米価の急騰が国民生活を直撃している。令和の米騒動と呼ばれる状況が今、進行中だ。
江藤農水相は、ついに備蓄米21万トンの放出を発表し、その対応の遅れを認めた。しかし、米価がわずかに下がるかもしれないこの措置は、根本的な解決にはつながらない。
農水省や一部のマスコミは米価高騰の原因として「誰かが買い占めている」といった情報を流しているが、これは明らかに誤った情報、いわゆるフェイクニュースである。
実際、米価高騰の真の原因は別にある。農政の失敗を隠すために、「買い占め」のせいにすることは、真実を覆い隠すための方便にすぎない。
物価は、需要と供給の関係で決まる。供給が過剰であれば価格は下がり、逆に需要を上回る供給不足が生じれば価格は上昇する。
米の場合、円安や輸入小麦の価格上昇に伴い需要が増え、一方で供給は減少している。その背景には農水省の長年にわたる減反政策と、農家の高齢化という現実がある。
農水省は「減反政策を終了した」としているが、これは事実と異なる。実際には米作から転作した農家に補助金を支給し、米の生産量を抑制してきた。その目的は、米価を高く維持するためである。この政策は、農家の利益を守るという名目で行われ、米価の維持が農水省とJA(農業協同組合)の省益に繋がっていた。
米価が下がると、米を集めて流通させるJAの利益が減少するため、農水省はJAと密接に連携し、米の流通システムを守ることを最優先してきた。そのため、米の生産力は減少し、農家は米作から離れ、後継者問題が深刻化する中で、日本は慢性的な米不足に陥った。
かつての「米が余る時代」は終わりを迎え、今や米不足と米価の高騰が現実となった。もしも農水省が本当に農家を支援し、米の生産量を増やして日本米の国際競争力を高めていれば、米は今頃、立派な輸出品として成長していたはずだ。しかし、その道を選ばなかったのは、農水省がJAとの利権結びつきの中で国内利益を守ることを最優先した結果である。
その結果、米の不足と高騰は国民生活を圧迫し、農家も消費者も犠牲となった。この責任を隠すため、農水省は「買い占め」のせいにするフェイクニュースを流している。そして、それを無批判に報じる一部のマスコミが存在することが、問題をさらに深刻化させている。
米価急騰の背後には、農政の誤りと利権構造が深く関わっている。この現実に向き合い、真の改革が必要であることは言うまでもない。