7月の参院選を前にして、最新の世論調査が政界に衝撃を与えています。共同通信が6月中旬に実施した全国電話世論調査によれば、小泉進次郎農水大臣が掲げる「コメ増産」に、なんと88.5%もの国民が賛成すると答えました。反対はわずか7.6%。賛否がこれほどまでに偏る調査結果は極めて異例です。
通常、どんなにわかりやすく国民に支持されそうな政策でも、9割が賛成という数字はなかなか出ないものです。裏金問題に対する怒りや、消費税減税といった項目ですら、賛成は8割台に届くことは滅多にありません。しかし今回の「コメ増産」では、それを上回る圧倒的な支持が示されました。
背景にあるのは、日本の農政が長年抱えてきた歪みへの不満です。
農水省や農林族が農協の利益を優先し、コメの生産量を人為的に抑制することで米価を維持してきた。その結果、コメ不足が起き、価格は上昇しました。この不合理な仕組みが、ようやく多くの国民に認知されるようになってきたのです。
進次郎大臣は、この世論を受けてさらに攻勢を強めています。農水省がこれまで公表してきたコメの収穫量調査が実態とズレている可能性があるとして、調査方法の見直しに着手する方針を示しました。これによって「農水省VS進次郎」の構図がより鮮明になり、劇場型政治として注目度はさらに高まるでしょう。
この進次郎人気は、自民党全体にも恩恵をもたらしています。共同通信の調査では、内閣支持率が前月比で5.3ポイントも急上昇し、37.0%となりました。これはまさに「進次郎効果」です。これまで低迷していた石破内閣を、進次郎ひとりが救い上げた格好です。
しかし皮肉なことに、肝心の石破総理が掲げる「現金給付」政策は真逆の評価を受けています。
石破総理が発表した政策は、国民一人あたり2万円、低所得者や子どもにはさらに2万円を加算して最大4万円を支給するというもの。しかし、世論の反応は冷ややかで、賛成41.2%に対して反対が54.9%と、反対が上回っています。
本来、お金をもらえる政策で反対が過半数を超えるのは異例です。これだけ反発が強いのは、国民の間で「またバラマキか」という不信感が広がっているからでしょう。特に中間層は、減税を求めているのに「なぜ現金給付なのか」と疑問を抱いています。
実際、ネット上では「配るくらいなら最初から取るな」という声が多く聞かれます。昨年の総選挙で国民民主党が減税路線を掲げて躍進した背景には、この中間層の不満がありました。
しかも今回の給付金は、赤字国債を発行せずに税収の上振れ分で賄うという制約がついており、その結果、一人2万円というショボい金額になった。さらに低所得者や子どもにだけ上乗せする仕組みが、中間層の怒りに火をつけています。
火に油を注いだのが、自民党の森山幹事長による“迷コメント”でした。
森山氏は「2万円の根拠は、一年間の食費にかかる消費税分だ」と説明。しかし、税率8%で計算すると、年間の食費は25万円──つまり、1日あたり685円で暮らせるという計算になります。ネットは即座に反応し、「そんな生活無理だろ!」と大炎上。
さらに森山氏は「育ち盛りの子どもに十分な食事を」とまで発言しましたが、1日685円では到底十分とは言えません。この発言は逆に、自らの説明の矛盾を露呈してしまいました。
そもそもこの2万円という金額設定は、財務省の「赤字国債は出さない」という縛りから逆算された数字です。それを後付けで「消費税相当額」という理屈を持ち出したことで、かえって不信感を招く結果となりました。
こうして、石破総理の現金給付策は世論の支持を得られないばかりか、進次郎人気に水を差す格好となっています。
さらに立憲民主党にも逆風が吹いています。
今回の世論調査で、内閣不信任案を「提出すべき」と答えた人は38.7%にとどまり、「提出すべきではない」が51.6%に達しました。
立憲民主党の野田佳彦代表が「トランプ国難」を理由に不信任案提出に消極姿勢を示したことで、「結局は自公との大連立が目的なのではないか」という疑念が広がっています。
野田代表の本音は、衆参ダブル選挙に突入すれば、進次郎人気を背景にした自民党に惨敗する恐れがあるため、なんとしてもそれを避けたいということでしょう。参院選後に自公との大連立交渉を進めたい──これが本音と見られています。
しかし国民は、そんな野党の思惑に乗る気はありません。不信任案を出せば、結果的に石破政権が勢いづく。かといって野党が政権交代を目指す気概もない。だったら茶番劇に加担する必要などない、という冷めた感覚が広がっているのです。
今回の世論調査は、国民が進次郎の農政改革には強く期待しつつも、石破政権や野田立憲には強い不信感を抱いていることを如実に示しました。
7月の参院選──問われるのは単なる与党対野党の構図ではなく、この国を根本から変える気概がある政治家が誰なのか。その見極めを迫られる選挙となるでしょう。