自民党の裏金事件を受け、後半国会では「企業団体献金」が大きなテーマとなる。立憲民主党は「全面禁止」を主張し、自民党は「公開による透明性強化」を掲げている。しかし、これらの提案は果たして本気の改革なのだろうか?
「全面禁止」に見せかけた立憲民主党の抜け道
立憲民主党は、企業団体献金の「全面禁止」を掲げているが、実は「政治団体を通じた献金」は認める仕組みになっている。たとえば、業界団体が「〇〇業界政治連盟」といった政治団体を設立し、そこを経由して族議員がトップを務める政党支部に献金することは可能なのだ。
これでは「全面禁止」とは名ばかりで、むしろ献金の流れが見えにくくなるだけである。
「公開すれば問題なし」という自民党のご都合主義
一方の自民党は、「企業団体献金を禁止するのではなく、透明性を高めるべきだ」と主張している。
しかし、自民党の最大の問題は、全国に約7800もの政党支部があり、今の制度では、それぞれが独自に企業団体献金を受け取れる点だ。これでは、どれほどの献金がどの政治家に流れたのか、国民には全く見えない。
自民党の「公開」は、実質的に何も変えたくないという意思表示に等しい。
国民民主党の「政党本部一本化」案はどうか?
これらの「骨抜き案」とは異なるアプローチをとるのが、国民民主党の提案だ。
彼らの改革案の最大の特徴は、企業団体献金の受け取りを「政党本部のみに限定する」こと。こうすれば、全国の支部を通じた不透明な献金の流れがなくなり、資金の流れがより明確になる。さらに、企業団体献金の責任の所在が党本部、すなわち党首や幹事長に集中することになる。
玉木雄一郎代表は「これが自民党が一番嫌がる改正案だ」と指摘している。確かに、自民党は企業献金の多くを各議員が実質管理する政党支部で受け取っているから、その仕組みが使えなくなることを最も恐れるだろう。
国民民主党案にも課題がある
とはいえ、国民民主党案にも検討すべき点がある。
第一に、政党本部に権限を集中させることで、党執行部の力が強まりすぎることだ。政党助成金制度の導入以降、党本部の財政権限が強まり、国会議員が「党のサラリーマン化」が進んだ。企業団体献金が党本部に一本化されれば、さらにトップダウンの政党運営が強化されるだろう。
第二に、不正が発覚した際の責任の所在が本当に明確にされるかどうかだ。安倍派裏金事件では、会計責任者の派閥事務局長に全責任を押し付け、派閥幹部は刑事責任が免れた。同様に、すべての責任を会計担当の党職員に押し付け、党首や幹事長が逃げ切る可能性も考えられる。
そこで、党首や幹事長が企業団体献金の最終責任者となり、違法行為があれば刑事責任を負う仕組みにする必要があろう。それがいやなら、企業団体献金を受け取らなければよいのだ。
税金と企業マネーの二重取り
そもそも企業団体献金は、政党助成金制度が導入された際に、廃止をめざすはずだった。例外的に政党が受け取ることだけが認められたのだ。
ところが実際は、各議員が実質管理する「政党支部」が自由に受け取り、政党に限って認めるという大方針は有名無実化している。受け取り手を「政党本部」に限定する国民民主党案は、十分に議論に値するだろう。
現在、日本には政党の活動を規定する「政党法」がなく、ルールは曖昧なまま。まずは政党法を制定して「政党とは何か」「政党の責任とは何か」を明確にすることも不可欠だ。
最終的には、企業団体献金を本当に全面禁止するのか、それとも一定のルールのもとで認めるのかという議論に行き着く。
先の3党の案はいずれも、企業団体献金を続けることを前提に、「どのようなやり方で続けるのか」と競い合っているだけだ。
企業団体献金を本当に「全面禁止」するのか。それができないのなら、政党助成金制度を見直すのか。いまは政党が国民の税金と企業団体マネーを「二重取り」しているのが現状だ。政治資金の「集め方」を抜本的に見直すことが必要である。