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「高市一強国会」開幕――数の力が塗り替える永田町

国会が始まった。総選挙前とは景色が一変している。自民党は戦後最多の316議席を獲得し、単独で3分の2を超えた。参院で否決されても、衆院で再可決すれば成立する。もはや野党の賛成は不可欠ではない。

しかも野党は分裂気味で、第一党の座をめぐる競り合いまで起きている。数の力がすべてを決める――「高市一強国会」の幕開けである。

衆院は自民の天下

衆院では自民が圧倒的多数を握る。参院過半数回復のために国民民主党を連立に引き込む必要はなくなった。連立相手の日本維新の会も、数の上では“不可欠”ではない。それでも連立を維持するのは、1月解散の大義が「連立政権の信任」だったからだ。勝った途端に切るわけにはいかない、という政治的配慮である。

維新は36議席。与党全体では352議席に達し、4分の3超。委員会の構成も本会議も、与党色が濃い。衆院議長には麻生派の森英介元法務大臣が就任した。1月解散を知らされず激怒した麻生太郎氏へ配慮した人選だ。

委員会運営は一変する。野党の質問時間は限られ、対決法案が数の力で押し切られる場面は増えるだろう。予算委員長ポストも自民が握る。高市首相の旧統一教会問題など、スキャンダル追及は勢いを欠く可能性が高い。

1月解散の影響で新年度予算案の審議入りは遅れ、年度内成立は日程上厳しい。それでも衆院の議席を背景に、首相は成立をあきらめていない。国民民主党の玉木雄一郎代表は「与党の質問時間ゼロ」を提案。審議時間を削りスピード採決に持ち込むという前代未聞の国会運営も現実味を帯びる。

野党第一党をめぐる火花

衆院の野党第一党は中道(49議席)。単独で内閣不信任案も出せない、史上最弱の第一党だ。これに続く国民民主党は28議席。衆参合算では国民が野党第一党になる。

NHK討論では、国民の榛葉賀津也幹事長が中道の小川淳也新代表より上席に座り、「我々が野党第一党」と強調。小川氏が「衆院では第一会派」と応じる場面もあった。連携どころか、主導権争いの様相だ。自民が両党を分断しつつ国会を掌握する構図が見える。

副議長人事も象徴的だった。慣例では衆院の野党第一党から選ぶが、中道が推した泉健太元代表(51)は辞退し、最終的に公明前代表の石井啓一氏で決着。ベテランが相次いで落選し、人材が枯渇した現実が透ける。

第三党は参政党(15議席)。チームみらい11、共産4、ゆうこく1、れいわ1、無所属4。共産やれいわは衆院での発言力を大きく失った。野党の影は薄く、衆院はまさに自民の天下である。

参院はブレーキになれるか

参院の景色は異なる。自民は101人で、過半数に24足りない。維新19を加えても5足りない。野党第一党は立憲40、公明21。両党は中道に合流せず、統一会派も組まない。

国民民主は25。自民と国民を合わせれば過半数を超えるため、かつては連立拡大論が浮上した。だが衆院で3分の2を得た今、国民の連立入りの機運は後退しかねない。

参院には「衆院に対抗する」気風がある。衆院の圧倒的多数で参院が無力化されるほど、逆に存在感を示そうとする動きが出ても不思議ではない。予算案は衆院可決後30日で自然成立するが、年度内成立の鍵を握るのは参院だ。スピード採決を求める首相にどう向き合うのか、最初の試金石である。

維新の本音と取引

予算成立後の焦点は、自民と維新の連立合意の柱である議員定数削減法案だ。1年以内に削減を伴う改革がまとまらなければ、小選挙区25、比例20を自動削減するという異例の仕組み。野党は猛反発し、自民内にも慎重論がある。

3分の2を単独で持つ自民にとって、維新の発言力は低下。棚上げ論も強い。維新が連立を離れても国会は回る、という強気さえ漂う。

維新の吉村洋文代表が最重視するのは、副首都構想の関連法案だ。大阪を副首都に位置づけ、国の資源を引き込む。その実現こそが本命とみられる。首相は次の内閣改造で維新からの入閣も示唆する。定数削減や副首都を過度に迫らなければポストを用意する――そんな取引の気配もある。

会期末は7月17日。閉会後には内閣改造が控える。数の力が支配する「高市一強国会」は、衆院の圧倒と参院の矜持、そして維新との駆け引きの中で進む。問われるのは、「高市一強」の行き先だ。