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立憲の「裏切り」と「暴走」──始まった“年金・増税・大連立”のシナリオ

衆議院で可決された年金改革法案は、自民・公明・立憲民主の3党による圧倒的多数の賛成で成立への道を進み始めた。

野党第一党であるはずの立憲民主党が、他の野党の反対を振り切り、与党と手を組んで強行採決に踏み切ったこの構図は、単なる法案可決以上の意味をもつ。これは、政界のパワーバランスを根本から揺るがす「大連立」の予兆であり、その先には年金改革と消費税増税という現実的かつ重い課題が横たわっている。

野党第一党の「離反」

今回の年金改革法案は、与党である自民・公明に加え、立憲民主党の賛成によって衆院を通過した。維新、国民民主、れいわ新選組、共産党といった他の野党がすべて反対に回る中、立憲は与党と単独で修正案をまとめ、審議入りからわずか2日で採決を強行した。このプロセスは極めて異例であり、「数の力」で押し切ったといっても過言ではない。

野党第一党には、他の野党と連携し、与党と対峙する調整役としての役割が求められるはずだ。しかし、立憲は今回、その責任を投げ捨て、自公との協調路線に舵を切った。この「暴走」によって、野党間の信頼関係は崩壊し、夏の参院選での野党共闘は事実上、絶望的となった。

水面下で進んでいた「大連立」構想

立憲がなぜそこまでして与党に接近したのか。

その答えは、以前から一部で囁かれてきた「自公立大連立」構想にある。立憲の野田佳彦代表と自民党の森山裕幹事長という「国対族」の重鎮が、水面下で調整を重ねてきたのだ。

高額療養費の負担増見送りや年金改革法案の修正など、さまざまな政策での合意が次々と成立。その見返りとして、内閣不信任案の提出は見送られる——すべてが裏で整然と進んでいた。

さらに報道では、森山幹事長が「立憲が不信任案を提出すれば衆院解散も」と牽制する一方で、野田代表が「トランプ国難」を理由に提出を回避する構えだと伝えられている。これは対立の演出にすぎず、事実上の出来レースである可能性が高い。

「共通の敵」は国民民主党

年金改革をめぐる3党合意後、自民と立憲は「野党切り」へと動き出した。その最大の標的が、かつて与党とも協議を続けていた国民民主党だ。

玉木雄一郎代表の「備蓄米は一年経てば動物の餌」発言に対し、自民・立憲両党は一斉に批判を浴びせ、かつての協調関係をなかったことにするかのような冷淡な態度を見せた。玉木氏が3党合意を「毒入りアンパン」と揶揄した際も、野田代表は「食べ物の話に例えるのは不適切」とあえて皮肉で返すなど、決定的な決別を印象づけた。

自公立が本気で大連立を目指すならば、国民民主はむしろ「共通の敵」となる。参院選での躍進を阻むことが、与党・立憲の「共通目標」となっているのだ。

維新もまた、ガソリン税廃止を求めて与党と協議を重ねてきたが、ここにきて自民は応じられないとの姿勢を示した。年金法案成立により、大連立に目途がついた今、維新にも“用済み”の空気が漂っている。

立憲党内の反発は限定的

では、立憲党内ではどうか。

野田代表の方針に対し、小沢一郎氏は「これほど国民を馬鹿にした話はない」と不信任案提出を迫っている。しかし、これに同調する動きは広がっていない。

そもそも、過去に消費税減税をめぐって江田憲司氏と枝野幸男氏が対立した際、野田代表は減税派に譲歩し、食料品のゼロ税率を打ち出した。しかしその背景には、当時勢いのあった国民民主への警戒心があった。

今やその国民民主が失速し、立憲の支持率が回復した今、野田氏にとって非主流派の反発は脅威ではない。

党内に異論はあっても、それが野田代表の方針を覆す決定打にはなり得ないのだ。

消費税増税へ向けた「着実な一歩」

今回の年金改革は、単なる法案可決ではなく、「年金・増税・大連立」への第一歩である。今後、年金の安定財源として消費税の増税が議論されることは避けられない。

参院選後、政局は一変する可能性がある。自公が勝っても負けても、立憲が勝っても負けても、大連立を組めば政権は安定し、3年間の国政選挙なしという「空白期間」を利用して、増税を含む痛みを伴う政策を一気に進める布石が整う。

政界の水面下では、すでにそのシナリオが着実に動き出している。