政治を斬る!

立憲民主党の“生命維持装置”が外れる日〜中選挙区復活論が突きつける分裂危機と政界再編の行方

国民民主党が火をつけた「中選挙区制復活」が、政界の地図を書き換えようとしている。自民・維新の与党側に加え、参政党や無所属議員まで賛同に動き、制度改革の流れは確実に広がりつつある。
だが、この波にただ一つ、真っ向から立ちはだかっている政党がある。立憲民主党だ。

なぜ立憲だけが反対するのか――理由は極めてシンプルである。
立憲民主党を長年支えてきたのは、実は小選挙区制だった。小選挙区こそ立憲を“実力以上に押し上げてきた生命維持装置”であり、その装置が外れた瞬間、立憲はただちに分裂・解体の危機に直面する。
この構造を理解しない限り、いま政界で進む巨大な地殻変動は見えてこない。


■中選挙区復活に怯える立憲

立憲の野田佳彦代表は12月5日の会見で「極めて慎重」と述べ、制度復活に明確な拒否を示した。自身が1993年の中選挙区で初当選した経験を引き合いに、「明らかにお金がかかった。戻すのがいいとは思わない」と断言したのである。

翌6日には安住淳幹事長がさらに踏み込んだ。
「中選挙区は政治とカネを悪化させた」「自民の複数候補がサービス合戦を行う」と批判し、維新については「野党交渉で必ず裏切った」「いなくなってせいせいした」と痛烈にこき下ろした。
維新が定数削減を仕掛け、国民民主がそこに乗ってきたことへの強烈な牽制だ。「維新を信用したらハシゴを外されるぞ」という警告でもある。

だが、立憲の内部は一枚岩ではない。
津村啓介氏らは石破政権との大連立も視野に入れ、中選挙区への回帰をかねてから提唱してきた。高市政権発足後も独自の全国区割り案を公表し、制度復活論へ積極的に参加している。
立憲包囲網が外側から狭まるだけでなく、党内でも揺らぎが始まった。

ここで浮かび上がる問いは一つだ。
なぜ小選挙区は立憲に有利で、中選挙区は立憲を砕くのか。


■小選挙区が立憲に履かせた“下駄”

昨年の衆院選。自公は過半数割れ、立憲は50議席増で「躍進」と報じられた。だが支持率は低迷し、有権者の期待が立憲に向いたわけではなかった。
数字をよく見ると、立憲が獲得した148議席のうち、小選挙区が104で全体の7割を占める。小選挙区では1574万票(得票率29%)を得たのに、比例では1156万票(21%)に沈んだ。

比例は有権者が“好きな政党”を選ぶ仕組みだ。そこでは立憲は伸びていない。
ではなぜ小選挙区では勝てたのか。

裏金問題で自民党に強烈な逆風が吹いた。
「今回は自民に勝たせたくない。しかし自民に勝てそうな野党候補は立憲しかいない」。
こうした“消去法の投票”が全国で起きたのである。

つまり立憲は積極的に選ばれたのではない。
小選挙区制が、有権者に「自民か立憲か」という二者択一を強制し、立憲に下駄を履かせたのだ。
この制度こそが、立憲が実力以上の議席を維持してきた最大の理由だった。


■参院選で露呈した“本当の立憲”

ところが今年の参院選でその幻想は崩れた。
参院選は小選挙区ばかりではない。中選挙区、多数の選択肢がある比例など、より“本当の支持”が問われる制度が組み込まれている。
立憲は比例で国民民主や参政党にも追い抜かれ、野党3位へ転落した。中選挙区でも国民や参政に議席を奪われる選挙区が相次いだ。

小選挙区では反自民票の受け皿として勝てるが、比例や中選挙区では勝てない――立憲の構造が完全に露わになったのである。


■立憲は「選挙互助会」にすぎない

立憲という党の成り立ちも、小選挙区制と密接に結びついている。
立憲公認さえ得れば、小選挙区の構造的後押しによって当選しやすい。
そのため党内には、右から左まで、積極財政から緊縮まで、政治理念も政策も一致しない議員が集まっている。

共通点はただひとつ――
「立憲にいれば自分が当選する」という算盤だ。

逆に言えば、小選挙区という生命維持装置が外れた瞬間、立憲にとどまる意味はなくなる。
落選を避けるため、議員は生存先を求め、いっせいに動き始めるだろう。


■立憲分裂後の政界地図

国民民主や参政党は、立憲の構造を見抜いた。
中選挙区を復活させれば、立憲は四分五裂する。これを機に政界再編が始まり、各党は立憲の残党を取り込み勢力を拡大できる。

実際、立憲内にも現執行部への不満は蓄積し、積極財政派や連合系は国民民主へ、関西圏は維新へ、独自路線派は参政・れいわ・保守へ、自民に流れる者も出るだろう。
どこにも行き場のない人だけが「新・立憲民主党」を名乗って残る――そんな未来図が浮かぶ。

その時、初めて立憲は、小選挙区という強烈な追い風に守られてきた自らの“本当の立場”を痛感するはずだ。


■孤独な戦いへ

小選挙区と運命をともにしてきた立憲民主党。
中選挙区復活の流れを止められるのか。
それとも制度改革を契機に、ついに立憲分裂と政界再編が始まるのか。

いま、立憲はまさに崖っぷちに立たされている。