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今国会最大の焦点・選択的夫婦別姓に自民が反対を貫ければ公明は連立離脱するのか?公明代表の発言を徹底検証〜党勢は衰退しても永田町で影響力を維持する根本的理由

公明党の斉藤鉄夫代表が「連立離脱」を示唆し、波紋を広げている。自公連立から25年。公明党はすっかり与党病が蔓延し、創価学会の高齢化も進んで、党勢は衰退の一途をたどっている。自民党の裏金事件を機に、自公連立をこのままダラダラ続けても党勢衰退は止まらないという危機感が広がっている。

自公連立が崩壊すれば、政界は大激動だ。さて、どうなるのか。斉藤代表の発言を分析してみよう。

問題の発言は、朝日新聞の単独インタビューで飛び出した。ポイントは以下の3つだ。

①結党の原点に

「衆院選は大変厳しい結果となった。結党60年の節目だったが、重く受け止め、結党の原点に立ち返って再スタートしたい」

公明党の結党の原点は、社会福祉にある。高度経済成長期に農村部の次男・三男が都会に出てきて労働者となった。彼らの生活は苦しく、社会福祉政策への期待が高まった。公明党は都市部の労働者階級に浸透し、共産党と激しい支持者争奪戦を繰り広げたのである。

経営者・富裕層は自民党を支持、大企業のサラリーマンや公務員は労働組合を通じて社会党を支持、都市部の労働者階級は公明党や共産党を支持するというのが、高度経済成長期の日本政界の構図であった。

時は巡り、1999年に自公連立が発足した後、公明党はすっかり与党色が強くなった。支持母体である創価学会の2世3世は裕福になり、外務省や検察庁など中央省庁にも人材を輩出するようになった。今の岡本三成政調会長のように大富豪の国会議員も誕生したのである。

自民党と一体化が進む中で、公明党はすっかり与党の色に染まったのだ。

他方、創価学会の高齢化・弱体化は進み、公明党の組織力・集票力は年々減っている。2005衆院選は898万票でピークだった。しかし2022参院選は618万票、2024衆院選はついに596万票を下回った。

2023年には創価学会のカリスマである池田大作名誉会長が他界し、24年には公明党を15年率いてきた山口那津男代表が世代交代を理由に退任し、後任の石井啓一代表は衆院選で落選して辞任。斉藤代表は山口氏と同じ72歳だったが、緊急登板したのである。公明党は人材難をさらけ出した。

このまま自公連立を続けていくだけでは党勢回復は望めない。斉藤代表の危機感はにじんでいる。

②自民と野党のつなぎ役

「国民民主党が訴える178万円は厳しいが、123万円にはこだわらない」

「維新の高校無償化の4月実施は準備時間が足りないが、方向性は理解できるので、建設的に議論したい」

公明党は1993年の政界再編で新進党に加わった。当時の新進党には自民党の石破茂首相も立憲民主党の野田佳彦代表も加わっている。

公明党は東京都政では小池百合子知事と蜜月で、連合や国民民主党とも接点がある。豊富な野党人脈が公明党の強みだ。

自公過半数割れをうけて、野党の協力なしに予算案も法案も成立させることができない少数与党国会。自民党と野党のつなぎ役として存在感を増すことを公明党は狙っている。

③連立離脱

「連立を選択した最大の理由は政治の安定だ。ただ、自民に寄りすぎとの批判はある」

「選択的夫婦別姓は今国会で結論を出さなければならない」「自民と案がまとまらない事態になれば、実現するためにいろいろなことを考える段階に入る」

公明党が自民党との違いをアピールしようとしているのは、選択的夫婦別姓だ。今国会後半の最大の焦点である。主要野党と公明党は賛成で足並みをそろえているが、自民党内には反対が根強い。ポスト石破を狙う高市早苗氏は通称使用拡大の法案を用意し、それで十分だとして選択的夫婦別姓反対の急先鋒の立場をとっている。

石破首相は自民党内の基盤が弱く、選択的夫婦別姓に踏み出しにくい一方、少数与党の国会を回すには主要野党や公明党の意向を無視できず、苦しい立場だ。斉藤代表の発言は、石破首相にプレッシャーをかけたといえる。

問題はこの発言を受けて「選択的夫婦別姓が実現しなければ、連立離脱も?」と問われたことに対する斉藤代表の発言だった。

「何があっても自公連立は崩しませんということはない。我が党が譲れないもので意見が対立し、合意が得られなかった場合に連立離脱はあり得る。そういう緊張感を持ってやっている」

この発言はあくまでも自民党への牽制と受け止める見方が永田町では強いが、公明党の党勢低迷を受けて、あながち牽制にとどまらないとの見方もある。

いずれにせよ、自公連立をダラダラ続けているだけでは公明党の党勢回復は見込めず、①自公立の大連立で事態打開か②連立離脱で政界再編かーーという政局を視野に入れながら選択的夫婦別姓問題に臨むことになる。

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