政治を斬る!

2025年の政局は大激動(前編)石破政権はいつまで続くのか?7月の参院選までの上半期を大予測〜石破退陣で自民党総裁選なら本命は? 衆参ダブル選挙はあるのか?

あけましておめでとうございます。2025年は2024年以上に政界の激動が予想されます。どのメディアよりも政治の動きを先取りして解説していきたいと思います。

当面の焦点は「石破政権はいつまで続くのか」でしょう。

①最初の山場は2月末、予算案の衆院採決

石破政権は昨年10月の総選挙で惨敗し、自公は過半数を割り込んで「少数与党」に転落しました。野党の一部の協力なしには予算案も法案も可決・成立することができない厳しい国会運営が続きます。

少数与党政権が長期化した例はありません。

1月24日召集の通常国会では、野党第3党の国民民主党と野党第2党の日本維新の会を天秤にかけ、少なくともどちらか一方を味方に引き入れ、当面は新年度当初予算案の可決・成立を目指すことになります。

国民民主党は所得税の非課税枠(103万円)を178万円に引き上げるように主張しています。維新は教育無償化の実現を求めています。

これらの主張に譲歩することで予算案への賛成を得なければ、予算の年度内成立は困難になります。

国民民主党と維新の双方とも交渉が決裂すれば、予算案は否決され、政局は混迷を深めます。

野党が一致結束すれば、内閣不信任案がいつ可決されてもおかしくはありません。不信任案が可決されれば、石破茂首相は内閣総辞職するか、衆院を解散して総選挙を断行するかを選択しなければなりません。

石破首相は年末の講演で、予算案が否決されたり、内閣不信任案が可決されたりした場合は、衆院を解散する可能性に言及しました。とはいえ、内閣支持率が低迷していれば、自公与党内から解散反対の大合唱が吹き荒れるのは間違いありません。石破首相は解散を断行できず、内閣総辞職に追い込まれる可能性が高まります。内閣不信任案の提出を回避するため、予算成立と引き換えに石破首相が退陣表明する展開も十分にあるでしょう。

まずは2月末の予算案の衆院採決で、国民民主党と維新が賛成するか否かが最初の政局の山場となります。

②石破おろしの狼煙は春にあがる

自民党内では、総選挙に惨敗した石破首相のままで7月の参院選は戦えないとの声が大勢です。

今すぐに石破首相を引き摺り下ろしても、少数与党の国会運営が厳しい状況に変わりはありません。衆院の予算審議を仕切る予算委員長には立憲民主党の安住淳・元財務相が就任しました。閣僚の失言やスキャンダルが飛び出し、野党が更迭を求めた場合、自公与党は従来のようにそれを無視して強行採決することができません。次々に閣僚更迭を受け入れる閣僚辞任ドミノが起きる可能性は十分にあります。

予算成立までは石破首相を国会で野党の追及の矢面に立たせ、予算成立後に首相を差し替えてイメージを刷新して7月の参院選に挑むのが自民党の基本戦略です。

とりわけ、石破政権でキングメーカーから陥落した麻生太郎元首相の動向から目が離せません。

昨年末に安倍晋三元首相の昭恵夫人が米国のトランプ次期大統領とフロリダの私邸で会談した際、麻生氏の側近である薗浦健太郎・元外務副大臣(元衆院議員)が同席していたことが明らかになりました。

石破首相はトランプ氏に大統領就任前の会談を打診していましたが、「就任前は他国の首脳とは会わない」と断られていました。ところがトランプ氏はカナダ首相やフランス大統領とは面会し、石破首相のメンツは丸潰れになっていました。そこへ安倍昭恵夫人まで面会し、さらには昭恵夫人との面会を受けてトランプ氏が石破氏との会談に前向きに転じたため、石破首相のメンツはますます潰れていました。

この会談に薗浦氏が同席していたことで、これを仕組んだのは麻生氏だったとの見方が広がったのです。麻生氏が今春の石破おろしへの布石をまずは米国から打ったというわけです。

もっとも石破首相が簡単に退陣に応じるとは思えません。

2月末に予算案が衆院を通過する直前から、自公与党と国民民主党や維新の政党間協議や、自民党内の主流派と非主流派の駆け引きが緊迫することが予想されます。

石破政権の最初の関門は、国民民主党か維新かの賛成をとりつけて2月末に予算案を衆院で可決し、内閣不信任案の提出を回避することです。そして3月末の予算成立(参院での可決)にあわせた自民党内の石破おろしの動きを封じ込めることです。

