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山本太郎、突然の退場ではじまるれいわの後継レース〜鍵を握る比例近畿

総選挙を目前にして、れいわ新選組を率いる山本太郎が、突如として表舞台から姿を消した。
病気療養を理由に参議院議員を辞職。代表の座にはとどまるものの、政治活動は無期限で休止するという。血液のがんの一歩手前にあることを明かし、「自分の命を守る行動に入る」と語った。

消費税廃止を掲げ、日本政治に強烈な揺さぶりをかけてきたカリスマの突然の退場。その衝撃は、れいわ新選組にとどまらない。参政党、中道改革連合、さらには高市政権の積極財政路線にも波及しかねない。
鍵を握るのは、今回の解散総選挙、とりわけ比例・近畿ブロックの行方だ。

カリスマの功績と限界

山本太郎は、原発反対を訴えて芸能界で干され、俳優から政治の世界に飛び込んだ。2019年の参院選では、ひとりで「れいわ新選組」を立ち上げ、「消費税廃止」を掲げて比例個人名で99万票を獲得する大旋風を巻き起こした。一方で、重度障害者2人を比例名簿上位に置き、自身は落選するという前代未聞の戦略をとった。

以来、れいわは自民とも立憲とも距離を保ち、独自路線を貫いてきた。その結果、高市政権が「積極財政」を掲げ、各党が消費税減税を公約に掲げる流れを生んだ功績は大きい。
ただし、山本太郎は党運営を得意としていたわけではない。党勢拡大とともに内部対立が続き、その調整に追われ、心身ともに疲弊していった。

負担軽減のため、山本は大石あきこ、櫛渕まりの2人を共同代表に据えた。なかでも前面に立つのが、労働運動出身で過激な言動が目立つ大石あきこだ。

「左」に傾くれいわと参政党の台頭

大石が前面に出ることで、れいわは外交や人権問題への発信を強め、「左の政党」というイメージが色濃くなった。しかし、れいわが支持を広げた理由は、左右のイデオロギー対立ではない。庶民の立場から上級国民と対峙する「上下対決」だった。

その「下の主役」の座を奪いつつあるのが参政党だ。日本人ファーストを掲げ、文化や安全保障では右寄りだが、経済政策では反グローバリズムを掲げ、上級国民と戦う姿勢を鮮明にした。
昨年の参院選で参政党が躍進する一方、れいわは伸び悩み、支持率も低迷。戦略転換を迫られていた矢先に、山本太郎は退場した。

大石体制の光と影

今後の党運営を握るのは大石あきこだろう。過激な発信の裏で、行政経験に裏打ちされた事務処理能力を持つ。これは山本太郎に欠けていた部分だ。

大石体制のプラスは、立憲と公明が結成した「中道改革連合」に失望した左派層を取り込める可能性だ。安保法制合憲、原発再稼働容認という条件を立憲議員の大半が受け入れたことで、コア支持層の失望は大きい。共産党に抵抗を感じる層が、れいわへ流れる余地はある。

一方で、左に寄りすぎれば、無党派や庶民層を参政党に奪われる。れいわが得られるのは限定的な比例議席で、爆発的な伸びは望めない。共産党や社民党と同じ道をたどるリスクもある。

近畿ブロックに集まる後継争い

比例近畿ブロックでは、れいわの次世代を担う3人の女性が激突する。
大阪5区の大石あきこ、大阪13区の八幡あい、兵庫8区の長谷川ういこだ。

大石は二度続けて小選挙区で敗れ、比例復活で国会に来た。八幡は芸能界出身で庶民代表を前面に出し、山本太郎の後継を狙う。長谷川は経済政策を武器に積極財政を訴える。

3人とも当選は容易ではなく、比例の惜敗率競争になる。近畿での議席は、前々回1、前回2。支持率低迷を考えれば、再び1に減る可能性もある。

山本退場の意味

大石が勝てば、れいわは左派色を強める。八幡が勝てば、庶民路線を前面に出し、参政党との競合が激化する。長谷川が勝てば、積極財政を軸に中道との対立が深まる。

山本太郎の突然の退場。
比例近畿で誰が勝ち上がるのか。それは、れいわの進路だけでなく、参政党や中道改革連合、ひいては日本の政界地図そのものを塗り替える可能性を秘めている。