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茂木幹事長が総裁選へ「意外と敏充」イメージアップ戦略を開始〜立憲民主党の失速(政権交代の機運低下)とバイデン大統領の失速(もしトラ)という「転がり込んできた好機」をいかせるか?

自民党の茂木敏充幹事長が9月の総裁選への出馬に意欲を燃やしている。麻生太郎副総裁の後ろ盾を得て勝ち抜く戦略を描くが、最大のネックはマスコミ世論調査で人気が低迷していることだ。

茂木氏は、トップを走る石破茂元幹事長に大きく遅れ、総裁候補のなかでは最下位を競っているのが現状。麻生氏の政敵である菅義偉前首相は石破氏擁立を検討しており、麻生・茂木連合が対抗するには、茂木氏の人気を引き上げることが絶対に必要だ。

岸田文雄首相は内閣支持率が低迷し、6月解散を断行できなかった。内閣支持率が回復する見込みはなく。8月中には総裁選不出馬に追い込まれるという見方が強まっている。

キングメーカーの麻生氏は岸田首相が出馬を断念した時点で、茂木氏擁立に動く可能性が高い。

茂木氏は自らの総裁選出馬について「夏の間によくいろいろ考えたい」と述べ、岸田首相の「不出馬表明」を待つ姿勢をにじませている。岸田首相が退陣を決意するまでは刺激しないように、茂木氏は出馬を明言することを控えるというシナリオを麻生氏と共有しているのだろう。

しかし、総裁選は「次の総選挙の顔」を選ぶ戦いとなり、国民不人気の茂木氏には不利だ。そこで、8月末までに茂木氏のイメージアップをはかることが絶対に必要となる。

茂木氏はこのところ、各地を巡って「意外に料理もできる」「意外に優しい」とアピールし、「意外と敏充」というキャッチコピーを打ち上げ始めた。親しみやすさを前面に出し、「上から目線」「パワハラ気質」という従来のイメージを払拭することに躍起だ。

茂木氏にとってもうひとつの追い風は、米国大統領選の状況である。

岸田首相と親しいバイデン大統領は高齢不安が強まり、トランプ前大統領にリードを許している。ニューヨークタイムズなどリベラルメディアは大統領選撤退を公然と主張し、民主党びいきのハリウッド俳優からも撤退を迫られた。民主党議員からも撤退を促す声が出始める始末だ。

バイデン氏はテレビ討論会でも精彩を欠き、外交舞台でウクライナのゼレンスキー大統領をロシアのプーチン大統領と言い間違える致命的なミスも飛び出した。さらにはハリス副大統領を「トランプ副大統領」と言い間違える失態もあり、いよいよ追い詰められつつある。

そのような状況で起きたトランプ氏の銃撃事件。銃弾は耳を貫通したものの、トランプ氏は演説会場で立ち上がり、右手を高く突き上げた。会場ではUSAコールがわきあがり、トランプ氏の勢いは加速しそうだ。

米大統領選の情勢は、バイデン政権に追従してきた岸田首相にとっては逆風だ。トランプ政権が誕生する可能性が高まるほど、これを機に日本の首相も「もしトラ」に対応して差し替えたほうがいいという空気が広がるだろう。

そこで急浮上するのが茂木氏である。トランプ政権時代、茂木氏は経済再生担当相や外相としてトランプ政権との経済貿易交渉にあたってきた。トランプ政権での評価は高く、「トランプ氏が日本の政治家で覚えているのは安倍晋三と茂木敏充だけだ」とも言われている。もしトラが強まるほど、茂木氏には有利といっていい。

国内では立憲民主党の失速、国外ではバイデン大統領の失速。このふたつの失速の好機を茂木氏がいかすことができるのか。まずは「意外と敏充」で人気アップに努めるつもりのようだが、はたして奏功するか。

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