政治を斬る!

味方がいちばんの敵になる――国民民主・玉木代表と連合・芳野会長の読み合い

政治の世界では、最大の敵が必ずしも「相手陣営」とは限らない。むしろ厄介なのは、長年支えてきたはずの“味方”が足を引っ張る局面だ。いま国民民主党が直面しているのは、まさにその構図である。

国民民主党の玉木雄一郎代表は、少数与党となった高市政権との距離を一気に縮め、事実上の閣外協力へと踏み込んだ。補正予算への賛成、「年収の壁」引き上げでの合意、新年度予算への協力姿勢。もはや野党というより、連立入りへの助走と見てよい動きが続いている。

その玉木代表に「待った」をかけたのが、最大の支持団体である連合の芳野友子会長だった。立憲民主党と歩調を合わせ、野党として政権と対峙せよ――。新年の記者会見でのこの発言は、玉木代表にとって強烈な牽制だった。

しかし、ここに国民民主党のジレンマがある。国民民主は直近の選挙で、若者や現役世代、無党派層の支持を一気に広げて躍進した。彼らの多くにとって、支持率が低迷する立憲民主党との選挙協力は、魅力的には映らない。連合を取るのか、若者を取るのか。玉木代表は、究極の選択を迫られている。


芳野友子という人物を理解するには、連合会長に至るまでの経緯を押さえる必要がある。18歳でミシンメーカーJUKIに就職し、労働組合活動に身を投じた。45歳で労組委員長に就任し、女性登用の流れに乗って連合副会長へ。そして2021年10月、女性初の連合会長に就任した。

本来、有力だったのはトヨタ労組出身の相原氏だった。しかしトヨタが「政治離れ」を強める中で、労組も政治の前面に立つことを避けた。立憲民主党が共産党との共闘を進めていたことも、大企業系労組の反発を招いた。「対決より解決」を掲げる国民民主党へと流れが傾く中で、芳野氏が会長に選ばれたのである。

会長就任当初、芳野氏は立憲民主党に厳しかった。共産党との連携を強く批判し、総選挙敗北の責任を立憲に帰した。その後は自民党に接近し、麻生太郎副総裁と親密な関係を築いていく。

だが、2024年を境に状況は一変する。麻生氏の失脚、少数与党国会の出現、立憲民主党の立て直し、国民民主党の躍進と与党との決裂。これらが重なり、芳野氏は再び「立憲と国民をまとめる」立場へと回帰した。


そして現在。国民民主党は高市政権を支え、連立入りを視野に入れる。一方、立憲民主党の野田代表は、政権への対決姿勢を強め、公明党との連携を模索している。連合にとって最悪なのは、立憲が野党、国民が与党側に分かれることだ。組織内が真っ二つに割れるからである。

芳野会長が「国民民主の連立入りは認めない」と発言した背景には、連合という組織を守る切実な事情がある。会長就任から5年、3期目に入った芳野氏にとって、最優先課題はもはや政治的理想ではなく、組織の維持なのだ。

加えて、公明党の連立離脱も見逃せない。連合と公明は政策的に近く、東京都政では小池百合子知事を支える共通基盤もある。立憲・国民・公明を束ねた「非自民・反共産」の中道政権構想。1990年代の新進党を思わせる発想が、ここに重なっている。


だが、国民民主党はすでに連合から自立しつつある。衆参合わせて52人にまで増えた国会議員の多くは、組織内候補ではない。比例票でも、労組候補の得票は全体の1割未満にすぎない。党の収入の8割以上は政党交付金で、資金面でも連合依存は薄れている。

次の総選挙で、玉木代表は野党として戦い、議席を最大化する。そのうえで、選挙後に連立入りする――。このシナリオが現実味を帯びている。連合に従えば勢いは止まり、連合を振り切れば組織は割れる。

味方が、最大の敵になる。
この読み合いの結末次第では、国民民主党だけでなく、連合そのものが歴史的転換点を迎えることになるかもしれない。