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小池百合子知事の学齢詐称疑惑「嘘をついている」ことよりも深刻な二つの問題①国民の税金で学歴を買った?②エジプト政府に弱みを握られた?

ポスト岸田に浮上していた東京都の小池百合子知事の学歴詐称疑惑が再燃し、4月28日投開票の衆院東京15区補選を含む政局に大きな影響が出ている。「マスコミがカイロ大学に確認すればいいのでは」という声もあるが、事はそう単純ではない。小池知事とエジプト政府がカイロ大卒をでっちあげた「共犯関係」にある可能性が指摘されているからだ。

その場合、小池知事が国民を騙しているというだけではなく、国益にかかわる重大な事態に発展する。だからこそ、疑惑解明は不可欠である。

最大の問題は何か。じっくり解説しよう。

小池知事がカイロ大学を卒業したことへの疑念は、前回知事選(2020年)の直前に高まった。この時はエジプト大使館が、卒業を証明するカイロ大の声明文をフェイスブックで公開し、事態は沈静化。小池知事は都知事選に圧勝して再選を果たした経緯がある。

この学歴詐称疑惑が再燃したのは、小池元側近の小島敏郎氏が文藝春秋で、この声明文について「小池氏が作成した」ことを暴露したからだ。小島氏自身がカイロ大に声明文を出してもらうことを発案し、元ジャーナリストが原案を作成し、小池氏が仕上げてエジプト側へ渡したという内容である。

小島氏は「小池氏がカイロ大学を卒業していない相当な理由がある。自分は偽装工作に加担してしまったのではないか」と語っており、衝撃の内部告発といっていい。

小島氏は東大法学部を卒業した弁護士である。環境省キャリア官僚から小池知事就任にともなって東京都の特別顧問となり、都民ファースト事務総長を務めた側近中の側近だった。告発内容は信憑性が高いとみられている。

これに対し、小池知事は定例記者会見で「カイロ大を卒業したことはカイロ大が認めている」と繰り返すばかりで、声明文を作成した事実はあるのかどうかについては避け続けた。

カイロ大学の声明そのものに疑惑が向けられているのに、その声明をもって「卒業した」と言い張るだけでは、自らの潔白を立証したことにならない。

専門家によると、エジプトは軍事政権下で、国内外の政治家や軍幹部の子息らに「不正卒業証書」が発行されてきたといわれる。「カネやコネで卒業証書を手にいれることは十分可能」との証言も相次いで報じられている。カイロ大学に卒業の有無を確認しても、実態解明はできないといっていい(日本でも財務省の公文書改竄や検察の証拠改竄が行われてきたので、他国政府の批判ばかりはできない。政府が認めたからといって事実とは限らないのは世界の常識だ)。

しかも日本政府はエジプトに巨額のODAを実施してきた。日本の大物政治家である小池知事の意向は簡単には無視できない。

さらに小池知事は2022年11月にエジプトを訪問し、閣僚と面会して両国の連携を確認したほか、カイロ大も訪問して講演しているのだ。当時も「学歴を証明してもらったお礼に行ったのではないか」との憶測を読んだが、元側近の暴露で改めて小池知事とエジプト政府・カイロ大学の不透明な関係に関心が集まるのは必至だ。

そもそもカイロ大学の声明がエジプト大使館にアップされたのは不自然だった。小池知事は声明作成に関与したのか、明確に説明する責任がある。

元側近の小島氏は小池知事を刑事告発することも検討しているという。

最初に問われるのは、学歴詐称だ。公職選挙法では虚偽事項を公表して選挙に出馬した場合の罪が定められている。だが、この時効は3年。前回知事選分はすでに時効が成立している。

問題は、今年7月の知事選だ。

小池氏が改めてカイロ大卒を掲げれば、新たに公選法違反の疑いが発生する。かといって小池氏がカイロ大卒を掲げなければ「やはり学歴詐称だったのか」と認めるようなものだ。いずれにしろ小池知事は追い詰められる。

そこで出馬自体を断念し、政界引退に追い込まれる可能性が出てくる。衆院東京15区補選への出馬を見送った本当の理由も学歴詐取疑惑にあるとの見方が政界では強まっている。

小池知事がカイロ大の声明文を勝手に作成したのなら、私文書偽造が成立する。エジプト政府と連携して偽造したのなら「共犯」となる。カイロ大学に事後的に了承を得たとしても免責されるかどうかは微妙だ。卒業の有無とは別に、声明文作成の経緯そのものも重大な疑惑といっていい。

深刻な問題は、小池知事がODAをはじめ日本政府のエジプト支援を背景に「卒業証明」を得たとすれば、税金で学歴を買ったという構図が成り立つことだ。これは日本の有権者の怒りを爆発させるだろう。小池知事の政治生命は尽きることになる。

さらに問題なのは、小池氏がエジプト政府に秘密を握られた可能性があることだ。本当は卒業していないのに、エジプト政府のはからいで卒業を偽装したとすれば、小池知事はエジプト政府に政治生命を握られたことになる。このような立場で知事を続けることは不可能だ。まして首相を目指すことなどあり得ない。これまた政治生命は終わるといっていい。

以上の状況を踏まえると、この疑惑はうやむやにしてはいけないことがよくわかる。マスコミは相変わらず小池知事に手ぬるいが、ことの重大性を理解しているのだろうか。

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