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現金一律給付は自然災害級の国難に限る?物価高に直面する国民生活の危機に鈍感な岸田首相答弁

岸田文雄首相が物価高騰に対処するために打ち出した所得税減税が不評だ。

①各世帯の減税額がわかりにくい②来年夏の実施が遅すぎる③減税額が少ない④非課税世帯への給付に現役世代の不公平感が募るーーことが理由である。

なぜ現金一律給付ではなく所得税減税なのか。世の中の関心はそこに集まっている。今回の所得税減税+非課税世帯への給付に必要な財源をすべて現金一律給付にまわせばひとり5万円程度は可能だろう。さらに国債などを財源にすれば、コロナ禍の現金10万円の一律給付の再現も十分に可能だ。

岸田首相は10月30日の自民党役員会で、「国会では減税と給付金のどちらが適切かという議論になっている」と前置きしたうえ、「国民全般に現金を広く一律給付する手法は新型コロナなど、自然災害級の国難ともいえるような事態に限るべきとの立場」と説明したという。

現在の物価高は、ウクライナ戦争に端を発する原油や食料の高騰が直接的な要因だ。まさに国際政治の失敗によって庶民の暮らしが危機に直面したのである。さらに30年にわたる日本の失政が招いた経済力の低迷が急速な円安をもたらしたことが拍車をかけている。

国難は自然災害だけではない。失政による国難も忘れてはならない。権力者が自分たちの失敗を棚に上げて、自然災害だけを国難を位置付けるのは、あまりに身勝手な論理である。

内閣支持率が続落し、自民党内でも首相批判が高まっている。岸田首相は国会でも不敵な笑みを浮かべたり、高揚感をみなぎらせたりする様子が映像で伝えられている。

政権発足当初の「聞く力」「丁寧な説明」という言葉は消え、世論と乖離した強権政治家の様相を強めてきた。

防衛増税も所得税減税も「オレが決めたことなんだから従え」と言わんばかりの姿勢である。

その首相は米国のバイデン政権だけには低姿勢だ。イスラエルとパレスチナの紛争でも、当初は中立的立場を示しながらも、あっさりと転換。国連総会はイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突をめぐる緊急特別会合で、人道回廊の設置や「人道的休戦」を求める決議案を121カ国の賛成で採択したが、日本は米国やイスラエルとともに反対に回った。

国際社会は分断され、国内経済は深刻さを増している。中東の危機が原油高を再燃させ、日本国内にさらなる物価高をもたらす恐れもあろう。

まさに国難ではないか。

現金一律給付は自然災害級の国難に限るという岸田首相の認識は、国民生活が直面する危機にあまりに鈍感というほかない。

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