政治を斬る!

「最大の敗者は立憲」──リベラルの敗北に見る政治の構造変化

2025年の参院選が映し出したのは、自民党の凋落以上に、リベラル勢力の本質的な敗北だった。メディアは「自民党が過半数を割った」と大々的に報じたが、その陰で、立憲民主党が比例票で4位に転落するという歴史的な敗北を喫していた事実は、あまり語られていない。

票数を見れば一目瞭然だ。自民党は確かに178万票を減らしたが、立憲民主党はその倍以上の417万票を失っている。比例得票数で自民、国民民主、参政党に次ぐ4位。新興政党である参政党にすら及ばないという事態に、もはや「野党第一党」としての面目は保てない。

この結果は、日本政治の構造が大きく変わりつつあることを示している。すなわち、自民 vs 立憲という「二大政党時代」の終焉である。そして同時に、保守とリベラルの時代が交差し、交代するターニングポイントにもなっている。

投票率上昇と「無党派層の意志」

今回の選挙でもう一つ特筆すべきは、投票率が大幅に上昇したことである。前回より6ポイント高い58.51%。これは、普段は投票に行かない若年層・現役世代が動いた結果である。ところが、投票率が上がって勝ったのはリベラル勢力ではなかった。

長らくリベラルは「無党派層は本当はリベラルだ。投票率が上がれば我々が勝つ」と信じてきた。しかし今回は、投票率が上がった結果、立憲も共産も大敗したのだ。無党派層はリベラルどころか、自民党すら見限り、新興の保守系政党に流れたのである。

これは、2024年の東京都知事選にも通じる現象だった。高い投票率にもかかわらず、立憲・共産が推した候補は3位に沈み、若者に支持された無所属の候補にすら敗北している。もはや、リベラルは若年層や現役世代からの共感を得られていない。

立憲・共産の支持基盤は、70歳以上の高齢世代に偏っている。現役世代との断絶があまりにも大きい。この構造的な限界こそ、リベラル勢力の根本的な弱さの原因である。

「石破辞めるな」に表れる敗北意識

リベラル敗北の象徴的な現象が、SNS上で話題となった「#石破辞めるな」コールだ。自民党内では選挙結果を受けて「石破おろし」が進行中だが、立憲や共産の支持層からは「石破のままでいてくれ」と懇願するような投稿が続出した。

これは非常に奇妙な構図だ。本来であれば、選挙で信任を失った総理に「即時退陣せよ!」と訴えるのがリベラルのあるべき姿だ。民主主義の根幹を重視する立場からすれば、民意に背いて権力に居座る総理大臣など到底認められないはずである。

だが今回は違った。なぜか?
理由は単純明快である。リベラル自身が政権交代をあきらめているからだ。自らを「もうひとつの選択肢」として提示できず、自民党内の中道寄りの存在にすがるしかない。この自己矛盾こそが、リベラル勢力の深い閉塞感を如実に物語っている。

リベラルが見落とした「上下の分断」

さらに深い問題は、リベラル勢力がいまだに「左右」の古典的な政治対立に固執していることだ。世界の政治潮流はすでに、「右か左か」ではなく、「上か下か」へと軸を移している。すなわち、グローバリズム vs 反グローバリズムの対立である。

アメリカではトランプが、ヨーロッパでは反EU勢力が台頭し、既成政党を揺るがしてきた。人々は、格差拡大や文化的摩擦を生んだグローバル化に怒り、国家主権や地域共同体の再評価を求めている

しかし、立憲民主党や共産党は、自民党とともにグローバリズムの側に立ち続けてきた。財政規律を重視し、積極財政に背を向け、理念としての「共生社会」や「人権」を掲げながらも、格差問題への根本的な処方箋を示してこなかった。

その結果が、今回の選挙である。参政党や国民民主党、日本保守党といった「反グローバリズム」的な訴えを行う新興政党が票を伸ばし、リベラルは沈んだ。

もはや、単なる「反自民」「反右派」では民意をつかめない。人々が求めているのは、グローバリズムがもたらした格差と不安に真正面から向き合う政治勢力なのだ。


終わりゆく「二者択一」の時代へ

自民党と立憲民主党による二大政党時代は、すでに有権者の心の中で終わっている。そして、保守とリベラルの分断も、もはや過去のものだ。今、政治の本当の対立軸は「上下」、すなわちグローバルな秩序とその犠牲となった庶民との闘いである。

立憲民主党が再び政権交代の選択肢として浮上するためには、この構造変化に真剣に向き合い、反グローバリズムという民衆の怒りを正面から受け止める覚悟が必要だろう。