衆院和歌山２区が「裏金対決」で炎上している。安倍派の裏金事件で自民党離党に追い込まれた世耕弘成・元参院幹事長が無所属で出馬。二階派の裏金事件で政界引退に追い込まれた二階俊博・元幹事長から地盤を受け継いだ三男伸康氏と保守分裂の大激戦になった。
どちらも世襲議員。かたや安倍派の大物裏金議員、かたや二階派の大物裏金議員の息子。
マスコミ情勢調査では世耕氏がリードしているものの、世耕家と二階家の大激突で「これから１０年戦争が始まる」と言われている。
世耕氏は官房副長官、経産相、参院幹事長を務めた大物政治家としてだけではなく、近畿大学の理事長としても知名度は抜群だ。安倍派のドンである森喜朗元首相から「頭はいいし金もある」と評されたこともある。
裏金事件で離党に追い込まれたピンチを、地元・和歌山で二階氏に長年阻まれてきた衆院へ鞍替えする好機ととらえ、無所属での出馬に踏み切った。和歌山２区で勝利して自民党に復党し、首相を目指す意向だ。豊富な資金力で入念に情勢調査を行って勝てると判断したともいわれている。
世耕氏が和歌山２区で勝利しても、自民公認で出馬している二階氏が比例復活すれば、和歌山２区の支部長は二階氏のままとなる公算が高く、世耕氏の復党には時間がかかりそうだ。逆に二階氏が比例復活できず落選すれば世耕氏の復党は思いのほか急ピッチで進む可能性もある。自民党は「勝てば官軍」なのだ。
世耕氏としては和歌山２区で圧勝して二階氏の比例復活を阻みたい。そこで「比例は公明」と訴えて公明票を引き込んでいる。さらに安倍晋三元首相の昭恵夫人の応援も受けている。昭恵氏から安倍氏の形見としてもらった茶色い靴を履いて選挙運動を展開し、「安倍さんとは２０センチ以上身長の差がありますが、靴のサイズは足の幅、甲の高さまでぴったり」と訴えている。
一方、二階氏は父親から「選挙の勝敗は誰にもわからない。自らの靴に聞け」とアドバイスされ、人口の少ない山村まで駆け巡るドブ板選挙を展開している。和歌山県の隅々まで公共事業を呼び込んだ父親の人気は根強い。
二階幹事長のもとで国会対策委員長を務めて頭角を現した森山裕幹事長も応援にかけつけ、「世耕氏は和歌山で二人しかいない参院議員だった。任期中務めるのが政治家としてのあるべき姿だ」と世耕氏を批判。石破首相も応援に入った。
石破首相や森山幹事長としては、高市早苗氏を担いで石破おろしを仕掛ける安倍派など反主流派の勢いをそぐためにも世耕氏を落選させたい。少なくとも二階氏を比例復活させて世耕氏の復党を遅らせたい。
世耕氏復党の行方は、高市氏ら反主流派の石破おろしの成否で決まる。和歌山２区は、石破vs高市、主流派vs反主流派の代理戦争の色彩も帯びており、自民党内の権力闘争を行方を大きく左右することになる。