日本の政界が、いま大きく組み替わろうとしている。
自民党は長年の連立相手だった公明党を切り離し、新たなパートナーとして日本維新の会を迎え入れた。一方、公明党は野党に転じ、立憲民主党への接近を強めている。
「自民・維新」対「立憲・公明」。
これまでの与野党の枠組みが、まるでシャッフルされたように入れ替わった。
この再編劇の発火点は、高市早苗政権の誕生にある。
高市政権を牛耳る麻生副総裁は「公明嫌い」で知られ、連立維持に消極的だった。公明党は当初、「高市が倒れれば戻れる」との未練をにじませていたが、政権が維新との連立に踏み切ったことで、その望みは完全に絶たれた。
しかも連立合意には、防衛力強化や憲法改正推進など、公明党には到底受け入れがたい右寄りの政策がずらりと並ぶ。もはや自民との復縁は現実的でない。
高市政権の世論支持は70%前後に達し、「自公連立の解消を評価する」と答える国民も8割近い。自民党内では「今こそ解散の好機」との声が広がる。
「公明票を失っても保守層と無党派層を取り込めば単独過半数が狙える」という強気の見立てだ。
追い詰められた公明党は、戻りたくても戻る場所がない――そんな孤立状況に陥りつつある。
その公明党がもっとも神経を尖らせているのが、連立合意の柱となった「議員定数1割削減」だ。
衆院比例区を50議席減らす案が軸となっており、比例頼みの公明党や中小政党にとっては致命的打撃となる。
法案に反対して否決させれば、政権は「国民の信を問う」として解散に踏み切る可能性が高い。
高市政権が圧勝して単独過半数を回復すれば、公明党の立ち位置は完全に消える。
そこで公明党は、「比例だけでなく小選挙区も減らすべきだ」と主張し、区割り見直しの時間稼ぎを図っている。年末年始の解散を阻止するのが、当面の生存戦略だ。
この状況下で、公明党は立憲民主党との連携を模索し始めた。
自民と維新の「与党連立」に対抗するには、野党側の結束が欠かせない。
立憲にとっても、比例削減は脅威ではあるが、共通の敵を前に公明との協力は魅力的に映る。
さらに、立憲は安全保障政策を軟化させている。枝野幸男元代表が安保法制を「違憲ではない」と容認し、野田代表も「即時廃止は求めない」と踏み込んだ。
この変化は、自民党との連立で安保法制を推進してきた公明党と歩調を合わせるための地ならしとみてよいだろう。
実際、公明党の西田幹事長は「今後の選挙で立憲候補を推薦することもあり得る」と明言した。
外交・安全保障では立憲と近く、経済政策でも中道志向が重なる両党が接近するのは自然な流れだ。
自民党から追い出され、野党に身を置くことになった公明党にとって、立憲との連携は新たな生存の道となる。
立憲側も公明票の取り込みによって小選挙区での競り勝ちを狙える。
「比例は公明へ、小選挙区は立憲へ」という逆転現象が、次の選挙で現実になるかもしれない。
こうして、政界の対立軸は明確になった。
右派・保守連合の「自民+維新」に対し、中道・穏健派の「立憲+公明」。
国民民主党と参政党が与野党と一定の距離を置き、情勢によってキャスティングボードを握る構図だ。
玉木雄一郎代表は麻生副総裁と近く、高市政権への協力も視野に入れる一方、連合や公明とのパイプも維持する。参政党は独自路線をとりつつ、防衛政策では与党寄りの立場をとる可能性がある。
かつて「55年体制の崩壊」や「政権交代の時代」を経てきた日本政治は、いま再び分岐点に立っている。
「自民・維新vs立憲・公明」。
この政界シャッフルは、単なる組み替えではなく、保守二極化と中道路線再結集という、長期的な再編の序章かもしれない。