立憲民主党の泉健太代表が11月4日、東京都千代田区の法政大で講演し、次の衆院選では政権交代は目指さない考えを示した。「党が再生するには手順が必要だ。次の総選挙で基盤を築いて、5年で政権交代を目指す」と述べた。
簡潔に言おう。次の衆院選で政権交代を目指さないのは、野党第一党の責任放棄である。いますぐ代表を辞任してもらいたい。
与野党がひとつの議席を争う衆院選の小選挙区制度は、与党第一党(現在は自民党)と野党第一党(現在は立憲民主党)が政権を競い合う二大政党政治の根幹をなす仕組みである。有権者に二者択一の選択を迫ることで政権交代を起こりやすくし、それによって政界の緊張感を生み出すことを狙ったものだ。
有権者にすれば「自民党も立憲も嫌い」として選択肢を奪われるマイナス面があるが、それでも政権批判票の分散を防ぐことで(つまり、野党第一党に政権批判票を集中させることで)与党第一党が失政を重ねた場合は野党第一党への政権交代を促す制度といってもよい。
立憲民主党はこの小選挙区制度に支えられ、実力以上の議席を与えられているのである。立憲は嫌いでも自民政権を倒したいという多くの票を得て、下駄を履かせてもらっているのだ。
すべては政権交代のリアリズムを高めるためといってよい。
ところが現在の日本政界は、立憲があまりに弱く、日本維新の会が「野党第一党を奪う」と表明し、野党が四分五裂して、政権交代のリアリズムを失っている。この結果、自公政権の政治は緊張感に欠け、失政が繰り返され、国民生活はどんどん悪化しているのだ。
二大政党政治が機能していないのである。立憲は自らの議席確保という利益だけを享受し、政権交代のリアリズムを高めるという小選挙区制が要請する野党第一党の責務を放棄しているのだ。
泉代表は「非現実的な政権交代を掲げても、有権者は振り向いてくれない」という気持ちなのだろう。むしろ開き直って「次の衆院選では政権交代は目指さない」と表明することで、立憲アレルギーを薄め、自公政権の批判票を引き寄せる選挙戦略といっていい。
だが、ここまで堂々と政権交代を諦めるというのは、有権者を馬鹿にした発言だ。小選挙区制度の趣旨を否定した暴言といってよい。自民vs立憲の一騎打ちの選挙区で、「自民も立憲も嫌い」という有権者はどうしたらよいのか。棄権しろというのか。
最後の最後まで政権交代の可能性を探り、有権者に二者択一をお願いする選挙構図を作り出すのが野党第一党の最大の責務である。それを放棄しているのだから、話しにならない。
そもそも前回衆院選から2年も立つのに、野党勢力はバラバラで、いまだに二者択一の選挙構図を生み出す機運さえ作れていない時点で、泉代表は野党第一党のリーダーとして失格なのである。野党再編を仕掛けてでも、二者択一の選挙構図を作り出すことが、野党第一党の党首の最大の使命なのだ。
野党第一党が政権交代を諦めた時点で、今後の野党の選挙協力は単に、各党の議席維持の党利党略でしかなくなる。共産党はそのような立憲との選挙協力を引き続き模索するのだろうか。
他の野党はいちはやく泉立憲を見切って、野党再編に動くことが、有権者に対して誠実な姿勢だと私は思う。