政治を斬る!

参院選総括の決定版!日本政治は「石破後」を見据えた大政局へ──主要政党の明暗とこれから

2025年夏の参院選は、戦後政治の地殻変動を象徴する選挙となった。与党・自民公明は衆参両院で過半数を割る歴史的敗北を喫し、日本政治は明確に「石破後」へのカウントダウンに突入した。今後は、自民党内の政局だけでなく、野党を巻き込んだ政界再編に進む可能性が高く、まさに「政界カオス」の幕が開いたといえるだろう。

自民党──結党以来最大の危機、石破続投に広がる不協和音

自民党の議席は改選比で13減の39議席。比例票は過去最低の12に落ち込み、業界団体と固定票のみに支えられる構造が鮮明になった。特に1人区での敗北が深刻で、保守地盤とされてきた東北、四国、南九州で立て続けに議席を落とした。無党派層の離反と、保守層を切り崩した参政党の台頭が主因だ。

石破総理は選挙当夜、NHKの番組で続投を表明したが、支持率は20%を割り込む勢い。麻生元総理や高市早苗氏らが「石破おろし」に動くのは確実だ。

野党各党が、有権者に不信任を突きつけられた石破政権に協力する可能性は限りなくゼロで、秋の臨時国会を乗り切るのは困難だ。8月に予定されるトランプ関税を巡る日米交渉が一段落した段階で退陣を余儀なくされ、9月には総裁選が行われる可能性が濃厚だ。

立憲民主党──「負けなかった」だけの横ばい、主導権は失われつつある

立憲民主党は22議席と改選比横ばいにとどまった。与党がこれだけ惨敗したにもかかわらず、野党第一党が政権批判票の受け皿にならなかったのである。比例では国民民主、参政党と並び、得票数ではいずれにも後れを取った。東京や茨城といった複数区での失速も目立ち、事実上の「敗北」といっていい。

野田代表は自民との大連立を否定し、野党共闘に舵を切る構えだが、今や立憲が野党の「軸」となるには力不足との声も根強い。1人区では参政党が自民票を分断したことにより、立憲候補が相対的に有利となって救われたが、支持基盤の広がりが見られなければ、いずれ国民・参政に主導権を奪われることになるだろう。

国民民主・参政党──台頭する第三極、連立の鍵を握るか

国民民主党は16議席を獲得し、東京で2人当選を果たすなど首都圏での存在感が光った。立憲に差をつけた形だ。富山や香川などの1人区でも善戦し、立憲と一線を画した第三極の主役としての地歩を着実に固めている。玉木代表は石破政権との連立を否定する一方で、自民内の反主流派とは一定のパイプを維持。石破退陣後の新体制次第では、減税政策などを条件に連立参加も現実味を帯びる。

一方、注目は「日本人ファースト」を掲げて躍進した参政党だ。比例7議席、選挙区7議席で計14議席。東京や神奈川、大阪など都市部で支持を集めたほか、2人区・茨城では立憲から議席を奪うなど、既成政党にとって脅威となっている。神谷代表は自民とも立憲とも是々非々の姿勢を示し、反グローバリズムという明確な旗印を掲げて第三極の主役をうかがう。

ただ、過激な言動が一部で懸念されており、今後はマイルド路線とのバランスをどう取るかが課題。一定の保守票を獲得しつつ、都市部の無党派を取り込めるかが、党勢拡大のカギとなる。

公明党・共産党──組織の限界と新連立時代への対応力

組織政党としての信頼を誇ってきた公明党も、改選14から8へと後退。選挙区では埼玉・神奈川・愛知で議席を失い、18年ぶりの全勝逃しとなった。自公連立では政権維持が不可能となった今、国民民主との接近を強め、「自公国連立」の可能性を模索する場面が増えるだろう。

共産党は改選比で4減の3議席と、存在感をさらに低下させた。1人区の一本化で立憲に譲歩を重ねたが、自党の躍進にはつながらず、若年層への訴求も乏しい。新興勢力が躍進する中で、古典的左派の位置づけは厳しさを増している。

れいわ──存在感低下と再起の課題

れいわ新選組も3議席と伸び悩んだ。消費税廃止を掲げて昨年の衆院選では躍進したものの、今回の参院選では同じく積極財政を掲げる参政党の旋風の陰に隠れた。後発ながらも地方組織づくりに勝る参政党に新興勢力の主役の座を奪われた格好だ。今後、党運営や選挙戦略の抜本的見直しが不可欠だ。


混迷の政局、カギを握るのは「次の連立」

今回の選挙結果は、与党・野党の「既存2極」体制の限界を突きつけた。今後の焦点は、石破総理の退陣とその後の政権再編、そして「自公がどの野党と組むか」だ。政局はすでに秋の臨時国会を見据えて動き始めている。

ただ、これらの与野党政局はいずれもグローバル化を推進してきた与野党のコップの中の争いでもある。世界的潮流である反グローバリズムを掲げる参政党の台頭は、欧米政界と同様に、既存の政界秩序を突き崩すパワーを秘めており、参政党の動向からも目が離せない。