大阪府知事選・大阪市長選のダブル選挙が始まった。維新を旗揚げから引っ張ってきた松井一郎市長が引退して新顔の後継候補を擁立。吉村洋文知事とあわせて維新が「知事と市長」の座を守り抜くかどうかが焦点だ。投票日は4月9日。維新がどちらか一方でも失えば大きく失速する可能性があり、国政の行方にも影響を与える選挙となる。
おとなりの奈良県知事選も始まった。国会での「捏造」発言で揺れる高市早苗氏が総務相時代に秘書官を務めた元総務官僚、二階俊博元幹事長らが推す現職知事、そして維新が擁立した新顔の激しい戦いが予想されている。情勢調査では「自民の仲間割れで維新が漁夫の利か?」との分析もある。維新が勝利すれば本拠地・大阪から勢力を拡大する足がかりとして注目されるだろう。
大阪と奈良。どちらも維新の党勢の行方を左右する重大な選挙といっていい。
私は講演活動で大阪を訪れた3月19日、吉村知事が奈良県知事選に出馬する新顔候補を応援するため、終日、奈良県入りすることを知った。午前の吉野に始まり、法隆寺、大和郡山、奈良と転戦する日程だ。私が時間的に訪れることができるのは大和郡山市と奈良市だった。
奈良市は何度も訪れたことはあるが、大和郡山市には行ったことがない。しかもこの地は時の人・高市氏の選挙地盤(衆院奈良2区)である。
私は大阪・鶴橋に立ち寄って石焼ビビンバでお腹を満たし、近鉄奈良線に飛び乗った。安倍晋三元首相が銃撃された大和西大寺駅で近鉄橿原線に乗り換え、近鉄郡山駅へ。駅前では緑のジャンパーをまとった維新のスタッフが吉村知事の来県を告げながらビラを配っていた。
街頭演説が始まるまで、駅周辺の商店街を散策したが、高市氏のポスターを見つけることはできなかった(翌日、兵庫県明石市に泉房穂市長を訪ねたが、地元選出(衆院兵庫9区)の西村康稔経産相のポスターがあちこちに貼られていたのと対照的だった)。高市氏は安倍支持層に熱烈に支持されているものの、選挙地盤は決して磐石とはいえないのだ。
維新の街頭演説が行われる駅近くのスーパーには人が集まり始めていた。高齢者の姿が目立つ。今春の大和郡山市議選に挑戦する維新の候補予定者らが前座を務め、「郡山は人口が大きく減っている、若者が地元から出ていく」と訴えていた。聴衆は少しずつ増え、吉村知事の到着を待っていた。
私は吉村知事の街頭演説をじっくり聞いたことがなかった。「若者に人気」という印象をなんとなく抱いていた。だが、この日の街頭演説でその印象は一変した。彼は街宣車に上ったものの、集まったお年寄りたちに実に親しみやすく話しかけるように演説した。お年寄りたちは孫を見るように吉村知事を眺めていた。
吉村知事の街頭演説の特徴を分析すると、以下の5点となる。「若者や現役世代を代弁する党」というイメージとはかけ離れているというのが私の印象だ。
①若者よりお年寄り! 聴衆の高齢者たちを徹底して持ち上げたうえで少子化対策訴える。
②身を切る改革! なかでも「退職金返上」を切り札に。
③緊縮財政(財政再建路線)を強調!
④アンチ官僚を強調! 奈良県知事は中央省庁出身者がずっと続いていることをアピール。
⑤大阪で「やってみせた」実績を強調!
ユーチューブでは吉村知事が大和郡山で行った演説の動画をもとに、この①~⑤を詳しく解説した。さらにこの翌日に明石市を訪れ、政治家引退を表明した泉房穂市長が旗揚げした地域政党「明石市民の会」の戦いを取材してきた。ユーチューブではそれも紹介している。ぜひご覧ください。