今回の総選挙は、自民党の圧勝と新党「中道」の壊滅的敗北が大きく報じられた。しかし、もう一つ見逃せない変化がある。第三極の勢力図が大きく塗り替わり、「主役交代」が鮮明になったことである。これまで第三極の中心と見られてきた日本維新の会と国民民主党が伸び悩む一方、参政党と新党「チームみらい」が台頭し、政治の新しい潮流を形づくり始めた。
まず日本維新の会である。維新は連立与党入りしながらも自民党と選挙協力を行わず、全国87の小選挙区に候補者を擁立して総選挙に臨んだ。政権は共にするが選挙は競い合うという、新しい連立の形に挑戦した格好だ。
しかし結果は、高市旋風のなかで存在感を発揮できず、前回の38議席から36議席へとわずかながら後退した。大阪では19選挙区中18勝1敗と地盤を守ったものの、全国的には躍進とは言い難い結果である。維新は今後、全国政党としての拡大よりも大阪・近畿を中心とした地域政党色を強め、連立政権内での影響力確保に軸足を移していく可能性が高い。
一方、国民民主党も苦しい戦いとなった。立憲民主党との選挙協力を解消し、全国102選挙区に候補者を擁立、51議席獲得を掲げて選挙戦に臨んだが、結果はほぼ横ばいの28議席にとどまった。中道再編に反発する無党派層の一部を取り込んだものの、これまで支持してきた保守層の一部が自民党へ戻ったことが響いた。
さらに、自民党が単独で3分の2を超える議席を確保したことで、これまでの「与党過半数割れを背景に政策を実現する」という国民民主党の戦略は成り立たなくなった。玉木雄一郎代表と榛葉賀津也幹事長は今後、与党接近路線を続けるのか、それとも野党再編を主導する方向へ舵を切るのか、難しい選択を迫られることになる。
こうした既存第三極の停滞とは対照的に、大きく議席を伸ばしたのが参政党である。神谷宗幣代表率いる参政党は、公示前2議席から15議席へと大幅増を果たした。
高市政権誕生によって保守票が自民党に回帰し、序盤は伸び悩んだものの、党員主体の草の根選挙を徹底し、着実に支持を広げた。参政党の主張の柱である反グローバリズム路線は、経済界と結びつきの強い自民党とは本質的に距離があり、今後は保守層の一部を切り崩す存在として、自民党にとって無視できない競争相手になっていく可能性がある。
さらに注目されたのが、総選挙初登場の「チームみらい」である。AIエンジニア出身の安野貴博党首が率いる同党は、比例代表で11議席を獲得し、特に東京や南関東など首都圏で強さを見せた。各党が消費税減税を掲げる中、あえて減税反対を打ち出し、社会保障財源の維持を訴えた戦略が、財政不安を懸念する都市部の中高年層の支持を集めた。
新党「中道」結成に失望した旧立憲支持層の受け皿となった側面も大きく、今後の動向次第では都市型新勢力として一定の存在感を保つ可能性がある。ただし、急拡大した組織基盤や政策体制はまだ脆弱で、国会活動の実力は未知数である。
その一方、れいわ新選組は9議席から1議席へと激減し、共産党も4議席へと後退、日本保守党は議席を獲得できなかった。従来の第三極勢力の一部は明確に退潮局面に入ったと言える。
今回の総選挙は、自民党一強体制の強化が最大の結果であることは間違いない。しかしその裏側では、第三極の内部で勢力の入れ替わりが進み、参政党やチームみらいといった新しいプレーヤーが台頭し始めた。維新と国民民主が停滞するなか、第三極の中心が誰になるのかはまだ確定していないが、「主役交代」が始まったことだけは明らかである。今後の野党再編や政局の行方を占ううえで、この変化は極めて重要な意味を持つことになるだろう。