岸田文雄首相の「闇パーティー」疑惑が国会で浮上した。
立憲民主党の大西健介議員が追及したところによると、岸田首相の地元・広島で2022年6月、政財界関係者らが発起人となって任意団体をつくり「総理就任を祝う会」を開催。飲食の提供はなく、会費1万円で1100人が参加した。この任意団体の代表は、岸田文雄後援会の代表と同一人物だという。
だが、会場の受付や経理は岸田事務所が担当した。会費収入のうち約320万円は、岸田首相が代表を務める自民党支部に寄付されたという。
岸田首相は、受付や経理を岸田事務所が担ったことについて「事務局から不慣れだとの相談を受け、私の事務所がお手伝いをした」と説明。「祝う会」を主催したのはあくまでも任意団体であり、政治資金パーティーではなく「純粋な祝賀会だ」と強調した。
これに対し、大西議員は実質的には岸田首相が開催した政治資金パーティーであり、収支報告書に記載していないのは不記載にあたると主張。「闇パーティー」として厳しく批判したのである。
岸田首相は「いわゆる派閥」の解消を打ち上げ、派閥からカネと人事の権能を奪うことで実効性を担保すると説明している。政策集団として存続することは認めつつ。①派閥による政治資金パーティーの禁止②派閥が人事の推薦名簿を提出することをやめるーーの2点を徹底することで「いわゆる派閥」は姿を消すという主張だ。
しかし、岸田首相自身の「闇パーティー」のように、「任意団体による祝賀会」の名目で集めた資金の一部を政治家側が受け取ることが許されるのなら、派閥が自ら政治資金パーティーを開催しなくても、任意団体を設立して事実上のパーティーを開催し、収入を派閥に寄付してもらえばよいことになる。
つまり、岸田首相は自らが打ち上げた派閥解消策の抜け道を、自ら実践していたということだ。
このような抜け道がたくさんあるから「派閥による政治資金パーティーの禁止」を打ち出してところで、自民党内の大勢は強く反対しないのである。
岸田首相が派閥解散を打ち上げた大きな狙いは、裏金事件で高まる政治資金の不透明さへの批判をかわすことにあった。しかし、自民党の歴史を紐解けば、派閥解消は何度も表明されながら、ほとぼりがさめれば復活することの繰り返しである。
重要なのは派閥解消ではない。政治資金の透明化だ。派閥解散に目を奪われて、政治改革の本筋が政治資金の透明化にあることを忘れてはならない。
岸田首相の闇パーティー疑惑は、政治改革の議論が本筋をそれ、派閥解消論で誤魔化されつつある現状に警鐘を鳴らしたと言えるだろう。