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維新や国民が加わる連立拡大を警戒、創価学会の高齢化で不人気首相による総選挙への拒否感、そして小池百合子知事の国政復帰を待望…公明党が「4月裏金解散」を嫌がるこれだけの理由

公明党の山口那津男代表が3月5日の記者会見で、岸田文雄首相が4月に衆院解散・総選挙に踏み切るのではないかとの見方に対し、「政治の信頼回復ができない限り解散するべきではない」と反対を鮮明にした。「いまこれだけ政治不信が深まっている、それを裏付けるように支持率も下がっている状況だ。政治への信頼を回復するトレンドが作り出せない限り解散はすべきではない」と強調した。

3月4日の参院予算委員会では、立憲民主党代表代行の辻元清美氏が「4月裏金解散」に言及。岸田文雄首相が9月の自民党総裁選で再選を果たすには、自民大逆風の4月28日投開票の衆院3補選で敗北するわけにはいかず、一か八かの4月裏金解散で衆院3補選を吹き飛ばすことを考えているのではないかと迫った。

翌日の参院予算委ではれいわ新選組の山本太郎代表も早期解散の可能性をただした。

岸田首相はいずれも「全く考えていない」と否定したが、野党は4月裏金解散への警戒感を強めている。

裏金事件で内閣支持率や自民党支持率が過去最低水準に落ち込んでいるにもかかわらず、野党が4月裏金解散を大歓迎するどころか警戒感を強めているところに「野党の準備不足」がみてとれる。政権交代の機運がまったく盛り上がっていないため、公明党の山口代表も4月裏金解散の現実味をひしひしと感じているからこそ、岸田首相に対して釘を刺したといえるだろう。

では、公明党はなぜ4月解散を嫌がるのか。

山口代表も4月解散を断行したところで、自公与党が野党へ転落するのは考えていない。ただし、自民大逆風の影響で公明党の苦戦も免れず、裏金事件のほとぼりがさめるまでは解散総選挙を先送りしたいのは本音だ。

公明党は裏金事件を受けて連座制の導入を主張し、岸田首相も前向きな姿勢を見せている(公明党は創価学会に全面支援された組織政党であり、自民党のように「秘書が議員を追い落とすために意図的に収支報告書に虚偽記載をする懸念がない)。公明党主導で政治資金規正法改正を実現したのちに、それを成果として解散総選挙を戦いたいという思いもあろう。

次に公明党も創価学会の高齢化で選挙運動力が低下している。できれば人気のある首相のもとで総選挙を戦いたいと考えている。岸田内閣の支持率は過去最低水準に落ち込んでおり、その逆風をはねかえすほどの選挙運動量を確保することに自信がないという側面もあろう。

さらに万が一自公与党が過半数割れしたり、過半数は維持したとしてもギリギリだった場合は、日本維新の会や国民民主党を連立政権に迎え入れ、連立の枠組みを拡大する可能性が出てくる。自公連立から、自公維あるいは自公国の3党連立になれば、おのずから公明党の政権内での影響力・発言力が低下する。これは絶対に避けたいところだ。

公明党が連立の窓口として連携してきた菅義偉前首相や二階俊博元首相が4月解散を望んでいないということもある。4月解散で岸田首相が勝利すれば、9月の総裁再選に大きく前進し、菅氏や二階氏の影響力は低下して自民党内の世代交代が進む可能性がある。公明党は自民党内で菅氏や二階氏にかわる次世代の連携相手を見出せておらず、菅氏や二階氏の影響力低下を望んでいない。

最後に公明党と気脈を通じている小池百合子東京都知事が国政復帰し、女性初の首相としてポスト岸田に名乗りをあげることを期待している向きもある。

小池知事が4月28日の衆院東京15区補選に電撃出馬し、当選後に自民党へ復帰して9月の総裁選に出馬するという憶測が永田町ではくすぶっている。岸田首相が4月解散を画策しているのは、小池知事の補選出馬による国政復帰を阻止する狙いもあるかもしれない。仮に小池氏が解散総選挙に出馬しても、総選挙さえ終われば「選挙の顔」を期待する小池待望論は沸き起こらないだろう。岸田首相の4月解散には、石破茂元幹事長や上川陽子外相への待望論をつぶすのと同じように小池対策の側面もあるのだ。

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