自民党の二階俊博元幹事長が2月17日に84歳になった。
東京・永田町の自民党本部に二階氏のために用意された「国土強靱化推進本部長室(通称・二階部屋)」には朝から誕生祝いの電話が鳴り止まず、プレゼントを持った面会者が次々に訪れた。政治家、官僚、財界人、デベロッパーや大手建設業者、旅行会社や運輸会社の役員ら50組以上の背広姿の男たちが並んでいた。この日、いち早く二階部屋を訪れたのは、菅義偉前首相だったーーとFRIDAYデジタルは伝えている。
二階氏は菅政権誕生の立役者だった。安倍政権に続いて菅政権でも幹事長として党運営を牛耳ったが、麻生太郎氏を後ろ盾にする岸田文雄氏が「菅降ろし」の号砲として「二階幹事長批判」を打ち上げたことを今も根に持っている。
岸田内閣の支持率が低迷するなか、二階氏は菅氏とタッグを組んで「岸田降ろし」の一斉攻撃を仕掛けるタイミングをうかがっているというのは衆目一致するところだ。
一方、現幹事長の茂木敏充氏の党内人気は低い。党職員のあいだでも、秘書上がりで気配りを欠かさない二階氏と比べ、エリート目線でパワハラ体質がにじむ茂木氏の評判はイマイチだ。党職員たちの忠誠心を獲得しているのは現幹事長よりも元幹事長であるといっていい。
茂木氏は後ろ盾の麻生副総裁とともに岸田総裁(首相)を支える党中枢である。茂木派、麻生派、岸田派が現主流派だ。
しかし茂木氏はポスト岸田への意欲を隠しておらず、岸田内閣の支持率が急落した昨年秋以降、岸田首相との確執が指摘されるようになった。茂木氏は岸田氏より年齢が二つ上。岸田内閣が長期化すると自らの首相の番が回って来なくなるという焦りがあるとも言われている。
二階派と菅氏を支持する無派閥グループ(小泉進次郎氏ら)は非主流派だ。最大派閥・清和会は安倍晋三元首相が急逝し、萩生田光一政調会長、西村康稔経産相、世耕弘成参院幹事長らが後継レースを繰り広げている。
茂木氏は主流3派の枠組みを維持するだけでは首相の座を確実にすることができず、清和会を分断して一部を引き込みたいところだ。萩生田氏は菅氏と気脈を通じていることから、萩生田氏のライバルである西村氏や世耕氏への接近をはかるだろう。
とくに世耕氏は二階氏と地元・和歌山で長年の政敵関係にあり、二階ー菅ー萩生田ラインと距離がある。茂木氏は衆参の幹事長という立場を利用して世耕氏との連携を強めて対抗することをめざすだろう。
二階氏と茂木氏。元幹事長と現幹事長の「新旧対決」という視点で「岸田降ろし」の政局を眺めるとわかりやすい。
とくに幹事長の最大の役割は選挙を仕切ることである。今春の統一地方選をめぐり、二階氏と茂木氏がどう立ち回っているかを分析すると、二人の本音が浮かんでくる。
今春の統一地方選では9つの知事選がある。岸田降ろしや清和会後継レースによる自民党内の権力闘争の激化を受けて、各地で保守分裂が相次いでいる。このうち奈良、徳島、大阪の知事選では二階氏と茂木氏の利害が真っ向からぶつかると私はみている。
二階vs茂木の視点で統一地方選を分析したのが以下の動画である。ぜひご覧ください。