岸田文雄首相が旧統一教会問題で迷走答弁を重ねる山際大志郎大臣を更迭しないのは、物価高への無為無策をはじめ様々な失政に対する首相への批判をかわす「弾よけ」にする狙いだろう。
山際大臣が何もかも忘れてしまったとして誤魔化す姿は醜悪そのもので、為政者として「説明責任」を果たさないことは断罪すべきなのだが、そこへ批判を一点集中させては岸田首相の思惑に沿ってしまう。
とはいえ、政権延命のために首相以外の悪者を次々に用意しなければならないほど、岸田政権が追い込まれているのは間違いない。政権崩壊に向けて負のスパイラルに突入したようにもみえる。
政権というものはいったんこのモードに入るとなかなか立て直しは難しい。政治家も官僚もマスコミも「この政権は長くは続かない」と見切ったとたん、それぞれの利益を優先して動き出すからだ。
岸田首相が10月中に総合経済政策をとりまとめてると表明した後、霞が関から打ち上げられる経済政策の数々をみて、もはや官僚たちに政権を支える(政権に取り入る)という意識はなく、むしろ凋落していく政権に不人気政策を押し付けてどさくさに紛れて実現してしまおうという「省益優先」の空気が急速に強まっていると私は感じた。
国民が苦しむガソリン代や電気代の高騰を石油業界や電力業界へ巨額の補助金を注ぎ込む機会としか考えていない経済産業省、コロナ禍に続いて物価高も旅行業界に補助金を注ぎ込む好機ととらえて全国旅行割に邁進する国土交通省、肥料高騰で農協に補助金を注ぎ込むことばかり考えている農林水産省…。彼らの目線の先にあるのは自分たちの天下りを受け入れてくれる業界であって、ひとりひとりの国民ではない。
そのなかでも河野太郎大臣が健康保険証を廃止してマイナンバーカードに一本化する「マイナ保険証」を打ち上げたのは驚いた。これほどの不人気政策を内閣支持率が続落するなかでよくぞ打ち出したと思ったからだ。
マイナンバーカードのほんとうの狙いは、財務省(税務当局)が国民の資産や所得を完璧に把握し、税金や社会保障費を確実に負担させることにあるのは、もはや常識である。これは消費税増税に並ぶ財務省の悲願といっていい。健康保険証を廃止するという強制措置を断行し、任意としてきたマイナンバーカードの取得を事実上強制することを狙ったものだ。
河野大臣の「マイナ保険証」表明の背後に、財務省の意向があるのは間違いない。財務省の後見人は安倍・菅政権で財務相を長く務めた麻生太郎副総裁である。河野大臣は麻生派に所属し、前回総裁選で敗れた時は麻生氏の支持を得られなかったことが響いた。ポスト岸田に再挑戦するにあたり、麻生氏の意向には逆らいにくい状況にある。
財務省は安倍・菅政権で影響力が低下していたが、岸田政権で復権した。本来ならば岸田政権の継続に最も力を貸しておかしくはない立場だ。マイナンバーカードのゴリ押し方をみると、その財務省も岸田政権は長くは続かないとみて、いまのうちに不人気政策を押し付けてすこしでも省益を実現しておこうと考え始めたのだろう。次に繰り出すことを狙っているのは、もうひとつの悲願である消費税増税に違いない。
このように政治家、官僚、マスコミが「この政権は長くは続かない」と見切ったら、政権を揺るがすテーマが次々に浮上してくるものだ。岸田政権はそのような負のスパイラルに入ったのである。
先週のユーチューブで公開したサメジマタイムスが選ぶ「ダメダメTOP10」が好評だったので、今週も第二弾を作りました。一週間を振り返るとほんとうに「ダメダメ」なことが相次いだものです。おかげさまでランキングを作るのに苦労しました。あらためて岸田政権の失速ぶりを痛感する内容です。