自民党茂木派(平成研究会)も解散する方向となった。17日に緊急会合を開いて政治団体の届け出を取り下げることを決めると報道されている。
自民党の裏金事件を受けて岸田文雄首相が派閥解消を打ち上げた後、安倍派、岸田派、二階派、森山派が解散し、派閥として存続する意向を表明していたのは麻生派と茂木派だけになっていた。しかし、茂木派からは次世代のホープである小渕優子選対委員長に加え、関口昌一参院議員会長ら参院有力者が相次いで派閥を離脱。所属議員は53人から44人に減り、求心力が大幅に低下していた。さらに茂木敏充会長と微妙な関係にある加藤勝信元官房長官らは離脱のタイミングをうかがっていた。
解散総選挙がいつあるかわからないなかで、派閥所属のままでは選挙で批判を受けるという議員心理も、派閥解散の機運を後押しした。
もともと茂木氏は、参院のドンとして政界引退後も平成研究会に強い影響力を残していた故・青木幹雄元官房長官と確執があり、麻生太郎副総裁の後押しで幹事長に就任した勢いで派閥会長の座をかろうじて射止めた経緯がある。青木氏は小渕氏を寵愛し、参院有力者らに働きかけて茂木氏を揺さぶり続けていた。今回の派閥解消の動きに乗じて、茂木派を小渕派に切り替える狙いが参院中心にあるのも間違いない。
茂木氏は麻生氏に同調して派閥存続を決めていたが、足元がぐらつき、これ以上存続にこだわるとかえって派閥崩壊につながると判断したのだろう。
茂木氏は岸田首相と当選同期で、年は二つ上だ。今年9月の自民党総裁選が首相へのラストチャンスをみて、出馬の準備を着実に進めてきた。この結果、岸田首相とも亀裂が広がり、昨年秋の内閣改造・党役員人事では幹事長を更迭されそうになったが、麻生氏の猛反対で踏みとどまった経緯がある。
裏金事件後の派閥解消・政治改革のなかでも岸田首相との距離は開いた。岸田首相は茂木氏を露骨に遠ざけ、裏金調査も森山裕総務会長に委任。麻生氏と茂木氏と3人で頻繁に重ねてきた夕食会も行われなくなった。
だが、岸田内閣の支持率は上がらず、岸田首相は総裁選前の衆院解散を断行して再選の流れをつくる戦略を諦めつつある。解散しないまま党内を人事や裏金処分を通じて掌握し、総裁選を乗り切る戦略に転じたようだ。この結果、茂木氏との全面対決を当面は見送り、一時休戦のムードも漂っている。
茂木氏としては9月総裁選目前に加藤氏らが派閥離脱を表明して揺さぶられるよりは、いまのうちに派閥を整理して体制を立て直したほうが得策と考えたのだろう。とはいえ、派閥を失えば総裁選出馬への戦略も根本的に見直す必要がでてくる。
後ろ盾の麻生氏も派閥を失った茂木氏を総裁候補に担ぐかどうかはわからない。麻生離れを進める岸田首相を牽制するために上川陽子外相をポスト岸田に担ぐそぶりもみせるが、当面は、岸田再選支持か、茂木擁立か、上川擁立か、3者を天秤にかけて影響力維持を図る狙いだろう。
とはいえ、存続派閥が麻生派だけになれば、麻生派への風当たりも強まり、麻生氏の影響力低下を招くことも予想される。