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参政党台頭に「大連立」で対抗?──草の根ポピュリズムを見誤る“間違いだらけの対策”

いま、参院選の真っただ中で静かに、しかし確実に、政治地図が塗り替えられようとしている。その主役が、「日本人ファースト」を掲げる参政党だ。

移民政策を進める経済界やリベラル派は、この急成長する新興勢力に「極右政党の躍進」とレッテルを貼り、自民・立憲による大連立での封じ込めを目指している。

だが、これは逆効果だ。参政党の成長を促したのは、イデオロギーではない。むしろ、既存政党とオールドメディアが癒着し、国民の声を踏みにじってきたことこそが、参政党という“受け皿”を育てた。つまり、これは「草の根ポピュリズム」の逆襲である。

本稿では、既存政党の“間違った参政党対策”を徹底検証する。


ネット人気と草の根の違い──石丸・斎藤現象との決定的な差

昨年の東京都知事選では石丸伸二氏、兵庫県知事選では斎藤元彦氏がオールドメディアに反旗を翻し、YouTubeを舞台に旋風を巻き起こした。しかし、いまの彼らにかつての勢いはない。風に乗った一時的な人気が、すぐに失速したのはなぜか。

答えは明快だ。彼らにはリアルな組織がなかったからだ。特に石丸氏は都議選に自民と並ぶ42人を擁立したが、全員が落選。参院選でも目立った存在感は示せていない。

一方の参政党は、リアルな組織に裏打ちされたポピュリズムを武器に、全国で勢力を拡大している。これは、にわか人気に依存した他の政治勢力とは決定的に異なる点だ。


「日本人ファースト」は草の根から生まれた

参政党の神谷宗幣代表が初めて国政に進出したのは3年前の参院選。その後、極端な主張を持つ創設メンバーが内紛で次々と去ったが、逆に神谷氏のワンボス体制が安定し、組織運営は一気に現実路線へとシフトした。

最大の特徴は「党員第一主義」だ。月1000円の党費を払って活動に加わる党員が全国に急増し、中心は30〜40代の主婦層。彼女たちが地域で草の根の活動を展開し、党の看板政策にも影響を与えている。食の安全、子育て支援、そして移民政策への不安──生活実感に根ざした主張が、無党派層の共感を集めているのだ。

この徹底した草の根運動が、他の“風頼みの新党”と一線を画す所以である。


自民・立憲の「封じ込め」は火に油

この草の根ポピュリズムの脅威を最も理解しているのは、自民党の地方組織だろう。筆者が話を聞いた保守地盤の県議会議長は、立憲よりも参政党を脅威視している。移民が急増する地方で、日本人ファーストの訴えが有権者の心をとらえているのだ。

それにもかかわらず、自民党の石破総理や森山幹事長は、参政党を「極右」と位置づけ、大連立で封じ込める構えを見せる。立憲の野田代表も「日本人ファーストという言葉が歓迎される空気に危機感を覚える」と発言し、抑圧の動きを強めている。

だが、これはヨーロッパで見られた「新興勢力封じ込め策」と同じ構図であり、結局は逆効果になるリスクが高い。既得権層の結束が進むほど、大衆の怒りと反発は、新興勢力に向かうからだ。


最も打撃を受けたのは国民民主党

参政党の台頭によって、最も苦境に立たされているのが国民民主党だ。左右対立の「イデオロギー軸」に対し、経済政策をめぐる「上下対立軸」でポジションを取ってきた国民は、参政党とほぼ同じゾーンに立っている。

この「右下ゾーン」の覇権争いで、国民は完全に参政党に押されている。玉木代表はエリート的な立ち位置ゆえに、神谷代表のように「反グローバリズム」の旗を振り切れなかった。その差が、明暗を分けている。

比例や複数区で参政党に敗れれば、国民は存在意義すら問われかねない。現在の国民民主党は、まさに正念場に立たされている。


れいわもまた、岐路に立つ

もう一つ、参政党との関係に苦しむのがれいわ新選組だ。消費税廃止や積極財政では政策的に近いが、移民政策では参政党の「日本人ファースト」に押され気味だ。大石あきこ共同代表が外国人問題で神谷代表とテレビ討論で衝突したことが象徴するように、表向きは対立路線にある。

だが、左右のイデオロギー対決を強めれば、上下の経済対立という本来の軸が埋もれてしまう。「大連立 vs 草の根」の構図にれいわが加わるためには、参政党との激突は避けるべきだろう。

むしろ、れいわは立憲の票を切り崩し、参政党は自民を突き崩すという“すみ分け”が、最も戦略的な立場だ。


結論──対立よりも分析を

現在、参政党に対し、自民、立憲、国民、れいわのいずれもが誤った対応を取っているように見える。封じ込めるのか、共闘するのか。その前にすべきなのは、冷静な分析だ。

この新興勢力の本質は、「極右」のイデオロギーではな、く「草の根」の不満と不安にある。それを理解しなければ、どんな対策も見当違いとなり、逆に参政党の勢いを加速させることになりかねない。