石破首相は党内基盤が弱く、政権維持のためには内閣支持率を引き上げるしかありません。

内閣支持率が高ければ、野党は解散総選挙を恐れて内閣不信任案の提出を躊躇しますし、自民党内でも「石破政権のままでも参院選を戦える」との声が広がるでしょう。

一方、内閣支持率が低迷すれば、野党からも自民党内の非主流派からも舐められ、予算成立後に退陣に追い込まれる可能性が極めて高まります。

③石破退陣なら再び自民党総裁選へ

石破首相が退陣すれば、自民党は総裁選を実施します。

総裁が任期途中で退陣した場合、通常は両院議員総会を開いて国会議員のみの投票で新総裁を選出します。しかし、石破政権は昨年9月の総裁選で党員投票1位だった高市早苗氏が国会議員票中心の決選投票で逆転負けしたことに対する党員の不満を受け、決選投票での党員投票の比重を増す総裁選ルールの変更を検討しており、3月の党大会で決定する方針です。7月の参院選に向けて党員の結束を高めるためにも、新ルールで総裁選を行う可能性があります。

高市氏は党員人気は根強いものの、昨年9月の総裁選で自らの支持した安倍派の中堅・若手が総選挙で大量落選し、党内基盤は壊滅的打撃を受けました。同じく保守層に人気のある小林鷹之氏も出馬に意欲を示しており、保守陣営が固まらなければ苦戦は免れません。

さらに9月の総裁選の決選投票で高市氏を支持した麻生太郎元首相や茂木敏充前幹事長が次の高市支持に回るとは限りません。茂木氏は総裁選出馬に意欲をにじませています。

このため、ポスト石破の最有力候補には、林芳正官房長官が浮上しています。石破政権で麻生氏や菅義偉元首相に変わってキングメーカーに浮上した岸田文雄前首相が率いる岸田派のナンバー2で、外相、防衛相、文科相、農水相などの要職を歴任し、9人が乱立した昨年9月の総裁選では4位に食い込みました。岸田氏や森山裕幹事長ら石破政権の主流派は、現体制を維持するためにも、石破首相から官邸中枢に陣取る林官房長官へ、居抜きの形で政権移行するのが得策です。他方、林氏は国民的知名度がいまいちで、参院選の顔になるかは不透明です。

いずれにせよ、自民党総裁選で新総裁が選出されても、自公は少数与党です。新総裁が国会ですんなり首相に指名されるとは限りません。10月の総選挙後の特別国会での首相指名選挙で、国民民主党や維新が立憲民主党の野田佳彦代表に投票しなかったとの同様、野党を分断することが不可欠です。

少数与党政権の首相交代には、国会での首相指名選挙を乗り切るリスクがついて回ります。

④7月の衆参ダブル選挙の可能性

少数与党を根本的に解消するには、自公連立に国民民主党か維新を引き込んで連立政権の枠組みを拡大するか、衆院を解散して総選挙で過半数を回復するしかありません。

国民民主党や維新は、参院選前に連立入りすれば「自公政権の延命に手を貸した」と批判され、参院選で惨敗する恐れがあるため、少なくとも参院選前の連立入りは難しいでしょう。

新政権が発足して内閣支持率が上昇すれば、自公少数与党の厳しい国会状況を打開するため、7月の参院選にあわせて衆院を解散する「衆参ダブル選挙」を探る動きが強まるのは間違いありません。

昨年10月の総選挙から1年もたっていませんが、自公与党は過半数を割っており、「いまより議席を減らすことはない」という強気の姿勢が広がる可能性があります。

前回総選挙で落選した政治家たちは早期解散を望んでいるでしょうし、大逆風のなかで当選した現職は選挙地盤が安定しており、解散総選挙を敬遠する声は比較的少ないとみられます。

衆参ダブル選挙の突入した場合、その後の政局は選挙結果で大きく変わります。自公与党が過半数を回復すれば政権は安定する一方、自公与党はかつてのように強行採決を繰り返し、政治改革が停滞する恐れがあります。3年間は国政選挙が予定されず、自公与党の強権政治が強まる可能性もあります。

他方、自公与党が再び過半数を失えば、今後こそ野党が結束して連立政権を発足させて政権交代が実現するかどうかが焦点となります。

ただ、立憲、維新、国民3党の足並みは乱れているうえ、れいわ新選組や共産党を含めた野党の結集は簡単ではありません。立憲民主党が自民党の議席を上回る比較第一党になるほどの大勝利を収めなければ、自公与党が再び過半数を割ったとしても、少数与党として政権を担い続ける可能性が高いのはないでしょうか。

その場合は、衆参ダブル選挙後の連立拡大が大きな焦点になります。ダブル選挙が終われば、次の参院選が行われる2028年まで3年間は国政選挙はなく、野党の連立入りへのハードルは下がります。

衆参ダブル選挙が見送られ、参院選だけが行われても、衆院の自公与党過半数割れの状況に変わりはありません。この場合も次の参院選が行われ、衆院任期満了となる2028年までの3年間は国政選挙はありません。

いずれにしても自公連立の枠組み拡大が大きな政治テーマとなります。これについては後編で詳しく解説します。


本年もよろしくおねがいいたします。

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