自民、公明、立憲民主の3党は来年2月の京都市長選で、鳩山由紀夫内閣で官房副長官を務めた松井孝治・元民主党参院議員を推薦する方針だ。
自公立3党は京都で「反共産」の立場から、これまでも現市長支持で連携してきた。それに加え、関西圏で台頭する維新に対抗するため、さらに連携を強化する構えだ。連合もこの枠組みに便乗するのは間違いない。
立憲が泉健太代表の地元・京都で進める「反維新・反共産」を掲げた自公との連携は、永田町の動きを先取りするものとして注目していい。
立憲京都府連の会長を務めるのはの立憲元幹事長の福山哲郎氏。枝野幸男代表の最側近だ。その枝野氏は代表辞任後、共産党やれいわ新選組と消費税減税を掲げて共闘した衆参選挙は間違いだったと公言している。
枝野氏は消費税増税を突然打ち出した菅直人内閣の官房長官、福山氏は官房副長官を務め、ともに消費税増税を目論む財務省に近い。このほか、立憲現執行部の岡田克也幹事長や安住淳国会対策委員長、さらには野田佳彦元首相(立憲最高顧問)も財務省シンパの財政再建派として知られる。
一方、岸田文雄首相は支持率回復を優先し、財務省の反対を振り切って所得税減税を打ち出した。財務省は岸田政権への失望感が広がっており、財政再建に理解のある「次の政権の枠組み」を模索し始めている。
自民党執行部で財務省に最も理解があるのは、森山裕総務会長だ。菅義偉前首相や二階俊博元幹事長ら非主流派とも親しく、安倍・菅政権で国対委員長を務めた際に財務省に加え、立憲の安住国対委員長との強いパイプを作り上げた。森山ー安住ー財務省ラインで財政再建(消費税増税)を目的とした自公立の連立構想を描く展開は十分にあり得る。
だが、消費税増税が旗印となると、世論の理解は得にくい。そこで自公立の連立構想の旗印として浮上しているのが「反維新・反共産」の掛け声だ。
新自由主義と急先鋒という印象が強い維新と、共産主義への警戒感を払拭できていない共産の双方が政権中枢に近づくことを防ぐため、自公立が連携して「中道政権」をアピールするというわけである。立憲支持層に広がる維新アレルギーと自民支持層に根強い共産嫌いを利用し、自公立連立への反発を和らげようという算段だ。
京都市長選はその動きを先取りするものとして私は注目している。
京都市長選でジョーカー的存在は、国民民主党の前原誠司氏(衆院京都2区)だ。旧民進党代表として小池百合子東京都知事の希望の党への合流を仕掛けた大物議員である。
国民民主党の玉木雄一郎代表は、自民党の麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長を窓口に連立入りを視野に岸田政権へ接近してきた。これに対し、前原氏は維新との連携を画策しており、この秋の代表選に玉木路線を批判して出馬したが惨敗。今後の去就が注目されている。
前原氏は京都市長選で「野党第一党の党首(泉健太代表)のお膝元で、自民、公明と組むのは理解できない」と自公立の相乗りを厳しく批判し、維新と連携して対立候補擁立を探っている。
これに対し、民主党時代は前原氏と長年行動をともにしてきた立憲の福山氏は「前原さんの盟友である松井さんが市政のために尽くしたいと言っている。一緒にやってきた仲間なのに」と反発し、抜き差しならない状況だ。
反維新・反共産を旗印にした自公立の連携は、永田町でも急速に強まっていくだろう。裏のテーマは財務省が主導する消費税増税である。これに対抗して、消費税減税を掲げた政治勢力が結集し、政界の新たな対立軸ができるかどうかが今後の焦点である。