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立憲民主党の「腰砕け国会」——財務省べったり、国対密約、そして石破政権温存の思惑

今年の通常国会は、31年ぶりとなる少数与党での予算審議だった。けれども蓋を開けてみれば、予算案はあっけなく年度内に成立することになった。

衆院での修正、参院での再修正と迷走を重ねた石破政権の新年度当初予算案。にもかかわらず、立憲民主党は内閣不信任案を提出して徹底抗戦することもなく、採決をあっさりと容認した。そもそも年度内成立を阻止する日程闘争を仕掛けることによって、内閣総辞職や政策変更、疑惑解明を迫るつもりはなかったのである。

安倍派の裏金問題をめぐる幹部たちの参考人招致すら実現していない。年度内成立は既定路線であり、自民党と立憲民主党が握り合っていたことは明白だ。

これはもはや「茶番国会」と言わざるを得ない。

なぜ、立憲民主党はここまで腰砕けなのか。その背後にある三つの要因を探っていく。


①財務省とべったりな立憲民主党

立憲民主党が予算案に対して強く反対できなかった最大の理由は、今の党執行部が財務省と深い関係にあることだ。

野田佳彦代表と安住淳衆院予算委員長はともに財務相経験者であり、民主党政権時代に消費税増税を自公と合意した張本人たちである(当時は野田首相、安住財務相だった)。彼らはそれ以来、財務省と切っても切れない関係を築いている。

そもそも、予算案が年度内に成立しなくても暫定予算を組めば大きな問題はない。しかし、暫定予算を回避したいのは、手間がかかる財務省だけだ。

財務省は与野党幹部に対し「年度内成立だけはお願いします」と根回しをし、その見返りに予算や税制の要求を受け入れる。結果として、財務省の意向に沿う政治家たちが「財務族議員」として力を持つようになる。

野田氏と安住氏はまさにその典型であり、彼らが立憲民主党を仕切っている限り、党の方針は「増税・緊縮財政」寄りになる。

予算案の年度内成立を最優先したのも、財務省の意向に従った結果にほかならない。


②安住・森山の密約

立憲民主党の腰砕けにはもう一つの理由がある。それは、安住氏と自民党の森山裕幹事長が「盟友関係」にあることだ。

両者は長年、与野党の国会対策委員長を務め、国会運営を裏で調整してきた「国対政治のドン」である。彼らは互いの党内での立場を強化するために、さまざまな貸し借りを繰り返してきた。

今回も、予算審議が始まる前に以下のような密約が交わされていたとみられる。

  • 予算案は年度内に成立させる
  • 安倍派の幹部や会計責任者の証人喚問は避ける
  • その代わり、高額療養費の患者負担引き上げは凍結する

国会はこの密約通りに進行し、途中で石破総理の商品券スキャンダルが勃発しても、密約が揺らぐことはなかった。

つまり、年度内成立は最初から出来レースだったのだ。


③石破政権のまま参院選へ

立憲民主党が内閣不信任案を提出しなかった最後の理由。それは、石破政権のまま参院選に突入してほしいという思惑があるからだ。

なぜなら、支持率が低迷する石破政権が続いたほうが立憲民主党にとって参院選が戦いやすいからだ。

ただ、理由はそれだけではない。

石破政権が崩壊すれば、自民党は新総裁を選出し、国会で総理指名選挙を行うことになる。その際、立憲の野田代表に野党各党(維新・国民・れいわ)が投票する可能性はほとんどない。

その結果、参院選前に野党が分裂していることが露呈し、立憲民主党は戦略上の大きなダメージを受ける。

さらに、立憲民主党が恐れているシナリオがある。それは、自民党が国民民主党の玉木雄一郎代表を首相に担ぎ、自公国連立政権を発足させたうえで、減税を公約に掲げて参院選に突入する可能性だ。

そうなれば、立憲民主党は「増税・緊縮財政」の政党として大敗しかねない。

このようなリスクを避けるためにも、立憲民主党は石破政権のまま参院選を迎えたいのだ。

そのために、予算の年度内成立を優先し、石破政権が崩れるような要因を作らなかったのである。

このように、自民党と立憲民主党が水面下で握り合い、茶番劇を繰り広げている限り、国会が良くなるはずがない。今こそ、有権者は参院選で明確にNOを突きつけるべきではないか。

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