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松原仁衆院議員の立憲離党は「維新移籍ドミノ」第一弾か〜総選挙前に戦線崩壊、内閣不信任案提出の判断に影響も

立憲民主党の松原仁衆院議員(衆院東京3区、当選8回、元拉致問題担当相)が離党届を提出し、次の衆院選で新東京26区から立候補する意向を示した。党に対して新26区からの出馬を希望してきたが、党は新3区からの出馬を求めて折り合わず、今なお公認を得られていないため離党に踏み切ったとしている。

日本維新の会の馬場伸幸代表は松原氏が維新公認で出馬することを希望した場合の対応について「どなたであっても選考はさせてもらう」と前向きな姿勢を示した。

衆院選の小選挙区に無所属で出馬すると、比例復活が見込めない上、政見放送に出られず、街宣車の使用やビラの配布枚数など選挙活動が大幅に制限され、著しく不利になる。松原氏は新26区に圧倒的に強固な地盤を持っているわけではなく、政党公認で出馬しなければ当選確率が大幅に下がるため、維新入りをめざす可能性は十分にあるとみられている。

維新の馬場代表は「皆が同じ方向を見てやっていく、一度決めたことには従う、そういうカルチャーに従ってもらえるかどうかは大きい」とも述べ、立憲議員が離党して維新公認を得る場合には「身を切る改革」など維新の政策に同調することを求めた。松原氏は立憲党内でも「右寄り」とみられており、維新の政策を受け入れることへの抵抗は比較的少ないだろう。

立憲党内で「反維新」の立場を鮮明にしてきた菅直人元首相や辻元清美参院議員らリベラル派はともかく、都市部を中心に無党派層の支持を受けて当選(比例復活を含む)した立憲議員の多くは、立憲の支持率が低迷して次の総選挙で惨敗することが確実視されるなか、維新へ駆け込む誘惑にかられるだろう。

立憲の比例得票は大幅減が予想されるため、比例復活枠をめぐる内部争いが激化するのは必至だ。選挙地盤の弱い都市部の若手ほど自らの選挙区で維新候補が決まる前に維新への移籍を探る動きが出てくるのではないか。

松原氏の離党が「立憲離党・維新へ移籍」を探る立憲議員たちを刺激し、松原氏の後を追う動きが相次ぐ可能性は十分にある。こうなると、立憲は総選挙前から空中分解し、2017年の希望の党騒動のように大多数の議員が維新に合流するという事態もありえるだろう。

立憲執行部はこの流れを阻止するため、松原氏を厳しく処分する可能性があるが、それで立憲から逃げ出す動きに歯止めをかけられるかどうかは不明だ。選挙に負ければただの人。立憲議員の多くは自分の議席を守ることを最優先するため、落ち目の立憲と共倒れになるつもりはさらさらない。

岸田文雄首相が6月解散を決断すれば、それを機に松原氏を後を追って離党し、維新へ駆け込む立憲議員が相次ぐかもしれない。6月解散は立憲解党の引き金となる可能性は十分にある。

それを承知で、岸田首相に解散の大義を与える内閣不信任案を提出するのかどうか。松原氏の離党表明は立憲の泉代表を弱気にさせ、解散政局に影響を与える可能性もある。

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