日本維新の会が早期解散・総選挙を見据え、立憲民主党との対決姿勢をますます強めている。
馬場伸幸代表は次の衆院選について「立憲民主党をまずは叩きつぶす」と宣言し、打倒・自民よりも打倒・立憲を優先して野党第一党の座を奪うことを目標にすると表明。立憲を上回る候補者を擁立する方針だ。
藤田文武幹事長は立憲が内閣不信任案を提出した場合について「一緒にやるつもりは全くない。よほどの時は議会の権利として突きつけたいが季節行事みたいにやるのは理解不能だ」と明言した。
立憲が4月の衆参補選で惨敗し、政党支持率でも維新を下回る状況が続いており、泉健太代表の進退問題がくすぶっている。
一方、維新は2021年衆院選、2022年参院選に続いて4月の統一地方選でも躍進し、野党第一党の奪取に自信を深めている。これまで立憲に流れていた自公政権への批判票を一手に引き寄せるためにも、立憲を徹底的に批判し、立憲に対する有権者の失望感をさらに刺激し、「自民か、維新か」という対決構図に持ち込みたいのだろう。
立憲の衆院議員の間では「立憲のままではとても勝ち残れない」として、立憲から維新への鞍替えを探る動きもある。その第一号として注目されたのが、松原仁衆院議員の離党表明だった。
立憲は総選挙を目前に維新へ駆け込む離党者が相次ぎ、解党含みになるリスクもある。
立憲の泉健太代表は、維新が内閣不信任案に賛成しない姿勢を鮮明にしたことについて「戦うことを忘れた御用野党の本領がまた発揮された」「野党の側から自民党の政治を変えていこうというよりも、自民党との近さをアピールしている」と酷評した。
だが、「野党は批判ばかり」との批判に怯え、「提案型野党」を掲げて自民党に接近してきたのは、泉代表自身である。泉代表による維新批判には滑稽さが漂う。「戦うことを忘れた野党」とは、まさに泉立憲だったのだ。
立憲が昨年夏の参院選に惨敗した後、共産党やれいわ新選組との共闘を見限り、「自公の補完勢力」と揶揄してきた維新との国会共闘に転じることを決断したのも泉代表自身だった。
その後、国会対応でも安保政策でも維新の意向をできる限り受け入れ、歩調をあわせてきた。その勢いで選挙協力も模索してきた。
これに対し、維新は国会では利害が重なる範囲で協力しつつ、選挙協力には絶対に踏み込まないという姿勢を貫いた。そして立憲の小西洋之参院議員が衆院憲法審査会を「サル」にたとえて批判して世論の批判を浴びたのを好機と見て、立憲と手を切ったのである。
維新にそっぽをむかれ、決別した今になって、防衛財源確保法案などで対決姿勢をみせても説得力がない。なぜ最初から防衛力増強自体に反対しなかったのか。場当たり的な対応を重ねた立憲の姿勢は多くの野党支持層の不信を深めた。その右往左往ぶりは見ていられない。
共産・れいわを見捨て、維新にすり寄って共闘を目指しながら、維新に見捨てられたーーそんなリーダーについていく人はいるのだろうか。
政党の立ち位置をめぐる政局判断の失敗は、個別のスキャンダルよりはるかに痛く、政治責任は極めて重い。泉代表ら執行部が退陣しなければ、立憲はとても総選挙を乗り切れない。
どこと組むのかという政党戦略が失敗し、新たな政党戦略を打ち出す時は、執行部を総入れ替えしてリセットする「ケジメ」が絶対に不可欠である。
とはいえ気になるのは、立憲内で「ポスト泉」の一番手に浮上しているのが、野田佳彦元首相であることだ。
野田氏は財務省と極めて親しく、野田内閣以来、自民党と連携して消費税増税を主導してきた「ミスター消費税」である。岸田派(宏池会)とも財務省を介して極めて近い関係になる。
岸田首相は今後、防衛増税や異次元の少子化対策の財源確保の議論を進めるにあたり、「国民の負担増」が与野党の対立軸にならないようにするため、立憲と連携を探りたい意向だ。維新よりも立憲が野党第一党にとどまるほうがやりやすい。そのためにも今国会で立憲が内閣不信任案を提出して激突モードになるのは避けたい意向だ。
岸田首相にとっても、泉代表よりは野田元首相がカウンターパートのほうがやりやすい。「泉おろし」は増税を探る岸田首相や財務省にとって都合がよいともいえる。
泉代表が退いても展望は開けない。進んでも地獄、退いても地獄。立憲はまさに五里霧中にある。
6月解散の鍵を握るのは、立憲民主党が提出するかどうかで揺れる内閣不信任案です。泉健太代表の決断について動画で解説しました。ぜひご覧ください。