数4議席で、前回よりもさらに厳しい戦いとなる。特に立憲民主党の戦略が注目される。

自民党は裏金事件の影響で2議席を狙わず、新人の脇雅昭氏(元総務官僚)の擁立に絞った。菅義偉元首相や河野太郎元外相、小泉進次郎元環境相ら大物の地元だけに、1議席獲得は固いだろう。

公明党は現職の佐々木さやか氏が引き続き立候補し、組織票の強さから当選は固いとみられる。

残る2議席を巡り、立憲・維新・国民・れいわ・共産が激しく争う。

立憲民主党は現職の水野素子氏牧山弘恵氏の2人を擁立。しかし、これは共倒れのリスクを大きく高める決断だ。神奈川県連内の対立も深刻で、党内の調整が難航した結果だ。

今回、水野氏は小沢一郎氏に近いとされ、小沢氏が2人擁立に強くこだわった背景には、野党再編を促す狙いがあるのではないかと見られている。仮に立憲が2議席を獲得すれば野党勢力の勝利の象徴となり、逆に共倒れすれば、野田佳彦代表の責任問題へと発展する可能性が高い。

小沢氏とすれば、中途半端な結果に終わって政局が硬直化するよりも、大勝ちするか、大負けするか、勝敗がはっきり出たほうが、政局が流動化して主導権をとりやすいと考えたのではないか。

残る2議席をめぐる攻防

立憲の2人擁立が波乱要因となる中、他の野党勢力もチャンスを見出している。

  • 国民民主党は元農水官僚の籠島彰宏氏(35)を擁立。現在、国民民主党は全国的に支持を伸ばしており、無党派層の取り込みに成功すれば当選の可能性はかなり高い。
  • 維新は松沢氏の元秘書である千葉佳樹氏を擁立するが、前回当選した松沢氏ほどの知名度はなく、苦戦が予想される。維新は大阪万博で失速し、とりわけ首都圏では勢いがない。
  • 共産党は前回惜敗した浅香由香氏を再び擁立。しかし、党勢の低下が深刻だ。前回より当選枠がひとつ減るなかで厳しい戦いが予想される。
  • れいわ新選組は元外務官僚の三好諒氏(39)を擁立。昨年の衆院選で議席を大きく伸ばし、国民民主とともに減税派として存在感を増している。

最終予測

今回の選挙は、自民・公明がそれぞれ1議席を固める中で、残る2議席の争いが熾烈を極める。

  • 国民民主党は「減税」で無党派層を取り込み、優勢
  • 立憲民主党の2人擁立はやはりリスクが高く、共倒れの可能性も
  • 維新・共産は苦戦が予想される
  • れいわ新選組が「増税 vs 減税」の構図の中で台風の目となるか

もし、残る2議席を国民民主とれいわが獲得すれば、全国的な「減税派」の躍進を象徴する選挙結果となるだろう。

一方、立憲民主党が全国的に惨敗すれば、野田代表の責任問題が浮上し、自民との「増税大連立」に活路を見出すシナリオも考えられる。

神奈川選挙区は、単なる一地方の戦いにとどまらず、参院選後の政界再編を占う最重要選挙区となるかもしれない。果たして、どの勢力がこの大激戦を制するのか──結果を注視したい。

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