政治を斬る!

小泉進次郎、首位に急浮上!ポスト石破レースは「高齢女性VS現役世代男性」の構図に

「次の総理」にふさわしい政治家は誰か――。6月中旬に実施された産経新聞とフジテレビの合同世論調査で、意外な結果が浮かび上がった。トップに立ったのは、かつて「終わった人」とも揶揄された小泉進次郎・農林水産大臣。農水族が握ってきた利権の構造を正面から打ち破る姿勢が世論の支持を集め、一気に政界の表舞台に返り咲いた。

この世論調査は、石破茂政権の下で誰が後継総理にふさわしいかを問うもので、進次郎は20.7%と堂々の1位。2位は16.4%の高市早苗氏。これまで「ポスト石破」の筆頭と見なされていた高市氏を逆転する結果となった。

進次郎にとって、これは劇的な復活劇である。昨年の自民党総裁選では「主役」ともてはやされたものの、出馬表明後の政策に保守層が猛反発。「解雇規制の見直し」や「選択的夫婦別姓」といった争点が保守層に不評を買い、党員票で石破・高市両氏に大きく引き離された。決選投票に進めず、総裁選は惨敗。石破内閣では選対委員長を務めたものの、総選挙での敗北を受け辞任。その後の存在感は急速に低下していた。

そんな進次郎に転機が訪れたのが、米価高騰を背景にした農水省人事の刷新だった。江藤農水大臣が「コメは買ったことがない」と失言し更迭されると、石破総理は進次郎を後任に起用。すると進次郎は、備蓄米の無制限放出やコメ増産といった政策を矢継ぎ早に打ち出し、マスコミの注目を一気に集めた。農水族を敵に回してでも農政改革を断行する姿勢が、国民の共感を呼んだ。

結果として、自民党と内閣の支持率も上昇。石破総理は参院選に向けて一息つくことができたが、進次郎の台頭は、皮肉にも石破氏自身の政権基盤を脅かす要因ともなり得る。

一方、進次郎に次ぐ支持を得た高市早苗氏は、苦しい立場に立たされている。

昨年の総裁選決選投票で石破氏に惜敗し、政権入りを期待されたものの、提示されたのは総務会長ポストだった。これを拒否し、反主流派に軸足を置いたが、支持基盤だった旧安倍派の中堅若手は選挙で大幅に議席を失い、高市氏の影響力は急速に萎んでいった。

高市氏は麻生太郎元総理に接近し、与党内での巻き返しを模索したが、麻生氏は国民民主党の玉木雄一郎代表を担ぐ連立構想に傾き、高市氏には冷ややかな態度を取った。

その後、国民民主党が支持率を落とすと、高市氏の再浮上も期待されたが、代わって農水大臣に就任した進次郎が話題をさらい、高市氏は再び影を薄くしている。

今回の世論調査では、両者の支持層の違いも浮き彫りになった。

進次郎は18〜29歳の若年層と、60代以上の高齢層、とりわけ70歳以上で圧倒的支持を得ている。テレビメディアでの露出が多く、コメ政策に取り組む姿が高齢者に好印象を与えているとみられる。とりわけ高齢女性からの支持は群を抜いており、全体の支持者のうち59.7%が女性だった。

対する高市氏は、30代から50代の現役世代男性からの支持が強い。経済政策や安全保障への発信が、働き盛りの層に届いているのだろう。ただし、高齢者からの支持は極めて限定的で、70歳以上では7.6%にとどまっている。

地域別では、進次郎が東北・四国・九州といった地方で強く、高市氏は近畿・北陸信越・東京など都市部に支持が集中。都市vs地方、若者と高齢女性vs現役世代男性という構図が、今後の政局にも影響を与えそうだ。

進次郎の強みは、公明党支持層から42.9%の支持を得ている点にも表れている。高齢化が進む創価学会にとって、進次郎の「選挙の顔」としての魅力は大きい。反対に高市氏は、維新や国民民主支持層から一定の支持を得ており、少数与党国会のもとで首相を目指すのなら、維新や国民との連携が鍵を握ることになりそうだ。

3位以下には石破茂(7.9%)、野田佳彦(6.8%)、河野太郎(4.2%)、玉木雄一郎(4.1%)、林芳正(2.4%)が続く。石破政権の現職総理である石破氏自身は、ポスト石破レースから大きく引き離された形だ。野田氏は大連立構想の台頭で浮上した。河野氏は影が薄く、玉木氏は失言で失速。林官房長官はポスト石破の「本命」とされながら、国民的人気に欠ける。

結局、いまの政局は「進次郎が高齢女性の圧倒的支持を得てトップに浮上」「高市が現役世代男性の期待を集めて追う」という構図だ。この二人の対照的な支持基盤が、今後の自民党総裁選、そして政権の行方を大きく左右することになる。