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立憲→維新「野党第一党を巡る攻防」の勝負は決した!遅きに失した「泉健太降ろし」で立憲の解党が始まる

立憲民主党の泉健太代表ら執行部への風当たりが強まっている。

立憲の支持率は低迷を続け、4月の衆参5補選では1勝もできなかった。一方、日本維新の会は統一地方選で躍進し、衆院和歌山1区補選で自民党に勝利。次の衆院選で「野党第一党を奪う」ことを目標に掲げ、勢いづく。

このままでは立憲は「次の衆院選で惨敗→野党第一党から陥落→分裂・解党」と転げ落ちる可能性が高い。昨夏の参院選惨敗後は危機感の薄かった立憲議員たちからも、ようやく「泉降ろし」の動きが出始めた。

自民党内で浮上している早期解散論が立憲議員たちの不安を煽り立て、「泉降ろし」を後押ししている構図だ。

泉代表は参院選惨敗後も引責辞任のそぶりをみせず、岡田克也幹事長や安住淳国対委員長らベテランを執行部に取り込んで、彼らの言いなりになることで代表の座に踏みとどまった。さらには政権交代は次の次の衆院選の課題であり、次の衆院選では難しいとの考えを明言し、次の衆院選に敗れてもなお代表に居座る姿勢をにじませていた。衆院選の前から政権交代を断念している野党第一党の党首ほど、有権者を馬鹿にするものはない。

それでも立憲議員たちの動きは鈍かった。早期解散論が浮上し、維新の躍進が顕著になり、自分たちの落選の危機が現実味を増してきて、慌てて「泉降ろし」に動き出す姿は、限りなくみっともない。

そもそも立憲は「野党第一党に身を置いて議席を維持することを狙う国会議員たち」の寄り合い世帯である。

現在の選挙制度は、政党公認で出馬しなければ圧倒的に不利だ。政見放送に出られず、ポスター枚数などにも制限がある。選挙区で落選しても比例代表に重複立候補して復活当選する「保険」もなく、政党助成金の恩恵も受けられない。

しかも与野党一騎打ちの衆院小選挙区では「野党第一党の公認候補」というだけで自公政権批判票の受け皿となり、実力以上に高い下駄を履かせてもらえる。他の野党(共産、国民、れいわなど)の公認候補や無所属候補として出馬しても、自公政権批判票は野党第一党の候補に集約されていくため、二大政党に分け入って勝利するハードルは極めて高い。「野党第一党に身を置くこと」こそ、立憲議員たちが自らの地位を守る最善手なのだ。

彼らが本性をさらけ出す「政局」が2017年にあった。当時の野党第一党・民進党を率いる前原誠司代表は支持率低迷に苦しみ、このままでは衆院選惨敗は免れないと判断。小池百合子・東京都知事が旗揚げした希望の党に合流を決めたのである。野党第一党が事実上、民進党から希望の党へ入れ替わった瞬間だった。

ところが、希望の党は小池百合子氏が民進党リベラル派の枝野幸男氏らは「排除」したことで失速。衆院選では枝野氏が追い込まれて旗揚げした立憲民主党が予想に反して希望の党を上回る議席を獲得し、野党第一党の座を取った。希望の党は選挙後に解体して国民民主党として出直したのだが、所属議員の多くは結局、野党第一党の立憲に合流したのである(この際に合流を拒んだのが玉木雄一郎代表が率いる現在の国民民主党)。

民主→民進→立憲と渡り歩いてきた立憲議員たちの多くは自らの議席維持しか考えていない。それは彼らの過去の政治的行動が証明している。次の衆院選で立憲のままでは勝てないと判断すれば、「次の野党第一党」へさっさと乗り換えるだろう。落ちゆく立憲と登りゆく維新を見比べれば、もはや勝負は決した感がある。

あとはいつ衆院解散が断行されるかだ。その時点で立憲は空中分解し、残党の多くが維新になだれ込み、「自民vs維新」の構図で衆院選が行われる可能性が高い。「立憲はもう死んでいる」のが現在の政局状況なのだ。

