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石破vs森山「政権内戦争」勃発!? コメをめぐる対米交渉が引き金に 減税論争や政局の行方に影響も

表の総理・石破茂と、影の総理・森山裕。その両者がいま、激しく衝突している。火種は、トランプ米大統領との貿易交渉。その中で俎上に載せられたのが、日本の食卓に欠かせない「コメ」だ。

日本政府は、トランプ政権からの強い要請を受け、アメリカ産コメの輸入拡大を検討している。背景には、24%という高関税を回避するためのディール(取引)がある。石破政権にとって、トランプとの関係維持は死活的な課題だ。交渉の成否次第で、日本経済が打撃を受け、政権が吹き飛びかねない。

その交渉の切り札が「コメ」である以上、石破総理がこれを使わないという選択肢はない。実際、石破側近の赤沢大臣をふたたび訪米させる構想が進んでおり、輸入拡大の実現を急ぐ姿勢は鮮明だ。

しかし、これに強硬に反発しているのが、農水族のドン・森山幹事長だ。森山はもともと農水省と農協を鉄壁のように守ってきた大ベテラン。特に「主食用コメの市場解放」は絶対に譲れない一線であり、「ミニマムアクセス(最低輸入義務量)以上の輸入は断固拒否」と明言する。

石破にとって森山は、与野党のパイプ役として政権を支えるキーマンであり、財務省や公明党、中国との人脈も有する「影の総理」そのものだった。少数与党において、森山の存在なしに政権運営は成り立たない――それが石破政権の実態だった。

だが、ここにきて情勢は一変する。対トランプ交渉が「最優先」に格上げされたからだ。もはや、森山の顔色をうかがっている余裕はない。

一方、国内では米価の高騰が続いている。長年続いてきた減反政策が仇となり、コメは不足状態に陥っている。価格の上昇は、庶民の怒りを招いており、石破陣営の一部では「輸入拡大で米価が下がれば、無党派層を味方につけられる」との声も出ている。

つまり、アメリカと庶民、両方にアピールできるのが「コメ輸入拡大」なのだ。

ここで森山幹事長が反対を押し切られれば、政権内のパワーバランスが崩れる。これまで「石破は森山の言いなり」と見られてきたが、それが覆れば、「森山はもう怖くない」という空気が党内に広がる。政治の世界では、こうした“空気の変化”が決定的な意味を持つ。

その影響は、農政にとどまらない。たとえば、いま党内で静かにくすぶっている「消費税減税」論。これを抑え込んできたのも、財務省の後ろ盾をもつ森山幹事長だった。

だが、石破がコメで強行突破すれば、「森山が弱った」と見る議員が増え、減税論が再燃する可能性が高い。実際、石破自身も減税には前向きなフシがある。政権発足当初はフラフラしていたが、森山の反対が堅かったため、慎重姿勢を保っていたに過ぎない。

さらに森山は、立憲民主党の安住淳衆院予算委員長と水面下で「増税大連立」の構想を練っていたとされる。だが、森山が失脚すれば、このルートは断たれ、石破はむしろ、国民民主党と手を組んで減税を掲げるという“政界再編”に打って出る可能性さえある。

しかも、森山は今月末、日中友好議員連盟の会長として中国を訪問予定だ。対米交渉の大詰めというタイミングでの訪中に、与党内でも「トランプを刺激するのでは」と懸念の声が上がっている。もはや森山は、国内外ともに“足を引っ張る存在”と見なされ始めている。

政治とは、タイミングと空気の芸術だ。今、石破総理にとって、コメの輸入拡大に踏み切る政治的環境は整いつつある。もし彼がこの一手を断行すれば、農政だけでなく、消費税、野党との距離感、そして政権の行方まで、すべてが大きく動くことになる。

石破vs森山――これは単なる農政の綱引きではない。日本の政治地図を塗り替えるかもしれない「政権内戦争」なのだ。