政治を斬る!

総選挙後はどうなる? ①自公過半数割れで石破退陣・政界再編 ②自民単独過半数割れで石破おろしの狼煙 ③自民議席減も単独過半数維持でこう着状態 ④萩生田氏ら落選も自民議席維持で石破政権安定へ 4パターンを大胆予測

衆院が10月9日に解散され、総選挙が事実上始まった。

今回の解散総選挙は(1)自民党総裁選の決選投票で石破茂首相を支持した第四派閥の岸田派や菅義偉前首相のグループを中心とする主流派(2)決選投票で高市早苗氏を支持して敗れた最大派閥・安倍派や第二派閥・麻生派・第三派閥・茂木派を中心とする反主流派(3)立憲民主党どのな野党各党ーーの三つ巴の選挙戦となる。

石破氏が解散直前に世論の反発に押されるかたちで、安倍派を中心に裏金議員10数人を公認せず、さらには裏金議員全員の比例重複を認めない方針に転じたことで、主流派と反主流派の党内抗争は激化している。総選挙の結果次第では「石破おろし」が始まるだろう。

現時点で選挙後を政治状況を4つのパターンにわけて展望してみよう。

その前に現在の状況を確認しておく。

衆院の定数は465、過半数は233。現在、自公与党は290、このうち自民は258、公明は32だ。

自民党は単独過半数を確保しているが、参院では過半数に達しておらず、公明と連立を組んでいる(参院で単独過半数を獲得しても、自民は公明との選挙協力で議席を獲得しており、ただちに連立解消にはならない)。

それでは、今回の選挙結果を4パターンにわけ、その先がどうなるかを分析していく。

①自公過半数割れ

まずは自民党が大惨敗して自公与党が過半数を割り込む衝撃のシナリオだ(自民は50〜60議席以上減らす計算となる)。石破首相は投開票日の夜にただちに退陣表明に追い込まれるだろう。

この場合、野党各党(日本維新の会、国民民主党、共産党、れいわ新選組など)の議席をあわせると過半数に届く。野党第一党の立憲民主党が比較第一党になる可能性もある(立憲の候補者は現時点で201にとどまっており、立憲が単独過半数を得る可能性はない)。

とはいえ、野党各党は共通の政権公約をつくっておらず、バラバラだ。野党連立政権が誕生する可能性は低い。参院ではなお自公与党が過半数を握っており、自公与党が維新や国民など野党勢力の一部を引き込んで連立の枠組みを拡大させ、政権にとどまる可能性が高い(森山幹事長らは立憲民主党とのパイプも持っており、大連立を探る動きが出る可能性もある)。

まずは石破首相の後任を決める自民党総裁選が再び行われる。党員が参加した9月の総裁選と違って、両院議員総会を開いて国会議員だけが投票する緊急の総裁選となる。

反主流派から高市氏が出馬するのは間違いない。反主流派が高市氏擁立で結束するのか、小林鷹之氏や茂木敏充氏らも出馬して決選投票で連携するのかが焦点だ。安倍派議員の多くが落選することが予想され、総選挙前と比べると勢力が縮小している点は見逃せない。

一方、主流派が担ぐ最有力候補は林芳正官房長官だろう。総裁選では安定感を評価する声が高く、4位と健闘した。岸田政権や石破政権の流れを受け継ぐには適任だろう。ただ、岸田文雄前首相がはやくも再登板を目論んでいるとの見方もくすぶっている。

小泉進次郎氏は総裁選の党員投票で「若すぎる」などとして惨敗した後遺症が残っており、今回は出馬を見送るのではないか。

総裁選は林氏vs高市氏の構図で主流派と反主流派が激突する公算が高い。最大の争点は、連立政権の枠組みをどう広げるかだ。

公明党は高市氏とは距離があり、林氏を側面支援するだろう。新たに連立入りする可能性がある維新は主流派の菅氏に近く、国民は反主流派の麻生氏に近い。どちらが勝つかで連立の枠組みが変わる。

②自民単独過半数割れ

続いては自公与党で過半数を維持するものの、自民党は単独過半数を割る場合だ。

自民党が現有から25議席を減らせば単独過半数を割る計算だ。裏金議員10数人を公認せず、対立候補も擁立しない。この分がそのまま自民党の議席減につながるとすれば、単独過半数は十分にありえるシナリオである。

この場合、自公与党はただちに政権から陥落することはない。参院でも自公与党が過半数を握っており、石破政権は一応、継続することが可能だ。

とはいえ、政治的には「自民惨敗」と位置付けられ、石破首相の求心力は大いに落ちる。石破首相の政治責任を追及する声が党内から噴出し、高市氏ら反主流派は「石破おろし」に動いて党内抗争はさらに激化する。来年夏の参院選は石破首相では乗り切れないという危機感が急速に広がるのも間違いない。

政権基盤は弱体化し、石破首相はレームダック化して、来年春の予算成立時点で首相を交代させ、来年夏の参院選にむけて体制を一新させる機運が高まるだろう。

石破首相が巻き返して来夏の参院選に臨むには、内閣支持率を大幅に引き上げることが必須条件となるが、困難な道のりが予想される。自民党内は次を見据えて「石破離れ」が加速していくだろう。

石破首相が来年春の予算成立を機に退陣した場合も、国会議員による緊急の総裁選が行われ、「参院選の顔」を選ぶ戦いとなる。反主流派は高市氏を担ぎ、主流派は林氏を担ぐ展開となるのではないか。

③自民議席減も単独過半数を維持

②と並んでおおいにありえる結果だ。この場合は石破首相は続投することになる。

とはいえ「自民勝利」とは評価しがたく、反主流派が石破政権を支持することはない。来年夏の参院選にむけて党内抗争は収束せず、主流派と反主流派がにらみあうこう着状態に陥る。来年春の予算成立時点で内閣支持率が低迷していれば、その時点で「石破おろし」が再燃するだろう。

安倍派は大量落選し、弱体化している可能性が高い。とはいえ、麻生派や茂木派は反主流派色を強め、高市氏を担いで主流派に対抗する構図がなお有力だ。

主流派は麻生氏らを引き込むため、党役員・内閣改造人事をさっそく行って体制を立て直すしかない。麻生氏らがその人事を受け入れるのか、拒否して反主流派色を強めるのかが当面の焦点となる。

④自民党は現有議席をほぼ維持

この場合は石破政権の勝利となる。萩生田氏ら裏金議員の一部は落選するものの、自民党全体として議席を維持すれば、安倍派が弱体化して石破政権の基盤はむしろ安定することになろう。

安倍派から幹事長代行として執行部入りした福田達夫氏に続いて、反主流派から主流派へ移る動きが出るかもしれない。高市氏や麻生氏ら反主流派もただちに「石破おろし」に動くのは難しい。

とはいえ、石破政権が強固になるかどうかはわからない。そもそも第四派閥・岸田派以下の弱小連合であり、政権基盤は強くはない。反主流派は当面は静観し、来年夏の参院選を視野に内閣支持率が下落することを待つ展開となる。


総選挙後の政治の行方は、総選挙の結果で大きく左右される。同じ自民候補でも、主流派か反主流派かで政治的立場は大きく変わる。野党各党も総選挙後の出方は見えにくい。政界再編含みの総選挙といっていい。

このように政局が激動している最中の総選挙は、政党を重視して投票先を決めるのは難しい。小選挙区ではむしろ政党よりも人を重視し、候補者自身の政治的立場を十分に考慮して投票するのが賢明であろう。

政治を読むの最新記事8件