2025年東京都議会議員選挙――。
この選挙で、政治関係者の多くが驚かされたのは、参政党の“本格的台頭”だった。これまで国政では「泡沫扱い」されていた同党が、都議選で3人の当選者を出し、一気に無視できない存在へと浮上したのだ。
しかも、躍進は表層的な現象ではない。若者を中心とする無党派層の新たな受け皿として、地に足のついた草の根組織とネット戦略で勢力を拡大。直後に控える参院選では「台風の目」として注目を集め始めている。
なぜ、れいわでも維新でもなく、参政党なのか――。その実力と構造を、都議選の結果から詳細に読み解く。
都議選で証明された「新勢力」としての存在感
参政党は都議選において、世田谷区、大田区、練馬区、八王子市の4選挙区に候補者を擁立し、うち3人が当選した。
注目は世田谷区。定数8に18人が出馬する激戦区で、35歳の新人候補・望月氏が4万票超を獲得し、自民党現職に次ぐ2位で当選。立憲・公明・共産といった主要政党の現職すら押しのけた。これは単なる「風」では説明できない実力だ。
練馬区では、39歳の江崎氏が3位で当選。こちらも票数で上位に食い込み、立憲・公明・都ファの現職に肩を並べる結果を見せた。
さらに大田区では、49歳の最上氏が公明2人を押しのけて4位当選。唯一落選した八王子市でも、定数5に対し7位に食い込み、共産党現職や「再生の道」の候補を上回った。
これらの結果は、「無党派層が期待する新しい政治勢力」として、れいわや維新ではなく、参政党が選ばれ始めていることを示している。
参院選、全国展開の戦略と若い候補者たち
参政党は今回の参院選で、全国45の選挙区に候補者を擁立。都内では、歌手で保守系ネット番組のキャスターとしても知られる「さや」氏が立候補。都議選での躍進を受け、一気に当選圏内に浮上した。
候補者の顔ぶれも多様だ。大学教授、医師、起業家だけでなく、看護師、介護士、農業者、元派遣社員など、生活に根差した職業の人々が目立つ。平均年齢は約45歳。若手候補者が中心という特徴は、今の政治に変化を求める若年層のニーズに合致している。
3年前の参院選では比例区で137万票を獲得し、神谷宗幣代表が1議席を獲得。今回は比例候補も9人に増やし、選挙区と合わせて「6議席獲得」を目標に掲げている。これは維新やれいわと肩を並べる数字だ。
ユーチューブとネットでの「異次元」拡散力
参政党の躍進の背景にあるのが、ネット戦略だ。
公式YouTubeチャンネルの登録者数は33万人。維新(10万人)や国民民主(25万人)を上回り、れいわ(37万人)に迫っている。自民(14万人)や立憲(4万人)といった既存二大政党は、完全に後塵を拝している。
さらに、公式サイトや候補者紹介ページの構成も洗練されており、見やすい。。ネット空間における「魅せ方」のうまさが、参政党を“古くさくない政党”として印象づけている。
既存政党が紙のポスターや街頭演説に依存している間に、参政党はオンラインの「情報空間」でシェアを広げてきた。その差は歴然だ。
地方組織の底力――「議員ではなく党員が中心の政党」
参政党のもう一つの強みが、地方組織だ。
国会議員はわずか4人だが、地方議員は都議3人、区議13人、市議106人、町村議24人、県議も4人いる。地方議員数では、国会議員9人を擁するれいわ(地方議員56人)を上回っている。
この地方の広がりを支えているのが「党員中心主義」だ。産経新聞の特集では、参政党を「議員ではなく党員が主役の政党」と紹介。各地の支部は自主的に立ち上げられ、党員自身が候補者を選出。神谷代表が政策面で枠を作る一方、支部運営は自由に任せている。
これは、党本部が中央集権的に管理統制と強める公明党や共産党とは対照的だ。れいわのように党本部が地方活動に事細かく介入する政党や、大阪中心の維新ともまったく異なる「草の根型政党」なのである。
参政党から、既存政党は何を学ぶべきか
参政党の台頭は「右派」というラベルでは説明しきれない。
その内実は、ネット時代に対応した戦略的な広報、自由な支部運営、そして生活者目線の候補者擁立という、極めて現代的な政党運営である。
昨年の総選挙で話題をさらった国民民主党やれいわ、あるいは再生の道も、勢いを失いつつある中で、参政党はまさに「これからの政党像」を体現しているといえるかもしれない。
もちろん参政党には未知数の部分が多く、過大評価は禁物だ。しかし「きわもの」として切り捨てるだけではもはや済まされない。参政党の拡大が一過性のブームにとどまるか、持続的な変革の波になるのか。それは、他の政党がどれだけ真摯にこの現象を分析し、組織改革に着手するかにかかっている。