マイナンバーカード活用を拡大させる改正マイナンバー法などの関連法が6月2日の参院本会議で可決・成立した。政府は2024年秋に健康保険証を廃止してマイナンバーカードに一本化し、年金受給口座とのひも付けなども推し進める方針で、国家による個人情報の管理が加速しそうだ。
マイナンバーカードをコンビニで使って住民票や戸籍謄本を申請した際に他人の書類が出てくるなど全国各地でトラブルが相次ぐなかで、改正マイナンバー法などの関連法があっさり成立したことには、現在の国会の機能不全を感じずにはいられない。
野党第一党の立憲民主党が法案そのものに反対しながら、国会での採決に徹底抗戦することなく、自民党が求める採決日程をあっさり受け入れた結果、国会審議に国民の関心が高まらないまま可決・成立されてしまったことは残念だ。
原発運転期間を60年超に延長する法案、防衛産業強化法案、防衛財源確保法案、入管法改正案…。今国会は本来なら与野党大激突になるはずの法案が目白押しだが、立憲は自民や維新にすり寄って賛成したり、反対しても徹底抗戦しなかったりする場面が目立つ。
泉健太代表の「批判ばかりの野党ではない」「提案型野党だ」という方針によるものなのだろう。その結果、重大な法案が淡々と成立しているのだから、政権与党にとってはこれほど楽なことはない。
マイナンバーをめぐっては、気になる報道が相次いでいる。そのひとつは、『”新マイナンバーガード2026年中に導入目指す”重点計画改訂案』(NHK)だ。
報道によると、政府は「2026年中にセキュリティーを高めた新しいカードの導入を目指す」「偽造防止など、今のカードよりもセキュリティーを高める」という。要するに今のカードの安全性は十分ではないと政府自ら認めているのである。
それなら健康保険証を廃止してマイナンバーカードへの一本化を急ぐ必要もないのに、政府はなぜそこまで焦るのか。政府は一向に認めようとしないが、やはり一刻も早く国民の資産や所得の把握を進めたいからだろう。
マイナンバーカードの普及を推進する急先鋒は、国民の資産や所得を把握して課税を強化することを目論む財務省である。立憲民主党が法案に反対しながらも徹底抗戦しなかったのは、立憲執行部を牛耳る岡田克也幹事長や安住淳国会対策委員長が財務省と極めて密接な関係にあるからだと私はみている。
国民の立場から改正マイナンバー法の成立阻止に全力をあげるのではなく、表向きは反対しつつ国会の審議日程では成立に協力するという二枚舌の国会対策こそ、立憲が低迷を続ける大きな要因の一つであろう。数々の問題法案がさしたる抵抗もなく続々と成立するのも同じ理由だ。
私は1999年から国会を取材してきたが、これほど対決姿勢を感じない野党第一党をみるのははじめてだ。この国の議会制民主主義は相当壊れており、国会が与党一色に染まる大政翼賛政治の足音が迫っている気がしてならない。