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小沢一郎の存在感高まる!9月の立憲民主党代表選へ最後の戦い〜「泉おろし」の狼煙をあげ、後継代表は「野田佳彦、枝野幸男、馬淵澄夫、小川淳也、重徳和徳、江田憲司の6人から選ぶ以外にない」

立憲民主党の小沢一郎氏が9月の代表選にむけて「最後の戦い」に動いている。泉健太代表の退陣を公然と求め、民主党政権以降は宿敵だった野田佳彦元首相や枝野幸男前代表と相次いで会談。にわかに存在感を増してきた。

立憲民主党代表選は、自民党代表選に先行して9月16日投開票の日程が想定されている。小沢グループは8月6日の会合で、代表選対応を小沢氏に一任。小沢氏は「盆明けに方向性を決める」「いい候補者をつくる努力をしたい」と述べた。

小沢氏は泉代表について「野党との協力態勢がうまくいっていない。野党をまとめきれる代表、幹事長でなきゃダメだ」と批判。自らが担ぐ代表候補としては、このところ野田佳彦元首相、枝野幸男前代表、馬淵澄夫元国交相、小川淳也前政調会長、重徳和徳衆院議員、江田憲司衆院議員と相次いで会談したことを踏まえ、「この中から選ぶ以外にないと語った。

野田氏と枝野氏は民主党政権の内紛で激しく戦った。江田氏は、自民党竹下派7奉行としてしのぎを削った橋本龍太郎氏が首相に就任した時の秘書官。小沢氏は新進党を結成し、橋本氏が率いる自民党に1996年総選挙で敗れた経緯もある。かつての政敵さえ担いででも泉代表を引きずりおろす強い姿勢を示したといえる。

かつて自民党の剛腕幹事長として名をはせた小沢氏。1990年代には自民党を離党して非自民連立政権の誕生を主導し、新進党を結成して二大政党制を推し進める政治改革を牽引。2000年代には民主党に合流して選挙体制を強化し、政権交代の立役者となった。

しかし民主党政権では、菅直人、野田佳彦、岡田克也、枝野幸男、安住淳ら反小沢グループとの党内闘争に敗れて離党。紆余曲折を経て立憲民主党に加わったものの、政治的影響力は大きく低下した。

前回総選挙(2021年)では、衆院岩手3区で自民党の藤原崇氏に敗れた(小沢氏は比例復活)。22年の参院選岩手選挙区では、自民党が擁立した弁護士の広瀬めぐみ氏が立憲候補を倒して30年ぶりに自民が議席を取った。「選挙のオザワ」と恐れられたかつての威光はすっかりかげり、発言力はいっそう低下していた。

小沢氏は、総選挙の敗北責任を取って辞任を表明した枝野氏の後継を決める代表選では泉氏支持に回ったが、その後の人事で外され、泉体制のもとでも非主流派に甘んじてきた。

すでに82歳。真っ先に泉おろしに動いたのは、自らを冷遇してきた泉氏への遺恨との見方もある。今回の代表選では主導権を握り、幹事長として復権する狙いも透けて見える。

小沢氏はすっかり「過去の人」になっていたが、今年に入って運気が巡ってきた。衆院岩手3区で打ち負かされた自民党の藤原氏が党青年局長として党和歌山県連主催の過激ダンスショーに出席していたスキャンダルが発覚し、青年局長を辞任。参院岩手選挙区で当選した広瀬氏は党女性局のパリ漫遊旅行でグルメを楽しむ写真をSNSに投稿して炎上した。さらにカナダ人男性との不倫を週刊誌に報じられて謝罪。そのうえ東京地検特捜部に秘書給与詐取の疑いで強制捜査された。

自民党岩手県連は大打撃を受け、次の総選挙では小沢氏が岩手3区で当選するのは間違いないと言われている。

立憲民主党内では、自民党の裏金事件後も泉代表の人気は高まらず、東京都知事選で蓮舫氏が惨敗したことで泉執行部の求心力は低下。自民党批判は高まっても立憲への期待感が高まらない状況に、党内では閉塞感が広がっていた。小沢氏にとって最大の政敵であった菅直人氏は次の総選挙に出馬しない意向を表明。小沢氏が政局を仕掛ける環境が整った。

小沢氏は泉代表について「何もしてこなかった」「このままでは沈没する」と露骨に退陣論をぶち上げ、その一方で代表選出馬論が出ている野田氏や枝野氏と個別に会談。泉体制の継続では政権交代は困難であるとの認識を共有し、泉包囲網をつくりあげたのである。小沢氏は「政権交代が実現するなら、代表は誰でもいい」と周辺に語っており、かつての政敵である野田氏や枝野氏とも手を握り、新体制で復権を目指すのではないかとの見方が党内で広がっている。

泉代表は続投に意欲を示している。小沢氏が誰を対抗馬に擁立するのかをめぐって野田氏や枝野氏と一致できるかどうかはわからない。だが、決選投票を見据えて泉おろしを最優先し、最終的には勝ち馬にのって執行部入りを果たすことで、党内の主導権回復を狙っているのだろう。

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