政治を斬る!

もう立憲民主に譲らない!国民民主、全国擁立へ転換〜立憲壊滅で多党時代へ

高市総理は年明けの解散に踏み切るのか。永田町では早くも総選挙を見据えた動きが加速している。そのなかで、ひときわ注目すべき変化が起きた。国民民主党が選挙戦略を大きく転換したのである。

方針は明確だ。立憲民主党との候補者一本化をできるだけ避け、各都道府県に最低一人は候補者を立てる。そして目標議席は「51」。現有議席からほぼ倍増という、野心的な数字だ。

この選択は、次の総選挙の構図を根底から揺さぶる可能性を秘めている。

一本化が生んだ「立憲の大勝」と国民の後悔

国民民主党は前回の衆院選で、全国289の小選挙区に41人しか候補者を擁立しなかった。自公を過半数割れに追い込むため、立憲との一本化に応じた結果であり、連合への配慮も大きく影響していた。

結果はどうだったか。国民は小選挙区11、比例17、計28議席を獲得し、議席を4倍に増やした。一方の立憲は、小選挙区104、比例44、計148議席。小選挙区を中心に50議席も上積みした。

立憲の支持率は決して高くない。それでも議席を大きく伸ばせたのは、国民が多くの選挙区を譲ったからだ。国民がもう少し積極的に擁立していれば、結果は違っていた可能性がある。野党乱立で自民が漁夫の利を得るとしても、最も打撃を受けるのは立憲だったはずだ。

一本化は、国民よりも立憲にとってメリットが大きすぎた――。そんな後悔が、国民民主党の内部に残った。

参院選が決定打になった

この不満を決定的にしたのが、今年夏の参院選である。比例票では、国民民主が若者・現役世代の支持を集め、立憲を上回り野党トップに立った。立憲は参政党にも抜かれ、野党3位に転落した。

ところが選挙区では逆の結果が出る。国民10議席に対し、立憲は15議席。比例は同数だったが、全体では立憲が5議席も上回った。

とくに32の1人区で、国民は連合に遠慮して擁立を抑え、15選挙区で一本化が実現した。その結果、野党は勝ち越したが、勝利の内訳を見ると、立憲が8勝、国民はわずか3勝。比例では国民が支持されているのに、小選挙区では立憲が議席を総取りする――この歪みへの不満は一気に噴き出した。

参政党が突きつけた現実

さらに国民民主に衝撃を与えたのが、参政党の躍進だ。

参政党は野党間の調整に加わらず、すべての都道府県に候補者を擁立。1人区で勝利はなかったが、比例票では立憲を上回り、国民に肉薄した。

複数区では事態はさらに深刻だ。大阪、福岡では参政党が当選圏に食い込み、立憲と国民は弾き飛ばされた。立憲に譲った茨城の2人区でも、参政党に議席を奪われた。

立憲に付き合い、擁立を抑え続ければ、次に追い抜かれるのは自分たちだ――国民民主に強い危機感が広がったのは当然だろう。

山梨と福井に見える「決別」の覚悟

こうして国民民主は、「全都道府県に最低1人擁立」という新戦略に踏み切った。これは立憲との決別宣言であり、連合依存からの脱却とも言える。

象徴的なのが山梨だ。榛葉幹事長は、1区・2区の両方で擁立をめざす方針を表明した。1区は前回、擁立を見送り、立憲が議席を得た選挙区だ。もう譲らない、という意思表示である。

福井も同様だ。参院選では国民が立憲を大きく上回る得票を得た。立憲に配慮する理由は何もない。玉木代表の「事情は変わってきている」という言葉は、野党共闘そのものへの疑問符だ。

立憲を切れば、自民を利するのか

もっとも、立憲と距離を取れば、自民を利するだけではないか、という懸念は残る。福岡では実際に、連合の仲介で立憲と国民の棲み分けが進んでいる。

だが、地域ごとの妥協を重ねれば、国民民主の勢いは削がれかねない。野党との選挙区調整を一切拒んで全選挙区への候補者擁立をめざす参政党の戦略のほうが、有権者にはよほど分かりやすい。

国民民主は、立憲をどこまで振り切るのか。その距離の取り方次第で、立憲の命運だけでなく、自民党の議席数も、国会の勢力図も大きく変わる。
この戦略転換は、日本政治が「二大政党幻想」を完全に終わらせる引き金になるかもしれない。