政治を斬る!

政党は誰のカネで動いているのか―政治資金収支報告書が映す「税金依存政治」の現実

各党の政治資金収支報告書が出そろった。ページをめくって、まず浮かび上がるのはきわめてシンプルな事実だ。与党も野党も、その多くが政党交付金、つまり私たちの税金に大きく依存している。

政党の内輪の問題ではない。党員でも支持者でもない有権者が、遠慮する必要はまったくない。政党は税金で成り立っている以上、主権者として、納税者として、口を出す資格がある。まずは各党の「お財布の中身」を冷静にのぞいていこう。

自民党――企業献金政党から「税金政党」へ

収入総額トップは自民党で221億円。そのうち政党交付金は156億円に達し、収入の7割を占める。かつて企業献金の象徴とされ、企業団体献金の廃止を頑として拒んできた政党とは思えない数字だ。

実態はどうか。企業献金は22億円、全体の1割にすぎない。全国に約100万人の党員を抱えながら、党費収入は9億円弱で、献金収入よりも少ない。数字が示すのは、もはや自民党が企業よりも国民の税金に支えられた政党になっているという現実だ。

政党交付金がなくなれば、たちまち党の運営は立ち行かなくなる。これは自民党に限らず、多くの政党に共通している。ただし、自民党は圧倒的議席数を背景に、税金の受け入れも最大になった。

政党交付金は議席数や得票数に応じて配分される。選挙に勝てば収入が増え、負ければ減る。選挙は政策実現だけでなく、政党経営そのものを左右する「死活問題」だ。人気取り政策に傾く誘因が、制度的に組み込まれている。

ポピュリズムは新興政党の専売特許ではない。収入構造を見る限り、実は最も人気取りに走らざるを得ないのは、自民党なのかもしれない。

共産党と公明党――組織政党の明暗

政党交付金を一切受け取っていない唯一の政党が共産党だ。依存率はゼロ。それでも収入総額は185億円と自民党に次ぐ規模で、その81%は機関紙「しんぶん赤旗」の購読料を中心とした事業収入だ。

ただし、その基盤は揺らいでいる。購読者数は10年余りで130万人から85万人へと激減。党員も32万人から25万人に減少した。スクープを連発しても、支持層の高齢化と縮小は止まらない。

それでも党内に政党交付金を受け取ろうとする動きは広がっていない。方針転換の機会と見られた世代交代も、結果的に見送られた。理念というより「意地」に近い痩せ我慢が、どこまで続くのか。政党存亡をかけた踏ん張りになる。

一方、公明党も典型的な組織政党だ。収入総額101億円のうち、機関紙などの事業収入が57%を占め、政党交付金依存は相対的に小さい。だが、支持層の高齢化という課題は共通している。連立解消によって議席を大きく減らせば、財政面でも厳しい局面に入るだろう。

立憲・国民・維新――税金依存の三つ巴

政党交付金への依存度が最も高かったのは国民民主党で、82%に達した。連合依存とよく言われるが、収入面で見れば最大の依存先は私たちの税金だ。「手取りを増やす」というキャッチーな減税路線は、理念だけでなく、選挙に勝たなければ党が立ち行かなくなる収入構造と整合的である。

維新も依存度は78%。身を切る改革を掲げながら、政党交付金の削減を打ち出せない理由は明快だ。比例定数削減は、理念だけでなく、党の収入確保という観点からも合理的な戦略になる。

野党第一党の立憲民主党も依存度は77%。献金や党費は乏しく、借入金でしのいできた。選挙で議席を減らせば、一気に党運営が危機に陥る「税金頼み」の構造だ。

三党に共通するのは、敗北が即、存亡に直結するという現実である。

参政党とれいわ――草の根と制度依存の分岐点

参政党は収入総額10億円。政党交付金は23%にとどまり、党費や個人寄付、イベント収入が中心だ。数字から見れば、典型的な草の根政党である。

ただし、議席拡大に伴い、今後は政党交付金の比重が高まるのは避けられない。税金依存を強めながらも、草の根性を維持できるかが正念場だ。

れいわ新選組も収入規模は同程度だが、政党交付金依存は70%に達した。立ち上げ当初の寄付 중심モデルから、他党と同じ構造へ移行した結果、勢いに陰りが見え始めた。参政党が同じ道を辿るのか、それとも踏みとどまるのか。れいわの経験は重要な教訓となる。

日本保守党は党費が収入の75%を占め、熱狂的支持層に支えられている。対照的に社民党は政党交付金依存が58%。政党要件を失えば、即解党に追い込まれかねない。

税金で成り立つ政党に、私たちは何を言うべきか

政党の収入構造を見れば、「政治は誰のためにあるのか」という問いが、制度の奥底から浮かび上がる。与党であれ野党であれ、いまや多くの政党は、私たちの税金なしには存続できない。

だからこそ、有権者は遠慮なく意見を述べていい。スキャンダルだけではない。外交も経済も党運営も、「税金で動く以上、説明せよ」と求める正当な権利がある。

政党交付金は民主主義のコストだ。その使われ方を監視する責任も、また民主主義の一部なのである。