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立憲民主党の野田代表の本音は「政権交代」ではなかった──見えてきた“増税大連立”の全貌

立憲民主党の野田佳彦代表が掲げてきた「政権交代」の旗印が、いよいよ虚構であったことが明らかになりつつある。「次の総選挙で政権交代を実現できなければ辞任する」とまで語り、マスコミにもそう報じたが、実際に彼が進めているのは、政権交代などではない。むしろその逆。参院選後の「増税大連立」に向けた着々とした布石であり、その延長線上に「自分が総理に返り咲く」という野望が透けて見えてきた。

■内閣不信任案を提出する気など最初からなかった

そもそも少数与党である石破政権に対し、野党第一党である立憲が内閣不信任案を提出すれば、そのまま衆院解散・総選挙へ突入する可能性が極めて高い。石破総理は不信任案が出れば採決せずに解散する方針を幹部に伝えていた。にもかかわらず、野田代表は内閣不信任案の提出を見送る方針を固めている。

それもそのはずだ。すでに野田代表は、森山自民党幹事長との間で「年金改革法案を修正して与党と合意する代わりに、不信任案を提出しない」という密約を交わしている。これが“増税大連立”への第一歩だった。

マスコミ各社がようやく「不信任案を提出しない方針」と報じ始めたが、そんなものはとうの昔に決まっていた話だ。それどころか野田代表本人が「根拠のない記事で怒りを覚える」と反発して見せたのも、単なるパフォーマンスである。

野田代表にとって、衆参ダブル選挙など本気で挑む気はなかった。小泉進次郎農水相の登場によって自民党の支持率が回復基調にあり、野党は低迷。しかも、野田代表自らが年金改革で与党と合意し、野党共闘は完全に崩壊していた。この状態で衆院選を戦えるわけがない。

■「政権交代、やるやる詐欺」

しかし、それ以上に大きな欺瞞がある。野田代表はこの状況下でも「政権交代を目指す」と公言してきた。6月9日の外国特派員協会での会見でも「次の総選挙で政権交代を実現できなければ、当然代表を辞める」とまで語った。

だが、その舌の根も乾かぬうちに「ホップ・ステップ・ジャンプで政権交代を目指す。今年夏の参院選はステップだ」と続ける。内閣不信任案を提出すれば“ジャンプ”の総選挙がすぐそこまで来るのに、「ジャンプはまだ先」と言うのである。これでは不信任案提出の意思がないと自白しているに等しい。

さらに重大なのは、野田代表が次の衆院選で「野党連立政権」を作る意思など微塵もないことだ。本音では参院選後、他の野党を見捨てて自公与党と大連立を組み、その中で自分が総理候補に担がれる──これこそが本当の狙いだ。

「次の総選挙で政権交代できなければ辞任」と言っても、次の総選挙がしばらくないと計算しているからこそ言えるセリフだ。参院選後に大連立が組まれれば、3年間は国政選挙が行われない。その間に消費税増税に取り組み、自らの存在感を示して総理の座を狙う。この青写真が野田代表の頭の中には、はっきりと描かれている。

■昨年の総選挙から始まっていた「やるやる詐欺」

実はこの“やるやる詐欺”は、昨年の総選挙から始まっていた。

野田代表はあの時も「自公を過半数割れに追い込んで野党連立政権をつくる」と訴えていたが、実際には他の野党との共通公約づくりも、選挙区調整もほとんど進めなかった。

むしろ、他の野党が先に候補者を立てた選挙区に後から立憲の候補をぶつけ、野党共闘を妨害する行為を繰り返してきた。その結果、与党が過半数を割っても、野党連立政権樹立の機運は生まれず、石破少数与党政権が成立した。

その後も野田代表は自民党にすり寄り、年金改革の修正合意を主導。他の野党を振り切って与党とともに採決を強行するという姿勢が一貫している。

■参院選も“出来レース”

参院選もまた、出来レースの色彩を帯びてきた。野田代表が不信任案を提出しないための口実作りに、石破総理や森山幹事長は全面協力している。

G7サミットに合わせた日米首脳会談で関税交渉が合意に達するという観測もあったが、石破総理は「国益を犠牲にするわけにはいかない」として合意を参院選後に先送りした。これによって野田代表は「トランプ国難の最中に衆参ダブル選挙などできない」と言い訳ができる。

むしろ、この“難航する交渉”自体が、参院選後の大連立結成の口実になる可能性が高い。森山幹事長もテレビ番組で「年金・増税・大連立」への意欲を隠さなくなってきた。

すべてが予定調和だ。参院選は「自民対立憲」の構図に見せかけられているが、実態は自民と立憲の“合作”選挙であり、最大の争点は「この大連立を許すのかどうか」なのだ。

国民に対して「政権交代」を訴えながら、その裏で増税大連立を準備する──これが野田代表の正体だ。もはや「政権交代、やるやる詐欺」と断じざるを得ない。