2025年の政局は大激動(前編)では、衆院で過半数を割った自公与党が政権を安定させるには、(1)国民民主党か日本維新の会を与党に引き入れて連立の枠組みを拡大させるか、(2)7月の参院選にあわせて衆院を解散して衆参ダブル選挙を仕掛けるしかないと分析しました。
このうち連立政権の枠組み拡大は参院選前は簡単ではありません。国民民主党にしろ、維新にしろ、参院選前に連立入りすれば「自公政権の延命に手を貸した」と批判され、参院選惨敗の恐れが強まるからです。
他方、衆参ダブル選挙は内閣支持率が高くなければ断行しにくいのも事実です。昨年10月の総選挙で惨敗した石破政権では踏み切りにくく、3月の予算成立後に首相を差し替えたとしても、内閣支持率が跳ね上がらなければ衆参ダブル選挙に躊躇することになるでしょう。
①参院選後の政治テーマは「大連立」
衆参ダブル選挙を見送った場合、自公与党は参院選で勝利したとしても、衆院で過半数を割る不安定な政治状況は変わりません。参院選後の政治焦点はやはり、衆院で過半数を回復するため、どのようにして連立政権の枠組みを拡大するかということになります。
衆院の任期満了は2028年秋。次の参院選は2028年夏。国政選挙は3年間なく、野党各党は連立入りするハードルが下がります。連立拡大には絶好の好機が訪れるのです。
連立政権に迎え入れる第一候補は、国民民主党か維新でしょう。国民民主党は103万円の壁の引き上げを、維新は教育無償化の実現を求め、昨年の臨時国会では補正予算案に賛成しました。2月末に衆院で採決される予定の新年度予算案に賛成するかどうかが注目されています。
両党は参院選で自公与党と対決するとしても、その後は政策実現を優先して、再び自公与党に接近する可能性が極めて高いでしょう。参院選後は連立入りを決断する可能性は十分にあります。
けれども参院選が終われば自公与党は必ずしも国民民主党や維新に相手を絞る必要はありません。むしろ野党第一党の立憲民主党と大連立を組んだほうが、政権基盤が安定するからです。
②大連立の旗印は消費税増税
国民民主党や維新を連立に引き入れても、今度は政権内部から常に連立離脱カードをちらつかされ、様々な政策実現を要求されます。
公明党は組織政党のため、その時々の世論の風向きに左右される度合いは比較的少ないのですが、国民民主党や維新は政党支持率頼みが強く、連立政権入りした後は十分な成果を出し続けなければ世論の支持を失うことになります。そのため、「この政策をのまなければ連立から離脱する」という要求を強めるのは間違いありません。
かつて自民党、自由党、公明党が連立した際も、自由党の小沢一郎党首は常に連立離脱をちらつかせて自民党に政策を要求し、最後は協議が決裂して離脱しました。
同じように国民民主党や維新のような世論に敏感な中規模政党を連立に引き入れても、政権基盤は必ずしも安定しません。
それならばいっそのこと、野党第一党の立憲民主党と大連立を組んだほうが政権基盤は安定すると考えるのはむしろ当然の流れです。
しかも立憲民主党の野田佳彦代表は、民主党政権で財務相を務めた後に首相に就任し、当時の自公野党と消費税増税の3党合意を推し進めた張本人です。財務省に極めて近い緊縮財政派であることも、石破茂首相や林芳正官房長官と一致します。
さらに石破政権の「影の首相」と呼ばれる自民党の森山裕幹事長と、衆院予算委員長に就任した立憲民主党の安住淳・元財務相が、与野党の国対委員長時代に緊密な関係を築いたことは有名です。森山氏は自民党税調インナーを務めてきた大物財務族で、安住氏もかつて野田氏を受け継いで財務相に就任した大物財務族です。自民と立憲の大連立へ水面下で協議を進めるのは、森山ー安住ー財務省です。大連立の大義名分は「社会保障を安定させるための消費税増税」でしょう。
③森山ー安住ー財務省ライン
森山幹事長は石破首相を支えることが最大の目的ではありません。森山氏は少数派閥の領袖にすぎず、自公政権が安定するよりも、過半数を割って野党と連携しなければならない政治情勢のほど影響力が強まります。まして立憲民主党との大連立となれば、森山氏と安住氏のラインが最も強力です。
立憲民主党の野田代表や安住予算委員長としても、立憲が単独で政権を奪うほど実力はついていない一方、維新や国民民主党との連立政権構想を描くのも簡単ではなく、むしろ自民党と大連立したほうが政権復帰の道は近いといえます。野田氏や安住氏もすでに60代。民主党政権の崩壊から10年以上の時が流れ、残された政治生命を考えると、このあたりで大連立によって政権中枢に戻ることに前のめりになる可能性は大きいでしょう。
通常国会の予算審議で、安住予算委員長が石破首相を追い込むような議事進行をしても、それは森山幹事長と十分に示し合わせたものとみたほうがよさそうです。石破首相が退陣しても後継首相に林芳正官房長官ら現体制の主流派が後継首相になれば、森山幹事長は留任する可能性が高く、安住氏との裏ルートは続きます。通常国会では森山氏と安住氏の水面下の動きに注視する必要があります。
2025年は2024年以上に政界が激動するでしょう。
上半期は衆参ダブル選挙、下半期は自民・立憲の大連立が焦点です。
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