立憲が起死回生の復活を遂げるとすれば、「泉降ろし」劇場が見事に成功し、政権交代の期待感を抱かせる巨力なリーダーが誕生する場合だろう。しかし立憲内で「ポスト泉健太」として名が上がるのは、ミスター消費税こと野田佳彦元首相やその子分の蓮舫参院議員という現状をみると、あまり期待できそうにない。

野党第二党以下が現在の小選挙区制で生き残るのは極めて難しい。

1990年代の政治改革で小選挙区制が導入された後、自由党やみんなの党など数々の新党が「第三極」として誕生したが、いずれも長続きはせず、新進党→民主党→民進党→立憲民主党という野党第一党に収斂されてきた。

100年を超える歴史があって全国に地方組織を張り巡らせている共産党も大きく勢力を減退させた。2019年に旗揚げしたれいわ新選組が伸び悩んでいるのも「二大政党制の壁」に直面しているといっていい。

日本維新の会が「二大政党制の壁」を打ち破って躍進しているのは、①本拠地・大阪で知事・市長・議会を抑え、強固な「地方政権」を確立していること②自民党が野党第一党(民主、民進、立憲)の勢いを抑える野党分断工作として維新を水面化で支援してきたことーーが要因である。

維新が「打倒自民」よりも「打倒立憲」を掲げ、野党第一党の座を奪うことに執念を燃やしているのは、自民との激突を避けるとともに、「野党第一党の座さえ手に入れれば、立憲はおのずから解党に追い込まれ、維新は立憲の残党を引き込むことで全国政党へ脱皮できる」という目論見があるからだ。立憲が自滅しつつある今、維新の戦略は着実に達成されつつあるとみていい。

裏を返せば、立憲を解党に追い込んで野党第一党の座を奪うことこそ、維新の唯一の生き残り策なのだ。その意味で、維新の政党戦略は正しいといえる。

維新は本拠地・大阪の「地方政権」が続くうちに、野党第一党にのしあがる必要がある。その前に大阪の知事選や市長選に敗れることがあれば、過去の「第三極」の政党と同じ道をたどりかねないのだ。

維新の馬場伸幸代表が今春の統一地方選に「地方議員数を1・5倍の600人に増やせなければ辞任する」と退路を断って774議席を獲得する躍進を果たし、さらには次の衆院選で「野党第一党になる」という目標を鮮明に打ち上げたのは、悠長に野党第二党に甘んじていたらすぐに失速するという危機感があるからだ。その時間感覚は極めて正しい。

維新幹部からは「立憲とは絶対に選挙協力しない」「立憲が衆院選に150人擁立するのなら維新は160人擁立する」「泉健太代表の選挙区にも対抗馬を擁立する」との声が伝わってくる。次の衆院選の前に立憲を解党に追い込む戦略とみて間違いない。

野党第一党を渡り歩いて自らの議席をつないできた立憲議員たちの多くは、次の衆院選では維新に加わるしか生き残れないと考えている。維新も一挙に全国政党に脱皮し、野党第一党にのしあがるには、立憲の残党を引き込むしかないことを知っている。あとはタイミングだけだ。

それは解散総選挙の号砲が鳴るときだ。そのどさくさに紛れて、彼らは説明責任を果たすことなく離合集散し、国会議員の議席を守ろうとする。2017年の希望の党騒動ようなドタバタ劇の再来を許してはいけない。

私たちは一刻も早い野党再編を通じて自民党に真っ向勝負を挑む本物の野党第一党のつくるよう、野党政治家たちに迫らなければならない。それは自民より「右」で「弱肉強食」の維新ではなかろう。

維新の勢いに抗い、芯のある野党議員を束ねて野党第一党をつくる気骨と実力のある人材が、立憲をはじめ今の永田町にいるだろうか。

国会議員にこだわる必要はない。知事や市長の現職や元職をはじめ、永田町の与野党とは一線を画した地方から政界再編のうねりが湧き上がる可能性もあろう。1993年の自民党下野ー非自民連立政権誕生という政界再編は、熊本県知事だった細川護煕氏や滋賀県知事だった武村正義氏らの新党結成から始まった。

自民・立憲の二大政党制への失望感が渦巻く現状を目の当たりにして、私はむしろ政界の新たな地殻変動のはじまりを予感している。維新の台頭はその幕開けに過ぎない。

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