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小川淳也幹事長の”玉木擁立論”は本気か?その真意を読み解く〜立憲ついに”玉木首相”容認!? 麻生太郎も玉木をスカウト!? 国民民主争奪戦が激化

立憲民主党の小川淳也幹事長が、国民民主党の玉木雄一郎代表を首相候補として擁立する可能性に言及したことが話題となっている。これは単なるリップサービスなのか、それとも政権交代に向けた本気の布石なのか。小川幹事長の発言の真意を探りながら、野党勢力の現状と今後の展望を考察する。

立憲民主党の厳しい現状

立憲民主党は、野党第一党として政権交代を目指す立場にある。しかし、政党支持率では野党第三党である国民民主党に大きく引き離され、存在感が低下している。さらに、野党第二党の日本維新の会は政府予算案に賛成するなど、「ゆ党」として独自の立場を確立しつつある。

野党勢力は分裂しており、自公政権が長期化する大きな要因となっている。

首相候補としても、立憲民主党の野田佳彦代表よりも、国民民主党の玉木代表のほうが国民の期待を集めている。こうした中で、小川幹事長がテレビ番組で次のような発言をした。

  • 内閣不信任決議案について:「出して否決されました、では済まない」とし、「解散総選挙、あるいは総辞職・首相指名選挙で、どういう見通しを持つかまで組み立てた上で出したい」
  • 内閣総辞職後の首相指名選挙について:「与野党第一党の党首が最も有力な首相指名候補」としつつ、玉木代表を担ぐ野党連立政権についても「あらゆる可能性を排除するわけにはいかない」

この発言の背景には何があるのだろうか。

野党は「玉木首相」でまとまれるのか?

立憲民主党が本当に玉木代表を担ぐことができるのか、その可能性は低いと考えられる。その理由は以下の通りだ。

  1. 野田佳彦代表のプライドが許さない
    野田氏は首相経験者であり、かつて民主党に所属していた玉木氏を「格下」と見ている。その玉木氏に首相候補の座を譲ることは、野田氏のプライドが許さないだろう。
  2. 小川幹事長に党内基盤がない
    小川氏は党内の人脈が乏しく、野田代表は党運営の実権を最側近である大串博志・代表代行兼選挙対策委員長に委ねている。小川幹事長の提案が党内で実現する可能性は低い。
  3. 他の野党が玉木氏でまとまれるのか?
    首相指名選挙で過半数(233議席)を確保する必要があるが、立憲民主党(148議席)、維新(38議席)、国民民主党(28議席)、有志の会(4議席)を合わせても218議席にしかならない。さらに、維新の前原誠司共同代表は国民民主党代表選で玉木氏に敗れて離党し、維新に合流した経緯があり、関係は険悪だ。共産党やれいわ新選組も、国民民主党の政策と相容れない点が多く、野党が玉木氏で一本化するのは困難だ。

立憲民主党の本命は「増税大連立」

実は、立憲民主党の本命は「野党連立」ではなく、「自民党との大連立」である可能性が高い。7月の参院選で自民党が議席を減らし、立憲民主党が議席を増やせば、石破茂首相は退陣に追い込まれ、いまの主流派から増税派である林芳正官房長官が後継総裁に有力候補となる。そのもとで立憲民主党との大連立が模索されるかもしれない。こうなれば、野田佳彦氏が総理に返り咲くシナリオも考えられる。

立憲民主党の野田代表や小川幹事長は増税派であり、減税を掲げる玉木代表とは政策的に相容れない。むしろ、自民党の増税派と組むほうが、彼らにとっては自然な選択肢となるのだ。

むしろ「玉木首相」を担ぐのは自民党?

「玉木首相」誕生の可能性があるとすれば、それを担ぐのは野党ではなく、自民党の反主流派だろう。

石破首相は国民民主党と組む気はなく、予算案の修正協議でも維新の高校無償化案を採用し、玉木代表の減税案を拒否した。一方で、麻生太郎元総理や茂木敏充前幹事長らは、国民民主党にシンパシーを抱いている。

彼らは石破首相を参院選前に退陣に追い込む「石破おろし」を仕掛ける狙いだ。しかし、有力候補は不足している。高市早苗氏は保守色が強すぎて少数与党国会で野党の協力を得るのが難しい。小林鷹之氏は経験不足、茂木氏は国民的人気がなく、参院選の顔になりにくい。そこで、人気急上昇中の玉木代表を首相に担ぎ、自公国連立政権を作って、減税政策を公約に掲げて参院選を乗り切るシナリオが浮上する。

この場合、自民党は総裁選で新総裁を選ぶものの、その後の首相指名選挙では新総裁ではなく、玉木代表に票を投じることになる。

小川幹事長の「玉木擁立論」は、表面的には野党連立政権を模索しているように見える。しかし、実際には「内閣不信任案を提出しないための口実」の意味合いが強い。立憲民主党の本命は「野党連立政権」ではなく「自民党との大連立」にある。

むしろ玉木首相が誕生するとすれば、それは自民党の反主流派による「石破おろし」の延長線上で実現する可能性のほうが高い。

今後の政局の行方を占う上で、玉木代表の動向から目が離せない。